逸然性融

逸然性融（いつねん しょうゆう）

逸然性融（1601年8月28日 - 1668年8月21日）は、中国明末に日本へ渡来した僧侶であり、黄檗宗の発展に大きく貢献しました。俗姓は李氏で、逸然は字、性融は法諱です。浪雲庵王、煙霞比丘、煙霞道人とも号しました。

生涯

浙江省杭州府銭塘県に生まれた逸然性融は、1641年（寛永18年）に明末の混乱を避けて41歳で長崎へ来舶しました。当初は貿易商人として渡日しましたが、1644年（正保元年）に長崎・興福寺の第2代住持であった黙子如定に帰依し、仏門に入りました。翌1645年（正保2年）には、黙子の隠退に伴い、第3代住持に就任しました。

1652年（承応元年）、逸然は無心性覚の懇願を受け、隠元隆琦を日本へ招請することを決意します。4度にわたる招請状の往還の末、1654年（承応3年）7月に隠元の来日が実現しました。この出来事を非常に喜び、以降、自身の書画に「請法東伝」の語句を刻んだ印を使用しました。

隠元が渡来すると、逸然は興福寺の住持を隠元に譲り、自身は監寺となりました。しかし、翌年に隠元が摂津国の普門寺へ移転したため、再び住持に復帰しました。1656年（明暦2年）には、澄一道亮に住持の座を譲り、退隠しました。

退隠後の1657年（明暦3年）には、『隠元語録』と『五灯厳統』を板行しました。1658年（万治元年）頃からは幻寄山房東盧庵に住み、1668年（寛文8年）7月に同地で生涯を閉じました。享年68歳。墓所は興福寺後山にあります。

画僧としての逸然性融

逸然性融は、画僧としても知られ、羅漢図や神仙図などの仏画や人物図を得意としました。特に、北宗画風の新様式を日本へ伝え、長崎漢画の祖（唐絵の祖）とされています。彼の画風は、後の日本の画壇に大きな影響を与え、河村若芝や渡辺秀石といった門弟を輩出しました。

代表作品

巌上観音菩薩像（長崎歴史文化博物館）
白衣観世音菩薩観瀑図（1665年、長崎歴史文化博物館）
普賢・文殊菩薩像双幅（長崎歴史文化博物館）
芦葉達磨図（長崎歴史文化博物館）
布袋図（長崎歴史文化博物館）
布袋図（1664年、神戸市立博物館）
* 釈迦・普賢・文殊像（崇福寺）

逸然性融は、僧侶として黄檗宗の発展に尽力する傍ら、画家として新たな画風を日本にもたらし、長崎の美術界に大きな足跡を残しました。彼の作品は、現在も各地の博物館や寺院に所蔵されており、その芸術性を今に伝えています。

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