象頭山 (香川県)

象頭山：象の頭部を思わせる山容と歴史

香川県西部にそびえる象頭山は、標高538メートルの独立峰です。この山塊全体を琴平山と呼び、その南側半分が象頭山、北側半分が大麻山とされています。両山を合わせた山塊は、瀬戸内海国立公園、名勝、天然記念物に指定され、香川のみどり百選にも選ばれるなど、自然と歴史が調和した貴重な場所です。

象頭山の名前の由来は、琴平街道から眺めた山容が象の頭部を思わせることにあります。特に、金刀比羅宮のある部分が象の目に当たるといわれています。地質は、下位から花崗岩、凝灰角礫岩、讃岐岩質安山岩で構成され、花崗岩の風化によって崩れた、不完全なメサ地形を呈しています。

象頭山の北麓は善通寺市、南麓は三豊市に位置し、金刀比羅宮とその奥宮、関連施設は仲多度郡琴平町にあります。古くから人々の生活と深く関わり、江戸時代には、家屋の建築や薪・家具などに利用されたため、高松藩によって伐採禁止令が出されるほどでした。

歴史的な記録も豊富に残されています。歌川広重による『讃岐象頭山遠望』（寛政・安政期）は、禿山となった象頭山を描いており、当時の山林の様子を伺い知ることができます。他にも、林鵞峰と息子の林鳳岡父子による『讃州象頭山十二境』（寛文11年）、歌川国貞の『象頭山ノ化現』（嘉永・安政期）、狩野安信と狩野時信による『象頭山十二景図』など、数々の絵画作品が、象頭山の景観や信仰の様子を伝えています。『象頭山金毘羅大権現霊験記』（明和6年）といった文献も、この山の歴史を紐解く上で重要な資料となっています。

興味深いのは、象頭山という名称の由来です。インド中部の伽耶の西方の山、ブラフマヨーニは、山容が似ていることから「象頭山（ガヤーシールシャ、和名で伽耶山）」と呼ばれており、金毘羅大権現が鎮座した聖地であることも、当山の名称に影響を与えたと考えられています。しかし、元亀4年（1573年）に金毘羅大権現が鎮座する以前は、松尾寺があったことから「松尾山」と呼ばれていたという説もあります。

象頭山は、文化作品にも度々登場します。代表的な例として、金刀比羅宮をテーマにした民謡『こんぴら船々』や、小説『暗夜行路』で、主人公が琴平を訪れ象頭山を眺める場面が描かれています。

交通アクセスは、JR土讃線琴平駅、高松琴平電気鉄道琴平線琴電琴平駅から西へ約3キロメートルです。周辺には、金刀比羅宮をはじめとした観光地が点在し、自然と歴史に触れることができる場所となっています。象頭山は、自然の景観、歴史、文化が一体となった、香川県を代表する観光スポットと言えるでしょう。

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