蘇峻

蘇峻（そ しゅん）

蘇峻（? - 328年）は、東晋時代の武将で、字は子高。長広郡挺県（現在の山東省一帯）の出身です。西晋の安楽相であった蘇模を父に持ち、弟に蘇逸、子に蘇碩がいます。西晋末期の混乱期に流民をまとめ上げ勢力を拡大、東晋建国後はその功績により重用されましたが、次第に朝廷との対立を深め、大規模な反乱（蘇峻の乱）を起こしました。

生涯

流民の糾合と勢力拡大

若い頃から学問に秀でていた蘇峻は、郡の主簿を務め、18歳で孝廉に挙げられました。当時、西晋は永嘉の乱によって衰退し、中原は異民族の侵入によって荒廃していました。混乱の中で多くの流民が発生し、各地で集団を作って自衛するようになります。蘇峻も数千の家をまとめ、掖県に砦を築き、その勢力は群を抜いていたと言われています。

蘇峻は長史の徐瑋を使わして各地に檄を飛ばし、自らの徳を示すと共に、野に放置された遺骨を収容して埋葬しました。この行いによって、多くの人々が彼の恩義に感じ入り、彼を盟主として推戴するようになりました。その後は主に海辺の山中で狩猟を行い、生活を立てていました。

東晋への帰順と軍功

317年、西晋の愍帝が処刑されると、翌318年に司馬睿が江南で皇帝として即位し、東晋を建国しました。蘇峻の名声は元帝（司馬睿）の耳にも届いており、彼は東晋から仮の安集将軍に任じられます。

当時、青州を支配していた曹嶷は、蘇峻を掖県の県令に任じるよう上奏しましたが、蘇峻は病気を理由にこれを拒否。曹嶷が討伐軍を送ると、蘇峻は数百の家臣を率いて海路から南下し、東晋の朝廷へと向かいました。朝廷は蘇峻を歓迎し、鷹揚将軍に任じます。

その後、蘇峻は後趙に寝返った周撫の討伐や、王敦の反乱鎮圧などで功績を挙げ、東晋内で着実に地位を上げていきました。最終的には使持節・冠軍将軍・歴陽内史・散騎常侍にまで昇進し、邵陵公に封じられ、食邑千八百戸を与えられました。

反乱の萌芽

しかし、蘇峻は次第に自身の功績に驕り、朝廷を軽んじるようになります。亡命者や罪人を匿い、勢力を拡大していきました。県からの食糧供給が少しでも滞ると、暴言を吐くこともあったと言われています。

325年に明帝が崩御し、幼い成帝が即位すると、実権は外戚の庾亮が握りました。庾亮は蘇峻の勢力拡大を警戒し、陶侃の兵力を吸収することを恐れていました。蘇峻自身も、朝廷が自分を害そうとしているのではないかと疑心暗鬼に陥っていました。庾亮が蘇峻と親交のあった司馬宗を左遷後に暗殺し、さらに蘇峻を首都建康に召還しようとしたことが決定打となり、蘇峻は豫州刺史の祖約と同盟を結び、庾亮を除くことを名目に反乱を起こしました。これが「蘇峻の乱」です。

建康陥落と暴虐

反乱が勃発すると、司馬雄や司馬休らが蘇峻に呼応し、帰順しました。328年2月、蘇峻は配下の韓晃らを建康に派遣して包囲し、放火によって宮殿や役所を焼き払いました。庾亮は弟の庾翼らと共に温嶠の元へ逃亡し、成帝以下の朝廷官吏は捕らえられました。

侍中の褚翜が蘇峻の兵を叱責したため、彼らは宮殿への侵入を躊躇しましたが、それ以外では大々的な掠奪を行い、後宮を侵して宮女らを連れ去るなど、暴虐の限りを尽くしました。また、百官を鞭打ちながら蔣山に登らせ、衣服を奪われた人々は筵や草で身を隠すという惨状でした。

当時、官署には大量の備蓄がありましたが、蘇峻はこれを全て使い果たし、皇帝に焦げ付いた米を供するしかないほど困窮しました。蘇峻は偽の詔で大赦を下しましたが、庾亮兄弟は対象外としました。王導を重用し、祖約を要職に任じ、自身は驃騎領軍将軍・録尚書事を名乗りました。また、朝廷の要職を親族や腹心で固め、政治を委ねました。

討伐軍の反攻と蘇峻の最期

328年3月、尋陽に逃れていた温嶠・庾亮が義軍を率いて蘇峻討伐を宣言し、陶侃も武昌から出撃しました。各地の将兵も皇帝救援のために立ち上がり、蘇峻に対抗しました。

混乱に乗じて後趙が東晋に侵攻すると、7月には祖約が後趙軍に敗れ、歴陽へ逃走しました。蘇峻の腹心たちは、王導らを誅殺するよう進言しましたが、蘇峻はこれを拒否。王導は袁耽を派遣して路永を寝返らせることに成功し、9月に王導らは脱出しました。

蘇峻は陶侃らとの対峙が長期化し、膠着状態に陥っていました。しかし、各地での戦いでは連戦連勝を重ね、その勢いは増すばかりでした。陶侃軍の毛宝が蘇峻の糧食を焼き払うと、兵糧が欠乏した蘇峻軍は苦境に立たされます。

陶侃は水軍を率いて石頭へ向かい、庾亮・温嶠らも歩兵を率いて白石から侵攻し、蘇峻に決戦を挑みました。蘇峻は自ら兵を率いて迎え撃ち、趙胤軍を破りましたが、調子に乗って少数の兵で追撃を仕掛けた際、落馬して敵兵に討ち取られました。その遺体は切り刻まれ、骨は焼き尽くされました。蘇峻の死を聞いた討伐軍は歓喜しました。

蘇峻の乱の終結

蘇峻の死後、残党は弟の蘇逸を新たな盟主として抗戦を続けましたが、内部対立や討伐軍の攻勢によって次第に弱体化していきました。329年2月、石頭が陥落し、蘇逸は捕らえられて処刑され、蘇峻の乱は完全に鎮圧されました。

もう一度検索