黙子如定

黙子如定：長崎に文化の架け橋をかけた中国僧

黙子如定（もくす にょじょう、1597年 - 1657年）は、明末清初に日本へ渡来し、長崎の興福寺を拠点に活躍した中国僧です。彼は寺院の建立、眼鏡橋の建設に尽力し、当時の日本に中国の文化や技術を伝えました。

生涯

黙子如定は、中国江西省南康府建昌県の出身で、揚州の興福禅院で出家しました。1632年（寛永9年）に明版大蔵経を持参して来日し、長崎に建立された黄檗宗の唐寺、興福寺に入寺しました。

当時の長崎奉行は、幕府の禁教令のもと、唐人がキリスト教を持ち込むことを警戒していました。興福寺は、長崎在住の中国人貿易船主や船員が仏教徒であることを示すための菩提寺として設立されたという背景があります。如定は、信者からの寄付を集め、興福寺の諸堂創建に着手しました。1634年（寛永11年）には堂宇が建設され、1641年（寛永18年）には伽藍や山門が竣工しています。

真円の没後、如定は興福寺の第2代住持となりました。一説には、1635年（寛永12年）に真円の隠退によって住持を継いだとも言われています。

彼は象嵌技術にも通じており、中国の先進技術の導入に貢献した他、能書家としても知られています。1645年（正保2年）に逸然性融に法席を譲り、東盧庵に隠退しましたが、逸然が力を注いだ隠元隆琦の招致運動を援助しました。

1657年（明暦3年）12月、自坊で没しました。享年61歳でした。

眼鏡橋の架橋

黙子如定は、興福寺の信者が中島川を渡るのに苦労しているのを見て、1634年（寛永11年）に日本初の石造アーチ橋として知られる眼鏡橋の建設を勧進しました。

石造アーチの技法は、如定自身が技術指導を行ったという説がありますが、秀吉より朱印状を得て貿易を行った商人、末次政直（後に長崎代官）が支援し、実際の工事は息子の二代目平左衛門が差配したとされています。測量やアーチの計算技術は、通訳である唐通事を通して外国から得たという説もあります。

1994年（平成6年）10月29日には、眼鏡橋の左岸橋詰広場に青銅製の「黙子如定の像」が建立されました。これは、彼の功績を後世に伝えるためのものです。

黙子如定は、宗教家としてだけでなく、文化交流の担い手としても大きな役割を果たしました。彼の功績は、長崎の歴史と文化に深く刻まれています。

参考資料

• - 山本悦心「默子如定禅徳」『黄檗東渡僧宝伝』黄檗堂、1940年
• - 長里清「興福寺」『九州文化大観 : 皇紀二千六百年記念誌』日本文化研究会、1940年
• - 渡辺栄「橋のはなし(3)」『鋼橋塗装』 21巻、2号、日本橋梁・鋼構造物塗装技術協会、1993年
• - 村瀬佐太美「日本の橋紀行-第17回-長崎県の橋--石橋の古里」『土木施工』 39巻、7号、オフィス・スペース、1998年

関連項目

• - 日本の篆刻史
• - 日本の篆刻家一覧
• - 篆刻

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