諸葛瞻

諸葛瞻（しょかつ せん）

諸葛瞻（227年 - 263年）は、三国時代の蜀漢に仕えた武将、政治家です。蜀漢の丞相として有名な諸葛亮の子であり、その血筋と才能から周囲の大きな期待を寄せられました。字は思遠といい、徐州琅邪郡陽都県（現在の山東省臨沂市沂南県）の出身です。

生涯

諸葛亮は黄承彦の娘（黄夫人）を妻としていましたが、諸葛瞻の生母が黄夫人であるかは定かではありません。父・諸葛亮が亡くなると、その爵位である武郷侯を継ぎました。17歳の時に皇帝・劉禅の娘を娶り、騎都尉に任じられます。その後も順調に昇進を重ね、羽林中郎将、射声校尉、侍中、尚書僕射と要職を歴任し、軍師将軍を加えられました。

諸葛瞻は書画に優れ、記憶力も抜群であったため、人々から敬愛されました。特に、父・諸葛亮を慕う人々は、何か慶事があるたびに諸葛瞻を称え、その名声は実力以上であったとも言われています。

261年、行都護衛将軍となり、董厥と共に平尚書事となりました。董厥や樊建と共に国政を動かす地位となりましたが、劉禅が信任する宦官・黄皓の専横を止めることはできませんでした。諸葛瞻と董厥は、黄皓と私的な関わりを持つようになったとされています。

262年、黄皓が蜀の軍権を握る姜維の失脚を願うようになると、董厥と共にこれに同調しましたが、成功しませんでした。一説には、諸葛瞻自身が姜維に代わって閻宇を取り立てるよう上奏したともいわれます。閻宇は黄皓と結託していたとされています。

263年、魏が蜀に侵攻すると、諸葛瞻は劉禅の命を受けて出撃します。姜維率いる蜀軍の主力は剣閣で魏軍を迎え撃っていましたが、魏将・鄧艾は陰平の間道を通って成都を目指しました。諸葛瞻は涪まで進軍し、戦況をうかがっていましたが、黄崇（黄権の子）に迎撃を促されても決断できませんでした。鄧艾は江油を難なく陥落させます。

諸葛瞻は涪から綿竹に後退し、防衛線を構築します。鄧艾は降伏を勧める手紙を送りますが、諸葛瞻はこれを拒否し、使者を斬りました。緒戦では魏軍を退けましたが、鄧艾の猛攻の前に大敗し、息子の諸葛尚、張遵（張飛の孫）、黄崇、李球（李恢の甥）らと共に戦死しました。

評価

『三国志』の編者である陳寿は、諸葛瞻を「虚名が実質を上回っていた」と評しています。一方で、陳寿がかつて諸葛瞻の下で恥辱を受けたことがあり、その評価は公平ではないとする説もあります。

『華陽国志』には、諸葛瞻の名を騙った反乱事件が記録されており、民衆からの人気が高かったことがうかがえます。晋の武帝は、諸葛瞻が国難に殉じたことを評価する詔勅を出しました。干宝は、諸葛瞻の能力は特筆するほどではないとしながらも、国家を守り、父の志を継いで忠孝を尽くそうとした点を評価しています。

三国志演義

小説『三国志演義』では、諸葛瞻は黄皓の専横に反発し、病と称して引きこもっていましたが、魏の侵攻を受けて出撃します。綿竹の戦いでは、父・諸葛亮の木像を先頭に立てて魏軍を混乱させたり、息子の諸葛尚の活躍で魏軍を打ち破ったりする場面が描かれています。しかし、最後は鄧艾からの降伏勧告を拒否し、出撃して戦死します。

諸葛瞻は、父の偉業を受け継ぎながらも、自らの信念を貫き、蜀漢のために戦い抜いた人物として、後世に語り継がれています。

脚注

四川省綿竹市には諸葛双忠墓祠があり、諸葛瞻、諸葛尚、張遵、黄崇、李球が、諸葛亮と共に祀られています。

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