電話の歴史

電話の歴史

電話は、19世紀に多くの発明家たちの手によって、試行錯誤を繰り返しながら誕生しました。電気的な音声通信は、一人の天才によって発明されたのではなく、様々な技術やアイデアが組み合わさって生まれたものです。その歴史を紐解いていきましょう。

前史：電気を使わない音声通信

電気式の電話が登場する以前には、物理的な方法で音声を遠くに伝える試みが行われていました。ここでは、伝声管と糸電話について解説します。

伝声管

伝声管は、管を通して音声を伝える仕組みです。フランシス・ベーコンが1627年に著書で提案したことが知られており、18世紀には行政や軍事など、幅広い分野で利用されました。現代でも船舶内での通信に使われることがあります。

糸電話

糸電話は、糸やワイヤーを使って音声を伝える仕組みです。ロバート・フックが17世紀に実験を行っており、19世紀後半には実用的な製品として販売もされていました。現在では玩具として知られていますが、かつては真剣に研究されていた通信手段でした。

電信技術の発展

19世紀初頭から、電信の技術開発も活発に行われました。サミュエル・モールスは電信装置を開発し、助手のアルフレッド・ヴェイルがモールス符号を考案しました。1844年には、ワシントンD.C.とボルチモア間に電信線が開通し、その後アメリカ全土に急速に広がりました。

電気式電話の誕生

電信が普及する中で、電気式の電話が誕生しました。初期の電話開発には、アントニオ・メウッチ、イライシャ・グレイ、アレクサンダー・グラハム・ベル、トーマス・エジソンらが関わりました。特にベルの特許は、その後の電話技術に大きな影響を与えました。

日本語の「電話」

英語では「telephone」と呼ばれ、音声での通信を意味します。これは、文字を伝える「telegraph」と対比した概念です。日本語では、「電気」が強調された「電話」という訳語が定着しました。

電話の歴史年表

1844年: イタリアのインノチェンツォ・マンチェッティが、世界初の「音声電信」のアイデアを提唱。
1854年: フランスのシャルル・ブルサールが、音声の電送に関する記事を発表。
1861年: ドイツのヨハン・フィリップ・ライスが、ライス式電話を公開。
1871年: イタリアのアントニオ・メウッチが、「サウンド・テレグラフ」の特許を申請。
1875年: アレクサンダー・グラハム・ベルが、電信の送受信機に関する特許を取得。
1876年:
イライシャ・グレイが電話用の液体抵抗型送話機を考案。
グレイとベルがそれぞれ電話に関する特許を申請。
ベルの特許が成立し、電話の歴史が大きく動き出す。
ベルがフィラデルフィア万国博覧会に電話機を出展し、金賞を受賞。
ハンガリー人技師ティヴァダル・プシュカーシュが電話交換機を発明。
伊沢修二と金子堅太郎が、ベルの下宿先で初の英語以外の言語での通話を体験。
1877年:
ベルが電磁式電話の特許を取得。
エジソンが炭素送話機に関する特許を出願。
アメリカから日本に電話機が初めて送られる。
工部省が電話機を輸入し、試験運用を開始。
日本で初めて電話が実用化される。
1878年: アメリカで多くの電話会社が開業。
1880年: 日本初の鉄道電話が開通。
1883年：工部省電信局長石井忠亮が国営電話事業の必要性を政府に建議。
1889年: アルモン・ブラウン・ストロージャーが、ステップ・バイ・ステップ交換機を発明。
1890年: 東京・横浜で電話サービスが開始。
1906年: 太平洋横断海底ケーブルが布設される。
1913年: 日本の電話加入者数が20万件を突破。
1920年: スウェーデンでクロスバ自動交換方式が実現。日本では電話の需要が急増。
1926年 - 1979年: 自動化（ダイヤル式）への移行。
1937年: リーブスが、パルス符号通信 (PCM) を発明。
1952年: 日本[[電信電話公社]]が設立。
1962年: AT&Tが、PCMディジタル有線伝送方式を実用化。
1969年: プッシュホンが登場。
1976年: ベル研究所が、ディジタル交換機を実用化。
1984年: ITUがISDNに関する標準勧告を作成。
1985年: 電気通信事業の自由化開始。
1988年: ISDN方式デジタル電話INSネット64が開始。
2001年: マイラインが開始。
* 2002年：アントニオ・メウッチが電話の最初の発明者として公式に認められる。

まとめ

電話は、多くの先人たちの努力と試行錯誤によって生まれた技術です。伝声管や糸電話といった物理的な方法から、電信技術を経て、電気的な音声通信へと発展しました。19世紀の技術革新が、現代の私たちの生活に欠かせないコミュニケーション手段を築き上げたと言えるでしょう。

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