阿部道

阿部道（あべ とおる）

宮城県仙台市出身の元競輪選手。1948年1月19日生まれ。日本競輪学校第23期卒業。現役時代は日本競輪選手会宮城支部に所属し、宮城自転車競技場をホームバンクとして活躍しました。1966年9月16日に函館競輪場でデビューし、同日に初勝利を挙げています。

生い立ちと選手生活の始まり

仙台市立仙台商業高等学校出身で、4人兄弟の長男。3人の弟も元競輪選手という競輪一家でした。デビュー当初は、平間誠記選手と練習を共にする機会が多かったものの、実際には平間選手が若手選手を指導するという側面が強く、厳しい練習を強いられたそうです。特にロードワーク中には、競りの練習と称して田んぼに突き落とされることもあったとか。しかし、平間選手は阿部選手の才能を高く評価していたと言われています。

1968年に平間選手が不慮の事故で亡くなった後、彼と厳しい練習を重ねてきた若手選手たちが次々とGIタイトルを獲得し始めます。その中で、阿部選手は華麗な捲りを武器に、福島正幸選手、田中博選手と共に「三強」として競輪史に名を刻むことになります。

三強時代と宮城王国

デビュー5年目の1971年、阿部選手は競輪祭で初のGI制覇を果たします。当時、GIレースは競輪祭と高松宮杯しか開催されていませんでしたが、そのうちの1つを制覇したことは大きな功績でした。この勝利をきっかけに、阿部選手は既に一流選手として活躍していた福島選手、田中選手と並び、「三強」と呼ばれるようになります。また、同じ宮城出身の荒川秀之助選手や河内剛選手も日本選手権競輪を制覇していたことから、当時宮城は「宮城王国」とも呼ばれ、福島選手らの群馬王国と共に競輪界の二大勢力を形成しました。

1973年の日本選手権決勝では、福島選手、田中選手との激戦を制し、念願のダービー王の座を獲得。宮城勢が日本選手権を3連覇するという偉業を達成しました。また、同年のオールスター競輪決勝では、三強が横一線でゴールする白熱したレースを展開しました。

「完全優勝」と三強の崩壊

1974年のオールスター競輪では、ファン投票1位でドリームレースに出場し、初代ドリームレース勝利者となると同時に、決勝戦でも優勝を飾り、「ファン投票1位、ドリーム戦勝利、優勝」という3つの1位を同一年開催で達成するという、今でも阿部選手しか成し遂げていない記録を打ち立てました。この頃、阿部選手の勢いは他の二強を凌ぐほどでしたが、翌1975年、三強時代は終わりを迎えます。

1975年の日本選手権では、阿部選手は決勝進出を逃し、優勝したのは当時22歳の高橋健二選手でした。この優勝を機に、阿部良二選手をはじめとする若手選手の台頭が目覚ましくなり、阿部選手ら三強はヤング勢に太刀打ちできなくなっていきます。1975年は高松宮杯で2着、競輪祭で5着と決勝に進出していますが、1976年には競輪祭で8着となり、同じ阿部でも良二選手の爆発的なパワーに完敗を喫しました。これを境に、阿部選手がGIの決勝へ進出することはなくなってしまいました。また、群馬王国と共に競輪界を牽引してきた宮城王国も、次第にその勢いを失っていきました。

その後

トップクラスから転落した後も、阿部選手は2004年3月まで現役を続け、2001年6月25日には通算700勝を達成。最終的には通算720勝を挙げました。また、非常に饒舌で、思ったことをズバズバ言う性格からマスコミにも人気があり、「ミスター競輪」と呼ばれることもありました。常に「落車は百害あって一利なし」と語り、完走することの大切さを説いていました。

引退後は、いわき平競輪場のアドバイザーを務め、同競輪場ではS級シリーズ「阿部道杯」が毎年開催されています。2010年には自転車トラック競技の日本ナショナルチーム監督に就任しましたが、東日本大震災で自宅が被災したため、辞任しました。2016年からは日本名輪会の会員として活動しています。

主な獲得タイトルと記録

1971年：競輪祭競輪王（小倉競輪場）
1973年：日本選手権競輪（西武園競輪場）
1974年：オールスター競輪（静岡競輪場）
年間賞金王：2回（1973年・1974年）

著書

『これで競輪のすべてがわかる-競輪はKEIRINに変わった-』サンケイブックス 2015年 ISBN 978-4782904497

外部リンク

選手通算戦績 - KEIRIN.JP

関連項目

競輪選手一覧
福島正幸
田中博
平間誠記

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