豊後森機関庫

豊後森機関庫：歴史と文化が息づく扇形機関庫

豊後森機関庫は、大分県玖珠郡玖珠町に位置する、かつての国鉄久大本線豊後森駅の東側に存在した機関庫です。1934年（昭和9年）の久大線全線開通と共に完成し、豊後森機関区も同時に発足しました。鉄筋コンクリート造で、広大な1,785平方メートルの面積を誇り、最盛期には21台もの蒸気機関車が所属する大規模な扇形機関庫として活躍しました。

しかし、太平洋戦争中の1945年（昭和20年）8月4日には、米軍機の機銃掃射による被害を受け、助役1名と職員2名が命を落としました。機関庫の壁面には、その際の弾痕が今もなお残っており、機関庫ミュージアムでは付近で見つかった薬莢が展示され、当時の悲劇を伝えています。

蒸気機関車時代には必要不可欠であった転車台も併設されていましたが、ディーゼル機関車やディーゼルカーへの移行に伴い、1971年（昭和46年）に機関庫は廃止されました。廃止前には、宮原線で使用されていた国鉄キハ07形気動車が保管されていましたが、後に九州鉄道記念館へ移送されました。

保存活動と文化財としての価値

機関庫の廃止後、その歴史的価値に注目した地元の有志によって、2001年（平成13年）に保存委員会が結成されました。登録有形文化財を目指した「一万人の署名運動」では、玖珠町の人口を上回る22,437人もの署名が集まり、2012年（平成24年）には、機関庫及び転車台がそれぞれ「旧豊後森機関庫」と「旧豊後森機関庫転車台」として、国の登録有形文化財に登録されました。また、2009年（平成21年）には「旧豊後森機関区の関連遺産」として近代化産業遺産にも認定されています。

2006年（平成18年）3月には、玖珠町が旧機関庫と敷地をJR九州から買収し、2008年（平成20年）には鉄道記念公園整備計画を策定。「豊後森機関庫公園」として整備が進められ、機関庫西側の作業員詰所を改修した「豊後森機関庫ミュージアム」も開設されました。

国鉄9600形蒸気機関車の保存

2015年（平成27年）6月12日からは、1919年（大正8年）製の国鉄9600形蒸気機関車「29612」号機が保存展示されています。この蒸気機関車は、福岡県志免町から無償譲渡されたもので、同町の中の坪公園で展示されていましたが、公園の改修に伴い、解体の危機に瀕していました。しかし、玖珠町への譲渡により、修復を受けて再びその姿を見ることが出来るようになりました。

豊後森機関庫の歴史

以下に、豊後森機関庫の主な沿革をまとめました。

1929年（昭和4年）：豊後森駅開業。
1933年（昭和8年）：森町に機関区を設置することが決定。
1934年（昭和9年）：久大線全線開通。豊後森機関区発足。
1945年（昭和20年）8月4日：米軍機の機銃掃射を受け職員3人が死亡。
1970年（昭和45年）9月：久大線から蒸気機関車が姿を消す。
1971年（昭和46年）4月：豊後森機関区廃止。
2009年（平成21年）2月6日：機関庫及び転車台が「旧豊後森機関区の関連遺産」として近代化産業遺産に認定。
2012年（平成24年）8月13日：機関庫及び転車台がそれぞれ「旧豊後森機関庫」及び「旧豊後森機関庫転車台」として国の登録有形文化財に登録。
2014年（平成26年）4月8日：福岡県志免町で解体予定であった、国鉄9600形蒸気機関車29612号機の譲渡を発表。
2015年（平成27年）6月10日：国鉄9600形蒸気機関車29612号機を移設。
2015年（平成27年）11月8日：豊後森機関庫ミュージアムを開設。
2019年（令和元年）12月：台湾鉄路管理局（台鉄）の彰化扇形庫と姉妹提携を締結。

文化財としての登録

豊後森機関庫は以下のものが登録有形文化財として登録されています。

旧豊後森機関庫
旧豊後森機関庫転車台

その他

豊後森機関庫は、アニメ「サザエさん」のオープニングにも登場したことがあります。