諫早家

諫早家（いさはやけ）

諫早家は、戦国時代に龍造寺氏の庶流として発祥した武家であり、江戸時代には佐賀藩主鍋島家の家老を務めた名家です。維新後には士族を経て華族の男爵家となりました。

歴史

諫早家の祖である龍造寺家晴は、龍造寺隆信とその子に仕え、元亀元年（1570年）に蓮池小曲城を与えられ、龍造寺氏の筑後統制を担当しました。天正8年（1580年）には、筑後国柳川城主蒲池氏攻めに参戦し、その戦功により柳川城主となりました。しかし、天正15年（1587年）の豊臣秀吉による九州平定で柳川を失い、薩摩との戦いで先鋒を務めた功績により、肥前国高来郡伊佐早（現在の長崎県諫早市）に2万5000石を与えられ移住しました。龍造寺宗家が滅亡した後、諫早に改姓し、鍋島氏に仕えることになります。

江戸時代には、佐賀藩の家老家の一つとして2万6200石を領しました。藩内での家格は、御三家、御親類に次ぐ御親類同格という高い地位にありました。幕末から明治期にかけての当主、諫早一学は、勤王の志をもって国事に奔走し、戊辰戦争や西南戦争でも活躍しました。明治23年（1890年）には、貴族院の多額納税者議員にも選出されています。

明治維新後、諫早家は当初士族でしたが、明治17年（1884年）に華族制度が五爵制になった際、当初の『叙爵内規』案では万石以上の陪臣が男爵に含まれており、諫早家も男爵候補に挙がっていました。しかし、最終的な『叙爵内規』では旧万石以上の陪臣は授爵対象外となったため、この時点では士族のままとなりました。明治15年・16年頃に作成されたとされる『三条家文書』所収の資料には、諫早一学の資産状況が詳細に記録されており、旧禄高2万6200石に加え、多額の公債や株式、田畑、山林などを所有していたことがわかります。しかし、職業は無職とされ、貧富の状況は不明とされています。

明治26年（1893年）には、旧主家の鍋島侯爵家から、鍋島己巳五郎家、鍋島茂昌家、多久家、そして諫早家の4旧臣家に、維新の功による華族編入の請願が出されました。この時点では許可されませんでしたが、明治30年（1897年）10月27日、一学の維新及び西南戦争における功績が認められ、一学の養子である家崇が男爵に叙せられました。家崇の長男、家興の弟である不二雄の息子が英雄であり、英雄の代には諫早男爵家の東京の邸宅は東京市世田谷区松原町にありました。

このように諫早家は、戦国時代から明治時代にかけて、その時々の社会情勢の中で変遷を遂げながらも、常に重要な役割を果たし続けた家柄であると言えるでしょう。

参考資料

『昭和人名辞典』光人社、1933年。
阿部猛、西村圭子『戦国人名事典 コンパクト版』新人物往来社、1990年。
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター、1990年。
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』吉川弘文館、2015年。
* 森岡浩『日本名門・名家大辞典』東京堂出版、2012年。

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