鎖陽城

鎖陽城：シルクロードの古都、歴史と文化の交差点

鎖陽城は、中国北西部の甘粛省酒泉市瓜州県に位置する、かつてシルクロードの重要な拠点として栄えた古代都市の遺跡です。別名を苦峪城とも呼ばれ、その歴史は前漢時代に遡ります。2014年にはユネスコの世界遺産に登録され、その文化的・歴史的価値が国際的に認められました。

鎖陽城の歴史

鎖陽城は、紀元前111年に前漢の武帝によって敦煌郡の冥安県の政庁が置かれたのが始まりです。その後、295年に西晋の恵帝によって現在地に移され、唐・西夏の時代には晋昌郡（後の瓜州）の郡都として繁栄を極めました。最盛期には5万人もの人々が暮らしていたと推定され、1000年以上にわたり河西回廊における政治、経済、文化の中心地としての役割を果たしました。

しかし、16世紀の明代にモグーリスタン・ハン国のマンスールによる攻撃を受け、都市は破壊され、その歴史に幕を閉じました。

遺跡の構成

鎖陽城の遺跡は、内城、外城、そしてそれらを繋ぐ「羊馬城」と呼ばれる特殊な構造物で構成されています。城壁の外側には広大な考古公園が広がり、冥安県時代の遺跡、2,000を超える墓、全長90キロメートル以上に及ぶ灌漑システムの遺跡など、様々な遺構が点在しています。

内城

内城は不規則な長方形をしており、面積は約285,000平方メートルです。城壁は版築で築かれており、高さは9〜12.5メートルに達します。城内には東西と南北にそれぞれ大通りが走り、そこから枝分かれするように細い路地が伸びています。内城は西地区と東地区に分かれており、西地区には多くの家屋跡が発見されているのに対し、東地区には政庁や上級官吏の住居があったと考えられています。

外城

外城も不規則な長方形をしており、内城を囲むように広がっています。唐代に最盛期を迎えた鎖陽城の主要な居住区であったと考えられていますが、南方の山岳地帯からの洪水によって城壁の一部が破壊され、大きな損傷を受けています。

羊馬城

外城と内城の間には、「羊馬城」と呼ばれる防塞が存在します。これは、平時には家畜の囲いとして利用され、戦時には軍事的な防御施設としての役割を果たしたと考えられています。

城外の遺構

鎖陽城の周辺には、仏教寺院の遺跡や多くの墳墓、そして大規模な灌漑システムなど、様々な遺構が残されています。

塔爾寺

遺跡の東1キロメートルには、古文書に記録されているアショーカ王の寺院と考えられている仏教寺院の遺跡があります。唐の高僧である玄奘三蔵が天竺巡礼に出発する前に説法を行った場所とされており、仏教史上重要な場所の一つです。

墳墓

城外には2,100を超える墳墓が発見されており、その多くは漢代から唐代にかけてのものと考えられています。1992年には盗掘によって唐代の大規模な墳墓が暴かれ、唐三彩や埴輪、絹、磁器など、貴重な工芸品が多数発見されました。

灌漑システム

鎖陽城を囲むように、約90キロメートルに及ぶ大規模な灌漑用水路の遺跡が残っています。これらの水路は疏勒河の水を農業に利用するために建設されたもので、漢・唐代には30万畝もの農地を潤していたと推定されています。

保存と世界遺産登録

鎖陽城は、1996年に中国の全国重点文物保護単位に指定され、遺跡の保護が進められてきました。2014年には、「シルクロード：長安-天山回廊の交易路網」の一部としてユネスコの世界遺産に登録され、その国際的な価値が改めて認められました。

鎖陽城は、シルクロードの歴史を今に伝える貴重な遺跡であり、東西文化交流の証として、これからも大切に保存されていくことでしょう。

もう一度検索