渭南郡

渭南郡（いなん-ぐん）

渭南郡は、中国の歴史において、二度存在した郡の名前です。一度目は、前漢時代の紀元前205年から紀元前198年まで、二度目は、南北朝時代の6世紀頃に、現在の陝西省に置かれました。

前漢時代の渭南郡

前漢の高祖2年（紀元前205年）に、かつて存在した塞国を廃止して渭南郡が設置されました。しかし、高祖9年（紀元前198年）には廃止され、その管轄は内史に移されました。

渭南郡は、渭水の北、秦嶺山脈の南に位置する東西に細長い地域でした。西は首都である長安から、東は渭水と黄河の合流地点にまで及ぶ広大な範囲を管轄していました。郡の下には、以下の10県または9県が置かれていました。

長安県 - 高祖5年（紀元前202年）に設置
新豊県 - 高祖7年（紀元前200年）に設置
船司空県
藍田県
寧秦県 - 高祖8年（紀元前199年）に華陰県に改称
鄭県
胡県 - 後に建元年間（紀元前140年から紀元前135年）に湖県に改称
下邽県
杜県 - 後に元康元年（紀元前65年）に杜陵県に改称
芷陽県 - 後に文帝9年（紀元前171年）に覇陵県に改称。ただし、芷陽県は存在しなかったという説もあります。

北魏・西魏・北周時代の渭南郡

南北朝時代に入ると、北魏（386年 - 534年）が渭南県を治所として再び渭南郡を設置しました。しかし、北周（556年 - 581年）の時代に廃止されることとなりました。

行政長官（北周時代）

北周時代の渭南郡太守として、以下の人物が記録されています。

達奚長儒 - 天和年間（566年 - 572年）
田式 - 北斉滅亡（577年）より前
薛琰 - 年代不明

参考文献

司馬遷『史記』
班固『漢書』。小竹武夫訳注『漢書』3、筑摩書店（ちくま学芸文庫）、1998年。
李大師・李延寿『北史』
魏徴他『隋書』
中央研究院「漢籍全文資料庫」、2017年5月閲覧。
* 陳力「漢の長安城周辺の集落」、『阪南論集』（人文・自然科学編）、第38巻1号、2002年10月。

もう一度検索