宇文遜昵延

宇文遜昵延（うぶん そんじつえん、拼音：Yŭwén Xùnnìyán、生没年不詳）は、鮮卑宇文部の大人であり、父は宇文莫珪です。子は宇文乞得亀。歴史書『晋書』・『資治通鑑』では宇文悉獨官と表記されています。

生涯

元康9年（299年）には、拓跋部に朝貢し、拓跋禄官の長女を娶り、拓跋部との関係を深めました。

父である宇文莫珪の死後、宇文部の位を継ぎました。彼の時代、宇文部は漠北に勢力を拡大したと伝えられています。また、宇文部に代々伝わる玉璽三紐を天からの授かりものだと主張し、自らの権威を誇示しました。

大興2年（319年）12月、遼東を支配していた東晋の東夷校尉崔毖は、慕容部の勢力拡大を警戒し、高句麗・段部・宇文部へ使者を派遣。協力して慕容部を滅ぼし、その領土を分割するよう提案しました。宇文遜昵延はこれに応じ、軍を動かしました。高句麗・段部も同様に軍を発し、三国連合軍は棘城へ攻め込みましたが、慕容部の大人慕容廆は城門を閉ざし、籠城戦を展開しました。

この時、宇文部の兵力は数十万を数え、陣営は四十里にも及んだとされます。慕容廆は、あえて宇文遜昵延のもとへ使者を派遣し、牛肉や酒を手厚く贈りました。そして、「崔毖から昨日、使者が来ましたぞ」と周囲の兵に聞こえるように話させました。この情報が二国に伝わると、宇文遜昵延と慕容廆が裏で通じているのではないかという疑念が生じ、二国は兵を退却させてしまいました。しかし、宇文遜昵延は「二国が帰ったならば、我は独りでこれを取るまでだ」と述べ、単独で攻撃を継続しました。

慕容廆は徒河にいる庶長子の慕容翰に救援を求めましたが、慕容翰は動きませんでした。これを聞いた宇文遜昵延は「慕容翰はもともとその勇猛さで知られた男だ。その男が今、救援に来ようともしないのは何か考えているのかもしれない。まず、奴を先に叩くべきだ。棘城などいつでも落とせる」と考え、数千騎を派遣して慕容翰を襲撃させました。

慕容翰は敵の侵攻を知ると、部下を段部の使者に変装させ、宇文部軍へ差し向けました。その使者は宇文部軍に会うと、「我々にとって慕容翰は長年の悩みの種でした。あなた方がこれを襲撃すると聞き、我々も出陣して徒河にてあなた方を待っています。どうか急いで進軍ください」と伝えました。使者を送り出した慕容翰は城から出て伏兵となり、敵を待ち構えました。宇文部軍は使者の言葉を信じ込み、喜び勇んで進軍を急ぎましたが、伏兵の中にまんまと入り込んでしまいました。慕容翰軍は一斉に攻撃を仕掛け、敵をことごとく捕らえました。

勝利に乗じた慕容翰は進撃を開始し、棘城へ使者を派遣して慕容廆に出撃を要請しました。慕容廆は慕容皝と長史裴嶷に精鋭を与えて先鋒とし、自身は大軍を率いてこれに続きました。慕容廆が奇襲をかけた時、宇文遜昵延は全くの不意を突かれ、驚いて全軍を出陣させました。慕容翰はこの時、千騎を率いて敵陣の背後に控え、先鋒が戦いを始めたのを見て、宇文遜昵延の陣営へ突入し、焼き払いました。宇文遜昵延の兵は大混乱に陥り、為す術もなく大敗。宇文遜昵延は辛うじて逃げ出しましたが、兵卒のほとんどが捕虜となり、さらには宇文部の象徴であった玉璽三紐も奪われてしまいました。

その後、宇文遜昵延は棘城へ使者を派遣し、今回の戦役が崔毖の策略であったことを告げ、和平を請いました。崔毖は家族を捨て、数十騎と共に高句麗へ亡命しました。

宇文遜昵延の死後、子の宇文乞得亀が後を継ぎました。没年は不明ですが、325年2月には宇文乞得亀が継いでいることから、それ以前に亡くなったと考えられます。

参考文献
『魏書』（帝紀第一、列伝第九十一）
『晋書』（慕容廆載記）
『北史』（列伝第八十六）
『資治通鑑』（巻九十一）

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