日野家

日野家：平安時代から室町時代、そして明治へ至る名家の歴史

日野家は、藤原北家真夏流の嫡流を継ぐ名門公家・華族です。平安時代から明治時代にかけて、朝廷や幕府の中枢で重要な役割を果たし、その歴史は日本の歴史と深く結びついています。公家としての家格は名家、華族としての家格は伯爵家として、長く栄華を極めました。

平安時代：家名の由来と朝廷への貢献

日野家の起源は、右大臣藤原内麻呂の子孫である藤原真夏に遡ります。真夏の孫、藤原家宗は、嵯峨天皇から延暦寺への戒壇設置の勅許状を最澄に届けた際に、感謝の印として宋から持ち帰られた薬師如来像を贈られました。家宗は山城国宇治郡日野（現在の京都市伏見区）に法界寺を建立し、この薬師如来像を安置しました。

その後、家宗から五代目にあたる資業が、11世紀半ばに法界寺内に薬師堂を建立し、薬師如来像を移しました。この時、資業は「日野三位」を名乗り始め、これが日野家の家名の由来となりました。

日野家は代々、儒学と文章に秀で、朝廷に仕え、大学頭に任じられる者も多くいました。歌道も家業の一つでしたが、特に有名な歌人は輩出しませんでした。院政期以降は、弁官を経て中納言・大納言に至るなど、名家の家格を確立し、内々の家格も築き上げました。

鎌倉時代：幕府との関係と浄土真宗との繋がり

平安時代末から鎌倉時代初期にかけて、日野兼光は鎌倉幕府の源頼朝に接近し、親幕派の公家として活躍しました。頼朝が後白河法皇に議奏10人を設置させた際にも、頼朝の推薦でその一人に選ばれました。

鎌倉前期の僧侶で浄土真宗の開祖である親鸞は、日野一族の有範の子孫であると伝えられています。親鸞は娘の覚信尼を日野広綱に嫁がせましたが、その子孫が本願寺を代々門主として率いた大谷家です。

鎌倉時代末期までは、日野家当主の極官は権中納言でしたが、持明院統派の日野俊光が権大納言に任じられたことをきっかけに、持明院統では日野家を代々権大納言とするのが慣例となりました。しかし、俊光の次男資朝と庶流の日野俊基は、大覚寺統派であり、後醍醐天皇の倒幕計画に参加したため、幕府に捕らえられ、処刑されました。

建武新政～南北朝時代：後醍醐天皇暗殺未遂と室町幕府成立

鎌倉幕府滅亡後、後醍醐天皇の建武新政下では、持明院統派の日野資名は出家隠棲しましたが、その次男の日野氏光は、後醍醐天皇暗殺計画に関与し、処刑されました。この計画には西園寺公宗や北条氏残党も関与していました。

その後、鎌倉幕府再興を目指す北条残党が鎌倉を占領しましたが、足利尊氏が後醍醐天皇に反旗を翻し、京都を占領、室町幕府を開きました。この過程で、資名の弟である賢俊が、足利尊氏と光厳上皇との仲介役を務めました。

足利将軍家との深いつながり：婚姻関係と幕政への影響

資名の娘日野宣子は後光厳天皇の典侍となり、資名の子である日野資教は後小松天皇の乳人、後円融上皇の院執権を務めるなど、朝廷で重要な地位を占めました。日野家は室町将軍家とも深く関わり、将軍家の公家化を推進しました。

日野家は歴代将軍と婚姻関係を結び、幕政に影響力を持つようになりました。資名の娘である業子は3代将軍足利義満に嫁ぎ、その死後は資光の娘康子が継室となりました。康子は後小松天皇の准母となり、北山院の女院号を受けました。

康子の妹栄子は4代将軍足利義持に嫁ぎ、5代将軍足利義量を産みました。資康の娘である宗子と重子は、6代将軍足利義教に嫁ぎ、重子は7代将軍足利義勝と8代将軍足利義政の生母となりました。しかし、資教の子有光は義持・義教と対立し、失脚しました。

日野富子の時代：権勢と応仁の乱

足利義教が嘉吉の乱で殺害された後、日野勝光の妹である日野富子が義政の室となり、日野家は再び権勢を復活させました。勝光は将軍の義兄として幕政に介入し、従一位左大臣にまで昇進しました。

富子は、義政の後継者問題をめぐって山名宗全と結託し、応仁の乱を引き起こしました。息子義尚が9代将軍となると、政治に深く関与し、幕政を掌握しました。関銭の徴収や米の投機的売買などを行い、莫大な富を蓄えました。しかし、関打ちこわしの土一揆など、反発も招きました。義尚の死後、権勢は衰えましたが、明応元年（1496年）に死去しました。

戦国時代～江戸時代：家運の衰退と華族への列せられるまで

応仁の乱後、室町幕府の衰退とともに日野家の家運も衰えましたが、江戸時代には従一位准大臣にまで昇進する者もいました。江戸時代の日野家の家禄は1034石と、名家としては破格の額でした。

明治維新後、華族制度が誕生すると、日野家は旧公家として華族に列し、明治17年には華族令により、初代伯爵日野資秀が伯爵位を授けられました。

脚注

本文中に記載されている参考文献を元に記述されています。詳細は各参考文献をご参照ください。

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