野塚駅

野塚駅（のづかえき）は、かつて北海道十勝地方の広尾郡広尾町に設けられていた、日本国有鉄道（国鉄）広尾線の鉄道駅でした。この駅は、広尾線の全線開業から廃止までの約54年間にわたり、この地域の人々の生活を支える交通結点としての役割を担っていましたが、現在ではその姿を見ることはできません。電報略号は「ノカ」、国鉄の事務管理コードは「▲111514」が付与されていました。

沿革

野塚駅は、広尾線が大樹駅から終点の広尾駅まで延伸され、路線が全通した1932年（昭和7年）11月5日に、旅客および貨物を取り扱う一般駅として開設されました。
開業後、運営体制の変更に伴い、1960年（昭和35年）4月1日には業務委託駅へと移行します。
時代の流れとともに貨物輸送の需要が減少し、1961年（昭和36年）11月6日には早くも貨物の取り扱いが廃止されました。
さらに、旅客以外の扱いも縮小され、1974年（昭和49年）12月15日には手荷物や小荷物などの荷物の取り扱いも終了しました。これと同時に駅に配置されていた駅員が無人化され、駅舎も利用状況や形態の変化に合わせて改築されました。
そして、特定地方交通線に指定されていた広尾線が、国鉄分割民営化を前に全線廃止されることが決定し、1987年（昭和62年）2月2日の広尾線廃止に伴い、野塚駅もその歴史に幕を下ろしました。

駅名の由来

駅名は、所在地の地名である「野塚」に由来しています。この地名は、地域の主要な河川である豊似川の支流、野塚川の名前から付けられました。
野塚川の名称は、アイヌ語の「ヌㇷ゚カペッ（nupka-pet）」が語源であるとされており、これは「野・川」という意味を持っています。駅名は、このアイヌ語名の前半部分にあたる「ヌㇷ゚カ」から採られたと考えられています。

駅構造

野塚駅は廃止時点において、単式ホーム1面1線のみを持つ地上駅でした。プラットホームは、線路の西側に設けられており、広尾方面へと向かう列車から見ると右手に位置していました。
構内には列車の交換（行き違い）や折り返しを可能にするための分岐器（転轍機）は一切設置されておらず、単に列車が停車・発車する機能のみを持つ「棒線駅」と呼ばれるシンプルな構造でした。
駅舎については、無人化された1974年に建て替えが行われ、それまでの駅舎よりも洗練されたデザインの建物になったと記録されています。この駅舎は構内の西側に位置しており、ホームからは少し離れた場所に建っていました。かつて存在した根室本線の姉別駅の駅舎と類似した形状であったと伝えられています。

利用状況

野塚駅の利用状況を示すデータとして、1981年度（昭和56年度）の記録が残っています。この年の1日あたりの平均乗降客数は31人でした。この数字は、当時の広尾線における他の駅と比較しても、比較的少ない利用状況であったことを示唆しています。

駅周辺

駅の周辺には、いくつかの生活関連施設や主要な道路が存在しました。主な道路としては、北海道道238号更別幕別線や、太平洋沿いを走る国道336号が近くを通っています。
地域住民の生活を支える施設としては、十勝野塚郵便局や、広尾町立野塚小学校が駅の周辺に位置していました。
広尾線の廃止後、代替交通手段としてバスが運行されるようになり、駅跡地の近くには「野塚」という名称のバス停留所が設置されました。現在、このバス停には、広尾線の代替バスとしての役割を担う十勝バスの路線や、札幌と広尾を結ぶジェイ・アール北海道バスの高速バス「高速ひろおサンタ号」が停車しています。

駅跡地

広尾線の廃止から長い年月が経過した野塚駅の跡地は、大きく変化しました。1999年（平成11年）および2010年（平成22年）の調査時点では、かつて駅があったことを示す鉄道関連施設、例えばホームや線路、駅舎などはすべて撤去されており、何も残されていない状態でした。
駅跡地は荒れ地と化しており、鉄道駅が存在したという痕跡はほとんど見られなくなっています。

隣接駅

日本国有鉄道 広尾線
豊似駅 - 野塚駅 - 新生駅

もう一度検索