角行 (富士講)

角行（かくぎょう）

角行は、江戸時代に富士講を結成した人々から信仰上の開祖として崇拝された人物です。1541年に長崎の武士、左近大輔原久光の子として生まれ、俗名は長谷川左近藤原邦武と称しました。大職冠藤原鎌足の子孫と伝えられています。

生涯

角行の伝記は複数存在し、内容には差異が見られますが、共通する点として、戦乱の終息と平和な世を願う両親が、北斗星（または北辰妙見菩薩）に祈願して授かった子であるとされています。また、7歳で北斗星のお告げを受けて自身の宿命を自覚し、18歳で廻国修行に出たと伝えられています。

角行は当初、修験道の行者として修行を始め、常陸国（一説には水戸藤柄町）での修行を終えた後、陸奥国達谷窟（悪路王伝説で知られる場所）で修行中に役行者からお告げを受けました。そのお告げに従い、富士山麓の人穴（現在の静岡県富士宮市）に辿り着き、4寸5分角の角材の上に爪立ちして千日間の苦行を実践しました。この苦行を終えた永禄3年（1560年）に「角行」という行名を与えられました。

その後、角行は富士登拝や水垢離を繰り返しながら廻国し、修行の成果をあげるたびに仙元大日神から「フセギ」や「御身抜」（おみぬき）といった独特の呪符や曼荼羅を授かったとされています。特に「フセギ」は病気平癒に効果があるとされ、江戸で疫病が流行した際には、数万の人々に配り救済したと言われています。

後継者

角行の死後、その教えは二世日行日玵、三世赤葉玵心、四世前野月玵、五世村上月心と受け継がれました。村上月心の死後は、月心の二男である六世村上光清（1682年 - 1759年）が率いる光清派（富士御法家）と、玵心あるいは月玵の弟子である月行劊忡から食行身禄（1671年 - 1733年）に繋がる身禄派に分かれました。

身禄派は枝講を認めたため、そこからさらに清康派、伊勢派、出雲派など、俗に「八百八講」と呼ばれる多数の派を生み出しました。その中で主流となったのは、食行の三女である伊藤一行（お花または花子）に連なる小谷三志が、神仏混合を拝して神道の一派として不二道を成し、明治維新の頃に大きく教派[[神道]]の柴田花守が率いる実行教と、宍野半が率いる扶桑教に分かれた流れです。また、丸山教なども生まれましたが、そのままの形で残る講も複数ありました。

一方、光清派（富士御法家）は枝講を認めなかったため、昭和時代に入り断絶しましたが、その流れを汲む宗教として冨士教が存在しています。

著書

『三十一日の巻』

参考文献

井上順孝『教派[[神道]]の形成』弘文堂、1991年
『御大行の巻』

関連項目

専修院 (豊島区)

外部リンク

* 長谷川角行 - 『本朝神仙記伝』 宮地厳夫著(本朝神仙記伝発行所, 1929)

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