温嶠

温嶠（おん きょう）

温嶠（288年 - 329年）は、西晋末期から東晋初期にかけて活躍した政治家です。字は太真（泰真とも）。名門出身でありながら、激動の時代を生き抜き、東晋の安定に大きく貢献しました。

生涯

西晋での活躍

温嶠は、太康9年（288年）に并州太原郡祁県で生まれました。名門の家柄で、幼い頃から学問に励み、その才能を発揮しました。17歳で官吏の道を歩み始め、司隷校尉の都官従事となります。この時、太傅であった庾敳の不正を恐れず弾劾し、その名を高めました。その後、劉琨の軍に参画し、石勒との戦いで功績を挙げ、右司馬にまで昇進しました。

東晋の建国

しかし、西晋は前趙の勢いに押され、次第に衰退。永嘉5年（311年）には洛陽を失陥してしまいます。建興4年（316年）、西晋は前趙によって滅ぼされ、劉琨は司馬睿に即位を促す使者として温嶠を派遣。温嶠は江南で王導や庾亮らと協力し、司馬睿を元帝として即位させ、東晋の建国に大きく貢献しました。

王敦の乱での活躍

東晋が成立したものの、王導ら有力貴族の力が強く、元帝は中央集権化を図ります。これに反発した王敦が永昌元年（322年）に反乱を起こすと（王敦の乱）、温嶠は司馬紹（後の明帝）を諌めて出兵を思いとどまらせました。その後、王敦が政権を掌握すると、温嶠は王敦の警戒を解くために敢えて接近し、信任を得ることに成功します。そして、王敦の再侵攻を察知すると、朝廷に密告し、庾亮と共に王敦討伐の計画を練りました。明帝が王敦討伐の兵を挙げると、温嶠は朱雀橋を焼き払い、王敦軍の足止めに成功。自ら水軍を率いて王含を破るなど、大きな功績を挙げました。

蘇峻の乱での活躍

明帝の死後、幼い成帝が即位すると、庾亮が権力を掌握し、軍閥との対立が深まります。庾亮は蘇峻の軍権を剥奪しようと画策しますが、蘇峻はこれに反発し、庾亮誅伐の兵を挙げました（蘇峻の乱）。温嶠は庾亮を匿い、陶侃との連携を促し、自らも兵を率いて蘇峻討伐に参戦。毛宝率いる水軍が祖約を破り、白石の戦いでは蘇峻を討ち果たすなど、乱の鎮圧に大きく貢献しました。

急逝とその後

蘇峻の乱鎮圧後、温嶠は首都を豫章に移すことを提案しましたが、王導に反対され実現しませんでした。咸和4年（329年）には驃騎将軍に任じられますが、そのわずか1カ月後に42歳で急逝しました。その功績を讃えられ、侍中・大将軍を追贈され、忠武と諡されました。

人物

温嶠は、幼い頃から博学で、容姿にも優れていたと伝えられています。決断力と行動力を持ち合わせ、大胆な行動で数々の危機を乗り越えました。また、人を見る目に長けており、桓温の才能を幼少の頃から見抜いていたという逸話も残っています。温嶠は、その知略と勇気、そして人柄によって、多くの人々に信頼され、東晋の安定に大きく貢献した人物として、歴史に名を刻んでいます。

逸話

桓温が幼い頃、温嶠はその泣き声を聞き将来性を感じたといい、「温」と名付けたという逸話が残っています。これは、温嶠が人を見る目に長けていたことを示すエピソードとして知られています。

評価

温嶠は、東晋初期の政治において重要な役割を果たし、その功績は高く評価されています。王敦の乱や蘇峻の乱といった内乱の鎮圧に貢献し、東晋の安定に大きく寄与しました。また、その知略と勇気、そして人柄によって、多くの人々に信頼され、東晋を支えた人物として、歴史に名を刻んでいます。

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