達奚長儒

達奚長儒（たつけい ちょうじゅ）

達奚長儒（生没年不詳）は、中国の西魏から隋にかけての軍人であり、字は富仁、本貫は代郡です。父は驃騎大将軍・儀同三司の達奚慶。

生涯

15歳で楽安郡公の爵位を継ぎ、西魏の大統年間（535年 - 551年）に奉車都尉としてキャリアをスタートさせました。宇文泰に才能を認められ側近として仕え、その実直さから子都督に任じられます。数々の戦で功績を挙げ、輔国将軍、使持節、撫軍将軍、通直散騎常侍と昇進を重ねました。蜀を平定する戦いでは先鋒として活躍し、攻城戦や野戦で常に敵を打ち破り、車騎大将軍・儀同三司に任じられました。

北周の天和年間（566年 - 572年）には渭南郡太守に任じられ、後に驃騎大将軍・開府儀同三司に転じました。武帝の下で行われた北斉平定戦では上開府に転じ、成安郡公に進み、その子も県公の別封を受けました。578年には左前軍勇猛中大夫に任じられています。

王軌と共に南朝陳の将軍、呉明徹を呂梁に包囲した際、援軍として現れた劉景率いる7000の兵を迎え撃ちました。長儒は数百の車輪を大石に繋ぎ水中に沈めるという奇策を用い、劉景軍の船艦を足止めし、これを破って数千人を捕虜にするという大戦果を挙げました。呉明徹を捕らえることにも成功し、その功績により大将軍に進みました。その後も行軍総管として北方での戦いで勝利を重ねています。

580年、楊堅が丞相となると、王謙が蜀で挙兵し、沙州氐の楊永安が呼応して反乱を起こしました。長儒は楊永安討伐の命を受け、これを鎮圧。長安から逃亡してきた王謙の二人の息子を捕らえ、処刑しました。581年に隋が建国されると、上大将軍に進み、蘄春郡公に封じられました。

582年、突厥の沙鉢略可汗が南下すると、長儒は行軍総管として2000の兵を率いて迎え撃ちました。周槃での戦いでは、3日間にわたり転戦し、武器が尽きた後も拳で戦うほどの奮戦を見せました。隋軍の死傷者は甚大でしたが、突厥軍にも大きな損害を与え、撤退に追い込むことに成功しました。この功績により、文帝（楊堅）から上柱国の位を授けられ、戦没者には3級上の官位が贈られました。

同年、寧州刺史に任じられ、まもなく敷州刺史に転じましたが、母の喪により職を離れます。5日間水も口にせず、礼を超えるほどの悲しみを見せたため、文帝を深く感嘆させました。その後、夏州総管・三州六鎮都将事として復帰すると、その威名から北方民族は国境を侵そうとしませんでした。病のため一時免官されましたが、襄州総管、蘭州総管と要職を歴任しました。文帝は独孤羅、元褒、賀若誼らに突厥への備えを命じましたが、彼らは皆、長儒の指揮下に入りました。長儒は自ら兵を率いて祁連山の北、蒲類海まで進出しましたが、突厥軍との遭遇はありませんでした。後に荊州総管・三十六州諸軍事に転じ、江陵の守りを任されました。1年余り在職した後、亡くなり、諡として「威」を贈られました。

子の達奚暠は、大業年間に太僕少卿となりました。

伝記資料

『隋書』巻53 列伝第18
『北史』巻73 列伝第61

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