蘇彦

蘇彦（そ げん）

蘇彦は、五胡十六国時代の後趙及び冉魏に仕えた人物であり、将軍として活躍しました。彼の生涯は、激動の時代を反映したものでした。

生涯

蘇彦は後趙に仕え、将軍に任じられました。彼の名が歴史に登場するのは、349年11月のことです。当時、輔国大将軍であった石閔（後の冉閔）が、司空の李農や右衛将軍の王基と共謀し、後趙の君主であった石遵を廃位しようと企てました。蘇彦はこの計画に加担し、周成と共に3千の兵を率いて石遵の捕縛に向かいました。石遵は南台で婦人と囲碁に興じていたところを、蘇彦らに捕らえられました。石遵は琨華殿で処刑され、代わりに石鑑が皇帝として擁立されました。

350年1月、冉閔が魏国を興すと、蘇彦は常山郡太守に任じられました。常山郡は、冉魏にとって重要な拠点の一つであり、蘇彦はその地を統治する重責を担いました。

352年1月、襄国で皇帝を称していた劉顕が常山に侵攻すると、蘇彦は冉閔に援軍を要請しました。冉閔は自ら8千の騎兵を率いて救援に駆けつけ、劉顕の軍勢を打ち破りました。さらに、冉閔はそのまま襄国まで攻め込み、劉顕の勢力を滅ぼしました。この戦いにおいて、蘇彦は冉閔を支援し、勝利に貢献しました。

しかし、同年4月、前燕の輔国将軍である慕容恪が冉魏討伐の兵を挙げると、状況は一変します。冉閔は魏昌の廉台において慕容恪の軍勢を迎え撃ちましたが、敗北し、捕らえられてしまいました。同じ月のうちに、前燕の輔弼将軍である慕容評と中尉侯龕が騎兵1万を率いて鄴を包囲すると、蘇彦は常山を放棄し、新興へと逃亡しました。その後の蘇彦の動向については、史料に記録が残っておらず、不明となっています。

蘇彦は、後趙から冉魏へと移り変わる激動の時代に、将軍として生きた人物です。彼は、石遵の廃立に関与し、冉閔の魏国では常山郡太守を務めました。劉顕との戦いでは冉閔を援護しましたが、前燕の侵攻により没落し、その後の消息は不明となりました。彼の生涯は、五胡十六国時代の混乱と興亡を象徴するものと言えるでしょう。

参考文献

『晋書』載記第7
『資治通鑑』巻98 - 巻99
* 『十六国春秋』後趙録

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