鄭文燦

鄭文燦（チェン・ウェンツァン）

鄭文燦（てい ぶんさん、チェン・ウェンツァン、1967年7月6日 - ）は、中華民国（台湾）の政治家であり、民主進歩党（民進党）に所属しています。現在は行政院副院長を務めており、前桃園市長としても知られています。

学歴と学生時代

鄭文燦氏は、桃園県立大安国民小学、桃園市立八徳国民中学、台北市立建国高級中学を経て、国立台湾大学に進学しました。同大学では電機工学系と社会学系を学びましたが、最終的には国家発展研究所の修士課程を修了しました。学生時代から政治活動に積極的に関わり、以下のような活動を行いました。

台大学生報社：第1期のサークル長を務め、学内刊行物の出版に携わりました。
台湾研究社：初代サークル長を兼任し、学内サークル全体を取りまとめました。
台大学生会副会長：学生会の自治規定である「学生憲章」を完成させました。
二二八事件記念式典：犠牲者である台大学長林茂生の追悼式典開催に尽力しました。
大学法改正運動：学生と教授による街頭パレードを挙行し、学生自治の確立を訴えました。
野百合学運：意思決定小部会のメンバーとして、国民大会解散などの提言を行いました。

また、卒業後の徴兵期間中は中華民国国軍聯合後勤司令部に配属されました。

参謀としての経歴

大学卒業後、鄭文燦氏は政治活動を本格化させ、以下の役職を歴任しました。

国民大会代表スポークスマン（1991年）：陳菊、林濁水、蘇煥智、楊秋興らの当選した国民大会代表のスポークスマンを務めました。
新国民大会聯合研究室研究員（1992年）：工会法、労工法改正法案を提出しました。
邱垂貞立法委員弁公室主任（1992年）：桃園航空城構想を提出しました。
高植澎澎湖県長選挙事務所広報（1993年）：高植澎氏の選挙活動を支援しました。
陳定南台湾省長選挙事務所広報（1994年）：陳定南氏の選挙活動を支援しました。
呂秀蓮桃園県長選挙事務所青年団（1997年）：呂秀蓮氏の選挙活動を支援しました。
陳水扁、呂秀蓮陣営選挙事務所新聞部主任（2004年）：総統選挙の選挙事務所で新聞部主任を務めました。

公職と党職

鄭文燦氏は、その後、公職と党職を歴任し、その政治手腕を発揮しました。

桃園県議会議員（1998年）：第三選挙区（八徳市）で最高得票を得て当選しました。
桃園県議会民進党党団幹事長（2000年）：党団の運営を統括しました。
民主進歩党広報部副主任（2003年）：党の広報活動を担当しました。
民主進歩党文宣部主任（2004年）：党の宣伝活動を統括しました。
行政院新聞局局長兼行政院報道官（2006年）：台湾映画発展を強力に推進しました。
行政院政務顧問（2007年）：メディアへの政治介入疑惑で辞任後、顧問に転任しました。
海峡交流基金会副秘書長（2007年）：両岸関係に関する業務を担当しました。
民主進歩党文宣部主任（2008年）：総統選挙の選挙事務所で新聞部主任、スポークスマンを務めました。
民主進歩党組織部主任（2009年）：党の組織運営を担当しました。
民主進歩党桃園県支部主任委員（2009年）：桃園県支部の運営を統括しました。
民主進歩党中国事務委員会スポークスマン（2013年）：中国政策に関する広報活動を行いました。
桃園直轄市長（2014年）：六都選挙で初代桃園直轄市長に当選しました。
海峡交流基金会理事長（2024年）：理事長に就任しましたが、後に収賄容疑で逮捕され辞任しました。

桃園市長としての実績

桃園市長として、鄭文燦氏は数々の実績を上げました。

姉妹都市・友好都市締結：加賀市（石川県）、香川県、千葉県、成田市（千葉県）、カリフォルニア州サンバーナーディーノ郡、ラマト・ガンなどと友好関係を築きました。
市関連施設・企業友好提携：成田国際空港株式会社、関西エアポート・南海電鉄などと提携しました。
桃園機場捷運の開業：安全基準を下げることなく、桃園機場捷運を開業に漕ぎ着けました。
台鉄縦貫線立体化事業の地下化推進：高架化が決まっていた事業を地下化に切り替えました。
市内鉄道網整備（桃園捷運）の推進：政府から多くの認可を得て、市内鉄道網の整備を進めました。

市民からの評価

市議会は国民党が多数派である中、難しい舵取りを迫られましたが、鄭文燦氏は高い市民満足度を維持しました。特に、2016年12月20日発表の満足度調査では、6大直轄市でトップの施政満足度を獲得しました。

新型コロナウイルス対策

新型コロナウイルスの防疫対応では、空の玄関口である桃園国際空港を抱えながらも、2020年4月に行われた遠見雑誌による民調では70%超の満足度を得ました。

論争

2015年1月20日、桃園市新屋区ボーリング場火災事故で、視察時にFacebookでの状況報告と追悼文をアップロードしたことが、一部市民から不謹慎だと批判されました。この件については、事実上の謝罪に追い込まれました。

施政評価

市長に対する市政満足度と施政評価調査の結果、鄭文燦氏は高い評価を得ています。

遠見雑誌：2015年から2020年まで、満足度、施政評価ともに年々上昇し、最高評価である5つ星を獲得しました。
天下雑誌：2015年から2019年まで、施政満足度が高く、特に2017年から2019年にかけては六都で1位を獲得しました。

日本との関係

日本との友好関係構築に積極的であり、2016年熊本地震では報酬の1ヶ月分を被災地に寄贈しました。また、桃園市政府消防局特捜大隊（レスキュー隊）及び災害救助犬をいつでも派遣可能な態勢を整えました。

逸話

大学時代には、電気工学部から社会学部に鞍替えした理由について、同党立法委員に「クラスメートの女子の後を追いかけた」と暴露されていますが、本人は「社会の変革者が必要だと感じた」と説明しています。
2009年の桃園県長選挙時、公示日が迫る中、蔡英文が鄭氏に白羽の矢を立てました。参選声明は「庶民台湾、勇敢承擔」と赤壁の戦いを捩ったものでした。
蔡英文は鄭氏を武双全や三国志の周瑜に喩えましたが、本人は「現在オーバーウェイトで『胖周瑜』だ。」と自嘲しています。

2009年桃園県長選挙

急遽2009年の統一地方選挙に出馬し、58日間という短い選挙活動期間の中、4万9,000票あまりの僅差で落選しました。しかし、得票率では46%に迫る善戦ぶりで、これは特に伝統的に国民党が強い桃園県においては党の過去最高の得票率でした。蔡英文はこれを「鄭文燦58日間の奇跡」と評しました。

2012年桃園県立法委員選挙

2012年の立法委員選挙では、地元桃園県選挙区から出馬するも、国民党のベテラン議員に2万票差で敗れました。

2014年桃園市市長選挙

2014年の桃園市長選挙では、現職の呉に3万票差の僅差で勝利し、47歳での当選は、陳水扁に次いで史上2番目に若い直轄市長の当選となりました。

2018年桃園市長選挙

2018年の桃園市長選挙では再選を果たしました。

その他の情報

鄭文燦氏は、市民からの信頼も厚く、台湾政界において重要な役割を担っています。その今後の活躍に期待が集まっています。

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