陳敬宗

陳敬宗（ちん けいそう、1377年 - 1459年）は、明代に活躍した官僚であり、卓越した学者としても知られています。字は光世、号は澹然居士と称しました。彼の本貫は寧波府慈谿県にあります。

1404年（永楽2年）、陳敬宗は進士の試験に合格し、翰林院庶吉士に選ばれました。その才能は早くから認められ、文淵閣に進学し、国家的な大事業である『永楽大典』の編纂に携わります。1408年（永楽6年）に『永楽大典』が完成すると、その功績により刑部主事に任じられました。

その後も、彼の活躍は続きます。1414年（永楽12年）には、『五経大全』と『四書大全』の編纂事業、そして『太祖実録』の再編修事業にも参加しました。1418年（永楽16年）には、その学識の高さから翰林院侍講に任じられます。しかし、母の死去に伴い辞職し、故郷で喪に服すことになります。

1426年（宣徳元年）、陳敬宗は『成祖実録』と『仁宗実録』の編纂事業に再び起用されます。その翌年、1427年（宣徳2年）には、南京国子監司業に転じ、教育分野での貢献を始めました。1434年（宣徳9年）には、南京国子祭酒に進み、その教育者としての地位を確立しました。

1444年（正統9年）、任期満了により北京に入った後、再び南京国子祭酒に再任されました。1447年（正統12年）冬には帰休を願い出ますが、その才能を惜しまれ、許可されませんでした。1450年（景泰元年）9月、ついに致仕し、その長い官僚生活に幕を閉じました。1459年（天順3年）5月、83歳でその生涯を終えました。彼の死後、礼部侍郎の位が追贈され、文定という諡号が贈られました。著書には、『澹然文集』と『澹然詩集』があります。

陳敬宗は、その人柄と学識の高さから、多くの逸話が残されています。美しく整った髭を持ち、容姿や立ち居振る舞いは端正で、常に師として模範となるよう努めていました。講義を行う際には、六館士1000人以上が集まり、その様子はまるで朝廷のようであったと言われています。

彼は周忱と非常に親しく、互いに信頼しあう間柄でした。また、宦官の王振が贈り物で取り入ろうとしても、彼は決して受け取ろうとしませんでした。吏部尚書の王直が刑部尚書として推薦しましたが、「今は天下の英才と終日議論するのが楽しい」と言って辞退したという逸話も残っています。

酒豪としても知られ、数斗飲んでも乱れることはありませんでした。襄城伯李隆が南京で守備にあたっていた際、李隆との会飲では常に歌妓が周囲にいましたが、彼は女性たちに一切目をくれなかったと伝えられています。

南京国子祭酒としての陳敬宗は、北京国子祭酒の李時勉とともに賢者として並び称えられ、「南陳北李」と称されました。これは、彼らの卓越した人格と学識が、当時の社会に広く認められていたことを示しています。

陳敬宗は、その生涯を通じて、明代の政治と文化に大きく貢献した人物であり、その名は後世にまで語り継がれています。

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