造寺司

造寺司（ぞうじし）について

造寺司は、奈良時代に官寺やそれに準じた寺院の建設を目的として設置された令外官の一つです。この制度は、時代の変遷とともに寺院の築造が必要とされる中で、効果的な運営を実現するために確立されました。

概要

造寺司は、寺院単位で設置され、寺院の建築や用具の製造、さらには経典の写経作業も実施しました。最初の事例としては、法興寺の創設に際し、蘇我善徳が造寺司に任じられたことが挙げられます。また、飛鳥寺の創建時にも同様に設置され、そこからは大量の富本銭が発見されています。しかし、造寺司が本格的に整備されたのは律令制の導入以降と考えられています。

本来、寺院の建設に関しては木工寮が主任の役割を担うはずでしたが、鎮護国家思想が高まったことで、寺院の造営が盛んに行われるようになりました。その中で、遷都などによって木工寮の業務が重くなることを避ける意図もあったようです。造寺司は、権力や利権の集中を避けるための措置でもありました。

職階と構成

造寺司の運営には四等官が設けられており、これには長官、次官、判官、主典が含まれています。人員や官位は省に準じる場合もあった一方で、「所」と呼ばれる下部組織が設立されることもありました。たとえば、東大寺の造営に伴って設置された造東大寺司の下に「写経所」が存在しました。その文書の一部は、現代に伝わっている正倉院文書として知られています。

また、四等官の下には史生や舎人が配置され、さらにそれぞれの技術や熟練度に応じて大工、少工、長上、番上などの工匠も抱えていました。こうした多様な職階構成により、造寺司は寺院の建設に対するあらゆる要素を取り込める体制を整えていました。

財源とその運用

造寺司の主な財源は封戸でありましたが、墾田永年私財法の施行以降は初期荘園も加えられました。これらの財源は造寺司を通じて寺院の運営に供され、僧尼令や僧綱とは異なる形で寺院や僧侶を監視・統制する手段ともなり得ました。

しかし、奈良時代の末期には宇佐八幡宮神託事件を契機とし、仏教に対する規制が強化され、朝廷自体の財政が困窮する状況が続きました。そのため、造寺事業は次第に縮小され、平安時代の初期段階にはほとんどの造寺司が廃止され、寺院の財源や監督は別当や三綱に移行することとなりました。

主な造寺司一覧

造寺司の例として、以下のようなものがあります：

• - 奈良薬師寺 - 造薬師寺司
• - 大安寺 - 造大安寺司
• - 東大寺 - 造東大寺司
• - 石山寺 - 造石山寺所（造東大寺司の下部官司）
• - 下野薬師寺 - 造下野薬師寺司
• - 法華寺 - 造法華寺司
• - 西大寺 - 造西大寺司
• - 興福寺 - 造興福寺仏殿司
• - 西隆寺 - 造西隆寺司
• - 観世音寺 - 造観世音寺司

まとめ

造寺司は、奈良時代における寺院建設の管理と運営において重要な役割を果たし、その構成や財源運用においても高度なシステムが確立されていましたが、時代の変化に伴いその役割は次第に衰退していきました。

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