長野羊奈子

長野羊奈子：国際的な舞台で輝いたメゾソプラノ歌手

長野羊奈子（ながの よなこ、1933年7月17日 - 2014年10月20日）は、日本の声楽家であり、その才能は国際的に高く評価されました。本名を若杉羊奈子といい、指揮者である若杉弘を夫に持ち、外交官の若杉要を義父に持つという音楽一家に生まれました。

東京芸術大学音楽学部声楽科を卒業後、1958年に西ドイツ政府の給費留学生としてベルリン国立音楽大学へ留学。4年後には同大学を卒業すると同時に、ベルリン・ドイツ・オペラの研究生となりました。1963年には、日本人として初めてベルリン・ドイツ・オペラの正団員となり、モーツァルトの『フィガロの結婚』ケルビーノ役や、プッチーニの『蝶々夫人』スズキ役など、数々の主要な役を演じました。同年には、ベルリン・ドイツ・オペラの一員として6年ぶりに日本に帰国し、ベルクの『ヴォツェック』マルグレート役で日本デビューを果たしました。

長野は、畑中良輔、ヘルベルト・ブラウアー、田中路子といった著名な指導者に師事し、その才能を磨きました。1965年の帰国後には、「ウィーン古典派室内楽の夕」で新ウィーン楽派の歌曲を独唱し、芸術祭奨励賞を受賞。1967年には、東京モーツアルト劇場で『フィガロの結婚』ケルビーノ役を再び演じ、二期会創立15周年記念公演ではワーグナーの『パルジファル』クンドリー役、1969年には『ラインの黄金』フリッカ役を務めるなど、数多くのオペラに出演しました。彼女のオペラ出演回数は、記録に残っているだけでも37回に及びます。

オペラだけでなく、長野はコンサートソリストとしても輝かしい実績を残しました。ベルリン・フィル＝カラヤン指揮によるベートーヴェンの『第九』のソリストを務めた他、読売日本交響楽団や日本フィルハーモニー交響楽団の公演でもソリストとして活躍しました。特に、リゲティの『レクイエム』日本初演や、マーラーの交響曲第8番『千人の交響曲』では、その卓越した歌唱力が際立ちました。また、マーラーの交響曲第2番『復活』や『亡き子をしのぶ歌』など、数々の宗教曲の録音にも参加しています。長野は、その優れた歌唱力と舞台での存在感で、オペラ、リート、オラトリオ歌手として確固たる地位を築きました。

音楽教育者としての長野もまた、多くの音楽家を育てました。東京芸術大学音楽学部の講師を経て、桐朋学園大学の客員教授を務め、藤原映子、岡田彩子、小山由美、三浦泰子など、数多くの優れた門下生を輩出しました。特に、小山由美は国際的なメゾソプラノ歌手として、その地位を確立しています。

晩年には、水戸芸術館の企画による音楽物語『ぞうのババール』や「オペラの花束をあなたへ」などの公演で、表現力豊かなナレーションを披露し、その多才ぶりを示しました。2014年10月20日、肺炎のため81歳で生涯を閉じましたが、彼女の遺志は、東京藝術大学に設立された「長野羊奈子賞奨学金」として、後世に受け継がれています。

主な顕彰と録音

長野羊奈子の功績は、数々の顕彰によっても証明されています。1965年には文化庁芸術祭賞奨励賞を、1974年にはジロー・オペラ賞を受賞しました。また、彼女の録音は、その才能を後世に伝える重要な資料となっています。

主な録音には、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』ルチア役（1961年）、ベルリン・フィル＝カラヤン指揮によるベートーヴェンの交響曲全集（1966年）、ベートーヴェンの交響曲第9番『合唱付き』（1968年）、マーラーの交響曲第8番『千人の交響曲』などがあります。これらの録音は、長野羊奈子の類まれな才能を今日に伝える貴重な記録です。

長野羊奈子は、その卓越した才能と情熱をもって、日本の音楽界、そして国際的な舞台で輝かしい足跡を残しました。彼女の功績は、今後も長く語り継がれることでしょう。

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