韓寿 (前燕)

韓寿（かん じゅ）

韓寿は、五胡十六国時代の前燕に仕えた人物で、生没年は不明です。遼東郡の出身であり、慕容部の首領であった慕容廆に仕え、その治世を支えました。

経歴

韓寿が慕容廆に仕えた時期は明確ではありませんが、319年12月、宇文部の大人である宇文遜昵延が数十万の兵を率いて慕容部の本拠地である棘城に侵攻した際、その危機を救うために重要な役割を果たしました。城内外の人々が動揺する中、慕容廆は庶子の慕容翰に救援を求めましたが、慕容翰は籠城策を進言し、自らは遊撃隊として敵を撹乱すると伝えました。慕容廆はこれを臆病と疑いましたが、韓寿は宇文遜昵延の軍勢の驕りを指摘し、奇襲による撃破が可能であると進言しました。この進言が受け入れられ、慕容翰は遊撃隊として宇文部の陣営を奇襲し、大混乱に陥れて撃退に成功しました。

321年12月、慕容廆が東晋より遼東公に冊封されると、韓寿は別駕に任じられ、その功績を認められました。333年6月に慕容廆が亡くなり、嫡男である慕容皝が後を継ぐと、337年9月、慕容皝が燕王に即位するにあたり、韓寿は司馬に任じられ、列卿・将帥の一員として国政に参画しました。その後、左長史に昇進し、慕容皝を補佐しました。

342年11月、慕容皝が自ら4万の兵を率いて高句麗征伐に赴くと、韓寿もこれに従軍し、木底の戦いで敵将である阿仏和度加を討ち取るという武功を挙げました。さらに、首都の丸都城を陥落させるなど、高句麗征伐において大きな戦果を挙げました。慕容皝が軍を退却させようとした際、韓寿は高句麗の地の戦略的重要性から、故国原王の父の屍を奪い、その母を人質として連れ帰ることで、高句麗を臣従させることを進言しました。この進言は受け入れられ、高句麗は後に臣下となることを約束し、貢物を献上しました。

343年2月、高句麗の故国原王は弟を慕容皝の下に派遣し、臣下となることを約束して数千の貢物を献上しました。これにより美川王の屍は返還されましたが、母の周氏は人質として留め置かれました。

韓寿のその後の事績については、残念ながら詳しい記録は残っていません。しかし、彼の前燕における貢献は大きく、特に宇文部の撃退や高句麗征伐における功績は特筆に値します。彼の戦略眼と実行力は、前燕の発展に大きく寄与したと言えるでしょう。

参考文献

『晋書』巻108-109
『資治通鑑』巻091-097
* 『十六国春秋』前燕録

もう一度検索