金忠 (兵部尚書)

金忠（きん ちゅう）は、明代の易者・軍人として知られています。至正13年（1353年）に生まれ、永楽13年（1415年）に63歳で亡くなりました。字は世忠、本貫は明州鄞県です。

生い立ちと易者としての才能

金忠は、金文英と馬氏の間に生まれました。幼い頃から学問に励み、特に易の占術に長けていました。兄が兵役中に亡くなったため、代わりに兵役につくことになります。しかし、任地へ向かうための資金が不足していたところ、相者の袁珙に援助を受けました。任地に到着後、金忠は兵士として部隊に配属されました。北平の市で占いを始めると、その的中率の高さから評判を呼びました。

燕王朱棣との出会い

建文元年（1399年）、僧の道衍の紹介で、後の永楽帝となる燕王朱棣と出会いました。当時、朱棣は挙兵を考えており、病気を理由に金忠を呼び出して占いをさせました。その結果、「鑄印乗軒」（果断に行動すれば天を継承できる）という卦を得ました。朱棣はこの結果を秘密にし、金忠は燕王府に出入りするようになります。朱棣は、起兵の計画を金忠の占いの結果に従って決定しました。

靖難の変での活躍

燕王軍が挙兵し、靖難の変が勃発すると、金忠は燕王府紀善に任じられ、通州を守備しました。建文帝側の軍勢が何度も通州を攻めましたが、落とすことはできませんでした。その後、金忠は朱棣に召し出され、側近として諮問に応え、計略を進言しました。建文3年（1401年）には右長史に任じられ、軍務に参与し、朱棣の重要な謀臣として活躍しました。

永楽帝即位後の活躍

建文4年（1402年）、朱棣が永楽帝として即位すると、金忠は王業を補佐した功績により工部右侍郎に抜擢されました。永楽帝の長男である朱高熾が北京を守るのを補佐しました。永楽2年（1404年）には南京に召還され、兵部尚書に進みました。靖難の変で功績のあった永楽帝の次男、朱高煦を太子に推す動きがありましたが、金忠はこれに反対し、嫡子を差し置いて災いを招いた歴史を例に挙げました。永楽帝が解縉、黄淮、尹昌隆と密かに相談すると、彼らも金忠の意見を支持しました。結果、朱高熾が皇太子に立てられ、金忠は東宮輔導官となり、兵部尚書のまま詹事府詹事を兼務しました。永楽6年（1408年）には、皇太孫朱瞻基の輔導も命じられました。

晩年

永楽11年（1413年）、永楽帝が北京に移ると、金忠は蹇義、黄淮、楊士奇と共に南京に残り、太子朱高熾の監国を補佐しました。この頃、漢王朱高煦による皇位簒奪の陰謀が企てられ、太子を誹謗する噂が飛び交いました。永楽12年（1414年）に永楽帝が漠北遠征から帰還すると、東宮の官僚たちは投獄されましたが、金忠は過去の功績により不問とされました。永楽13年4月17日（1415年5月25日）、金忠は63歳で亡くなりました。洪熙元年（1425年）には、栄禄大夫・少師の位を追贈され、諡号は忠襄とされました。

金忠の子である金達は、翰林院検討を経て長蘆都転運使となりました。

参考文献

『明史』巻150 列伝第38
兵部尚書兼詹事金公墓碑銘

金忠は、その占術の才能と軍事的な能力で、明朝の初期を支えた重要な人物の一人でした。

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