韓陵の戦い

韓陵の戦い

韓陵の戦い（かんりょうのたたかい）は、中国の南北朝時代において、高歓と爾朱氏の間で勃発した戦闘である。この戦いは531年から533年の間に起こり、北魏時代の権力の行方を大きく左右した重要な出来事であった。

経緯と背景

531年の6月、高歓は信都にて反爾朱氏の兵を起こす。その後、同年10月までに、高歓は渤海郡の太守である元朗を皇帝として擁立し、北魏において二人の皇帝が存在する異常事態を引き起こすことになった。この状況の中で、高歓は532年の2月には丞相や柱国大将軍、太師に任命され、まさに政治的権力を握っていくこととなる。

一方、爾朱氏の内部では、爾朱兆と爾朱世隆の間で権力争いが続出していた。世隆は兆との和解を試み、兆の娘を節閔帝の皇后に仕立てる約束を交わす。その後、斛斯椿が世隆や爾朱天光を説得し、高歓を討つための連合軍を編成することに成功した。閏月には、爾朱氏の各隊が長安、晋陽、洛陽、東郡から進発し、鄴での合流を目指した。この時、爾朱氏の軍の総数は20万に達するという大規模なものだった。

高歓は、鄴を守るために封隆之を配置し、また高昂が自らの部下3000人を引き連れて高歓側についていた。爾朱兆は軽騎3000騎を派遣し、夜間に鄴城を攻撃するが、城を攻略することはできずに撤退することとなった。

戦闘の展開

高歓は、現在の韓陵に陣を張り、牛や驢馬を使って退路を封じ、将士たちと共に決意を固めた。そして、高歓は中軍を率い、高昂が左軍、高岳が右軍を指揮して、爾朱氏の軍と対峙することに。その時、高歓の手勢は騎兵2000人余り、歩兵は3万弱という状況であった。初戦は不利に進展し、高歓は敗走を余儀なくされた。

爾朱兆はその隙をついて追撃を行ったが、高岳が500騎を率いて急襲し、さらに斛律敦が残兵を集めて後方を固め、高昂が栗園から側面攻撃をおこなった結果、爾朱氏は大敗を喫する。これにより、賀抜勝や徐州刺史の杜徳は高歓に降伏し、爾朱兆は軽騎で西方に逃げることとなった。慕容紹宗は残存兵を引き連れ撤退を余儀なくされる。

影響とその後の展開

韓陵の戦いの結果、爾朱兆は晋陽に戻り、爾朱仲遠は東郡へ逃げ込んだ。しかし、爾朱彦伯が河橋に駐屯して動向を見極めることを試みるも、爾朱世隆が従わなかったため、この計画も破綻してしまう。この後、爾朱度律と爾朱天光は洛陽で捕えられ、世隆と彦伯も閶闔門の外で殺され、高歓のもとにそれぞれの首級と度律・天光の身柄が送られることとなる。

また、仲遠は南朝梁に亡命し、高歓が鄴に帰還後には、度律と天光を洛陽に送り、処刑するに至る。こうして、北魏における爾朱氏の権力は衰退し、最後の残党であった爾朱兆も533年に滅ぼされることが確定した。

この戦いは、高歓の権力基盤を強固にし、北魏における政治地図を大きく変える契機となった歴史的な一幕であった。

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