長谷川貞信 (2代目)

二代 長谷川 貞信（1848年10月18日 - 1940年6月21日）は、明治時代から昭和時代にかけて活躍した大坂の浮世絵師です。初代長谷川貞信の長男として生まれ、本名は徳太郎といいました。天下茶屋に住んだ後、岸の里に隠居し、その地で生涯を終えました。

幼少の頃より父である初代貞信と、歌川芳梅に師事し、浮世絵の技術を磨きました。最初は小信（このぶ）と号し、慶応元年（1865年）頃からその名で作品を発表しました。明治8年（1875年）に父から貞信の名を譲り受け、二代長谷川貞信を名乗るようになりました。

初代貞信は、役者絵や「浪花百景」などの風景版画を得意とし、幕末から明治初頭にかけて上方浮世絵界で活躍しました。二代貞信もその伝統を受け継ぎ、役者絵を主に制作しました。その他、神戸名所、浪花名所、浪花十二景など開化期の風景画、風俗画、玩具絵、武者絵、戦争絵、美人画、『日々新聞』の挿絵や銅版画など、幅広いジャンルの作品を手がけました。

小信と名乗っていた頃には、「播州神戸海岸繁栄之図」をはじめとして、神戸や大阪（川口）の居留地などを舞台に、鉄道、鉄橋、西洋館など明治初年の文明開化の風俗を細やかに描きました。小信時代に描かれた神戸を題材にした開化絵は、開港当時の風俗や居留地の景観を知る上で貴重な資料となっています。

貞信を継いだ後は、錦絵新聞や西南戦争を題材とした錦絵を多く制作しました。銅版画や石版画が普及し、浮世絵の需要が衰退した明治10年（1877年）以降には、商店の引き札（広告）や輸出茶の商標、芝居絵の番付なども手がけました。また明治17年（1884年）には、中判の役者絵が主流であった上方役者絵界に大判の判型を復活させました。

大阪の文化・芸術を取り上げた月刊誌『郷土研究上方』は、1931年（昭和6年）1月から1944年（昭和19年）4月まで151号発行されましたが、そのうち95号の表紙絵を二代貞信が担当しました。明治43年頃まで作画を続け、93歳で亡くなりました。墓所は初代と同じ天鷲寺にあり、法名は明徳院貞信遍照居士です。

二代小信は、初代貞信の次男で、二代貞信の弟である貞吉が継ぎました。門人には、中村貞以や三代長谷川貞信などがいます。

代表的な作品

「神戸新福原大門之図」 横長判 明治4年頃
「播州神戸海岸繁栄之図」 大判3枚続 神戸市立博物館所蔵 明治4年（1871年）
「大阪府鉄道寮ステン所之図」 大判3枚続 明治7年頃
「坂府新名所 神戸港」 横大判
「長州藩藤村禄平・薩州藩大久保市蔵ら諸藩藩士12名の絵」（玩具絵）細判 関西大学図書館所蔵
「薩賊戦争記」 大判3枚続 関西大学図書館所蔵
「水戸黄門光国・天津乙女」 大判3枚続 明治11年11月角座、同年12月角座『黄門記八幡大薮』より
「道頓堀角劇場繁栄之図 大判4枚続 明治17年 和泉市久保惣記念美術館所蔵
『雨夜のつれつれ三題咄』 噺本 文福社中作
『おとし噺』 噺本 文福社中作
『為朝一代記』 絵本
『文の枝折』 艶本
「船上美人図」　絹本着色 熊本県立美術館所蔵　昭和12年（1937年）
「浪花百勝」 絹本著色 短冊組物100枚 大阪歴史博物館所蔵 昭和15年（1940年）

もう一度検索