辻堂西海岸

辻堂西海岸（つじどうにしかいがん）は、神奈川県藤沢市に所在する行政地名です。現在では、住居表示が実施されており、一丁目から三丁目の範囲で構成されています。

地理

藤沢市の南西部に位置し、南部は雄大な辻堂海岸に面しています。地域の北側は辻堂、東側は辻堂東海岸、そして西側は茅ヶ崎市汐見台と隣接しています。町域は方角によって細分化されており、北東部が一丁目、北西部が二丁目、南側が三丁目となっています。

歴史と沿革

この地域を含む広範囲は、古くは平安時代中期（10世紀頃）に相模国高座郡土甘（とかみ、または、となみ）郷の一部でした。その後、長治元年（1104年）頃には、鎌倉景正によって開拓された大庭御厨という伊勢神宮の荘園の一部となりました。鎌倉時代には、現在の辻堂や茅ヶ崎を含む一帯が「八的ヶ原」、後に「八松ヶ原」と呼ばれる広域の地名で知られていました。

戦国時代の天正18年（1590年）になると、この地の海岸部は幕府直轄の天領となり、藤沢宿の代官によって管理されるようになりました。江戸時代の享保13年（1728年）には、享保の改革の一環として、相州炮術調練場が設けられ、この地域の軍事的な重要性が高まります。

明治時代に入ると、その流れはさらに強まります。明治初期には日本海軍横須賀鎮守府の砲術試験場や陸戦演習場が設置されました。明治6年（1873年）の神奈川県区番組制施行に伴い、辻堂村は第17区となり、小字や地番が定められました。明治11年（1878年）には郡区町村編制法により行政区画として高座郡辻堂村が編成され、その一部となります。町村制が施行された明治22年（1889年）には、辻堂村などが合併して神奈川県高座郡明治村の一部となりました。

軍による土地買収は続き、明治39年（1906年）には広大な土地が買収され、砲術試験場や陸戦演習場の施設が固定化されました。明治41年（1908年）には、明治村などが合併して藤沢町が成立し、当地はその一部となります。大正15年（1926年）には、横須賀海軍砲術学校辻堂演習場が置かれ、軍事施設としての性格が強まります。

昭和に入り、交通網の整備も進みます。昭和10年（1935年）には、現在の神奈川県道30号戸塚茅ヶ崎線や神奈川県道308号辻堂停車場辻堂線の近接部分が湘南海岸道路として開通しました。昭和15年（1940年）には藤沢町が市制を敷き、藤沢市の一部となります。

第二次世界大戦後、昭和27年（1952年）には、かつての横須賀海軍砲術学校辻堂演習場が連合国軍に接収され、在日米海軍辻堂演習場となりました。その後、昭和34年（1959年）にこの米軍演習場が日本に返還され、国有地および県有地となります。この広大な跡地が、その後の辻堂西海岸の発展に大きな影響を与えました。

返還された土地の利用が進められ、昭和35年（1960年）には、海岸沿いに国道134号が完成しました。昭和36年（1961年）には相模工業高等学校（現在の湘南工科大学附属高等学校）が開校し、神奈川県道藤沢小和田線（現在の神奈川県道30号戸塚茅ヶ崎線）も開通しました。昭和37年（1962年）には藤沢市立白浜養護学校が現在地に移転しています。

昭和38年（1963年）には相模工業大学（現在の湘南工科大学）が開学。昭和39年（1964年）には藤沢市立高砂小学校が現在地に移転し、日本住宅公団（現UR都市機構）による大規模な辻堂団地の入居も始まりました。これらの施設整備は、かつての演習場跡地が住宅・文教地区へと大きく変貌していく過程を示しています。

現在の行政町名である辻堂西海岸一丁目から三丁目が新設され、住居表示が実施されたのは昭和42年（1967年）10月1日です。その後も地域整備は続き、昭和45年（1970年）には藤沢市立浜見小学校が開校、昭和46年（1971年）には広大な辻堂海浜公園が開園し、市民の憩いの場となりました。昭和48年（1973年）には藤沢市立高浜中学校が開校し、教育環境がさらに充実しました。

地価

住宅地の地価については、2023年（令和5年）1月1日時点の公示地価によると、辻堂西海岸3丁目1番41の地点で1平方メートルあたり24万円となっています。

交通

公共交通機関としては、神奈川中央交通と江ノ電バスによる路線バスが運行されており、辻堂駅南口や藤沢駅北口、茅ヶ崎駅南口、辻堂団地方面など、広範囲へのアクセスを提供しています。また、地域内には国道134号、神奈川県道30号戸塚茅ヶ崎線、神奈川県道308号辻堂停車場辻堂線といった主要道路が通じています。

地域内の施設

地域内には、大規模な住宅街である辻堂団地のほか、市民の憩いの場である辻堂海浜公園や辻堂南部公園があります。教育機関としては、湘南工科大学とその附属高等学校、藤沢市立高浜中学校、藤沢市立高砂小学校、藤沢市立浜見小学校、藤沢市立白浜養護学校などが立地しており、文教地区としての側面も持っています。

その他

郵便番号は251-0046であり、集配業務は藤沢郵便局が担当しています。また、国勢調査や経済センサスといった統計調査も定期的に行われており、地域における人口や事業所の状況、その推移が示されています。

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