譚広

譚広（たん こう）

譚広（1363年 - 1444年）は、明代の軍人であり、字は仲宏、本貫は鎮江府丹徒県です。その生涯は、兵士としての身分から始まり、数々の戦功を重ねて高位に昇進しました。

生涯

洪武帝の時代初期に兵士として身を立てた譚広は、1387年（洪武20年）に馮勝によるナガチュ征討に従軍し、燕山護衛百戸となります。1399年（建文元年）に靖難の変が勃発すると、燕王朱棣（後の永楽帝）の起兵に従い、100騎を率いて涿州を攻撃、将校30人を捕虜にするという目覚ましい戦果を挙げました。その後も、白溝、真定、夾河の戦いで功績を重ね、指揮使に昇進しました。保定の留守を任された際には、都督の韓観による攻撃を40日以上にわたって孤軍で防ぎ抜き、敵陣を奇襲して撃退するという活躍を見せました。

1403年（永楽元年）には、大寧都指揮僉事に進み、北京城の建設を統括する重要な役割を担いました。その後、神機営を管轄し、軍事の中枢を担う存在となります。1410年（永楽8年）には、永楽帝の第一次漠北遠征に従い、驍騎将軍の号を受けました。1413年（永楽11年）には、山西で軍の練兵を行い、軍事力の強化に貢献しました。続く1414年（永楽12年）の永楽帝による第二次漠北遠征では、九龍口を攻める先鋒を務め、数万のオイラト兵に対して多数の弓を斉射し、壊滅的な被害を与えました。さらに挟撃によって敵を打ち破り、この功績により中軍都督僉事に進みました。

1424年（永楽22年）に洪熙帝が即位すると、譚広は左都督に抜擢され、鎮朔将軍の印を受け、総兵官として宣府に駐屯します。1428年（宣徳3年）には、軍衛にも州県のように風雲雷雨山川社稷の壇を立てるよう請願し、軍の士気を高めるための措置を求めました。1431年（宣徳6年）には、宣府の食糧不足を解消するため、開平や独石のように商人を招き、塩の代わりに粟を納入させて兵糧を確保する策を提案し、宣徳帝に採用されました。1432年（宣徳7年）には、戸部の意見により他所から宣府に出向している衛軍を辺境の駐屯地に帰還させるという決定に反対し、その理由を上奏しました。

正統帝の時代初期、オイラトのトゴンが明と通交関係を結んだものの、その動向が予測できない状況下で、英宗は譚広や他の鎮の総兵官に戦略の上申を求めました。これに対し譚広らは、「辺境の敵の出没は予測できないため、守りを固めるのが最善策である」と進言し、兵を分けて要害を押さえ、精鋭を塞外に巡回させ、敵に遭遇すればその力量を見極め、間諜によって敵情を偵察し、軽装の兵で敵を追撃するといった具体的な戦略を提案しました。この戦略は英宗に受け入れられ、国境防衛に大きな影響を与えました。1441年（正統6年）11月には、敵を防御した功績により、永寧伯に封じられました。1443年（正統8年）には致仕を願い出ますが、英宗に許可されませんでした。1444年（正統9年）10月には、宣府から北京に召喚され、英宗に謁見し、常時出仕を免除されましたが、その月のうちに82歳で生涯を終えました。諡は襄毅です。

譚広は、その軍事的才能だけでなく、国境防衛における戦略眼も高く評価され、明朝の発展に大きく貢献しました。しかし、世券が与えられなかったため、その子の譚序は永寧伯の爵位を継承することができず、指揮使に任じられるにとどまりました。

参考文献

『明史』巻155 列伝第43

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