陽泰院

陽泰院（ようたいいん）

陽泰院は、戦国時代から安土桃山時代、そして江戸時代初期を生きた女性です。肥前佐賀藩の藩祖である鍋島直茂の正室であり、初代藩主鍋島勝茂の生母として知られています。彼女は、その生涯を通して、佐賀の歴史に大きな足跡を残しました。

生涯

陽泰院は、天文10年（1541年）に肥前国佐嘉郡与賀郷飯盛村（現在の佐賀県佐賀市本庄町鹿子）の領主、石井常延の次女として誕生しました。幼名は彦鶴姫といい、後に藤と名乗りました。家中では、御簾中、藤の方、北の方などと呼ばれ、領民からは国母様と慕われていました。彼女は、父である石井常延が仕えていた龍造寺隆信の家臣、納富信澄に嫁ぎますが、信澄が戦死したため、娘と共に実家に戻ります。その後、龍造寺隆信が佐賀城へ向かう途中に飯盛城に立ち寄った際、彼女が手際よく大量の鰯を焼いた姿に感銘を受けた鍋島直茂が求婚し、永禄12年（1569年）に結婚しました。この結婚は、譜代家臣団の名門鍋島家と石井家の縁組であったため、主君の龍造寺隆信も大変喜んだと伝えられています。夫の直茂とは恋愛結婚であり、安土桃山時代の代表的な夫婦として知られています。

直茂は、龍造寺隆信の重臣として活躍し、隆信の覇業に大きく貢献しました。陽泰院は、戦場で活躍する夫を陰で支え続け、その聡明さと慈悲深さで、家臣や領民からの信頼も厚かったとされています。また、夫との仲は非常に良好で、隠居後も穏やかな生活を送っていたと伝えられています。彼女は、鍋島氏が佐賀藩主となるのを見届け、89歳という長寿を全うしました。死後、墓所は鍋島家の菩提寺である高伝寺に建立され、その墓石は、かつて夫直茂が朝鮮出兵の際に陣中で枕にした石が用いられています。また、佐賀県佐賀市嘉瀬町にある西林寺は、陽泰院が晩年に開基した寺院です。

人物

陽泰院は、その聡明さと慈悲深さで知られています。龍造寺隆信が人質として預かっていた田尻善右衛門を処刑しようとした際、彼女は幼い善右衛門の命を救うよう強く嘆願し、その結果、善右衛門は佐賀藩士として成長しました。また、龍造寺隆信が沖田畷の戦いで敗北した際には、動揺する家臣団をまとめ、鍋島家の団結に貢献しました。豊臣秀吉が朝鮮出兵の際に大名の妻子を慰労しようとした際には、秀吉の好色ぶりを警戒し、わざと醜い髪形と化粧で拝謁したという逸話も残っています。

親族

陽泰院は、以下のような親族に囲まれていました。

父：石井常延（飯盛城主、龍造寺家の家老）
母：蓮華院（千葉家連枝黒尾氏女）
兄：石井常忠（龍造寺隆信の馬廻。四将の一人）
姉：法性院（石井忠俊室、鍋島茂里・茂賢兄弟の祖母）
弟：石井賢次（忠張）
妹：日喜（鍋島家臣・杉町信房室）
夫：納富信澄
長女：慈光院（家老太田茂連室）
夫：鍋島直茂（佐賀藩祖）
次女：千鶴姫（家老多久安順室）
三女：彦菊姫（家老諫早直孝継室）
長男：鍋島勝茂（初代佐賀藩主）
次男：鍋島忠茂（鹿島藩主）
義理の娘：伊勢龍姫（鍋島茂里室）※母は高木胤秀女慶円

陽泰院を演じた女優

* 三保敦美（「葉隠大名」　1941年 新興キネマ京都）

陽泰院は、佐賀の歴史において重要な人物であり、その生涯と逸話は、現在でも多くの人々に語り継がれています。

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