蘭谷元定

蘭谷元定（らんこく げんじょう）

蘭谷元定は、承応2年（1653年）に京都で生まれ、宝永4年5月1日（1707年5月31日）に没した、江戸時代前期の黄檗宗の僧侶です。法号を蘭谷、法諱を元定といい、絵画、篆刻、彫刻において優れた才能を発揮しました。

生涯

京都の衣屋の子として生まれた蘭谷元定は、幼い頃から父と共に黄檗山に通い、寛文7年（1667年）に15歳で隠元隆琦の侍者であった月潭道澂に師事しました。

元禄7年（1694年）、月潭が京都嵯峨野の直指庵第2代住持となると、蘭谷は首座となり、山内の「含玉軒」に住みました。元禄16年（1703年）には禅者としての修行を終え、宝永4年（1707年）に生涯を閉じました。

師である月潭は、愛弟子の死を悼み、祭文で「諸芸を能くした」と述べています。

芸術

仏像彫刻

蘭谷元定は、仏像彫刻において范道生から刀法を学び、明様式の装飾的で写実的な作風を確立しました。父の七回忌には小さな肖像を刻み、直指庵に納めています。

篆刻

独立性易によって伝えられた篆刻にも優れ、伊藤仁斎、伊藤東涯、細井広沢らの印を刻しました。当時の篆刻芸術は黎明期であり、蘭谷の作品は後進の篆刻家たちに大きな影響を与えました。

絵画

絵画においては、「黄檗画像」（特に頂相）に優れており、独照性円や月潭の肖像を描きました。萬福寺塔頭である真光院には、無心性覚の頂相が伝わっています。また、文人画風の墨画も得意とし、蘭をはじめとする四君子を好んで描きました。

蘭谷元定は、日本の初期南画家に先立つこと50年も前から、和僧の手によって文人画風の絵画を制作しており、その先駆的な活動は注目に値します。

参考文献

中田勇次郎『日本の篆刻』二玄社、1966年
大槻幹郎『文人画家の譜』 ぺりかん社、2001年、ISBN 4831508985

関連項目

日本の篆刻史
日本の篆刻家一覧
印章
長崎派
* 黄檗美術

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