爾朱仲遠

爾朱仲遠（じしゅ ちゅうえん）

爾朱仲遠（生没年不詳）は、北魏時代の軍人であり、その生涯は波乱に満ちています。秀容郡を本貫とし、爾朱彦伯の弟であり、北魏で権勢を誇った爾朱栄の従弟にあたります。

生い立ちと初期の活動

爾朱仲遠は、華州刺史であった爾朱買珍の子として生まれました。若い頃は筆書で生計を立てていましたが、六鎮の乱をきっかけに、彼の人生は大きく変わります。爾朱栄がこの乱で頭角を現すと、仲遠は彼の元で従軍するようになります。

権勢拡大と不正

爾朱栄の側近となった仲遠は、その地位を利用して不正な行為に手を染めます。爾朱栄の書を巧妙に模倣し、さらには彼の模造印を刻んで尚書令史と共謀し、売官を行いました。こうして得た財産は、酒色に費やされるなど、私欲のために使われました。

孝荘帝即位後の昇進

528年に孝荘帝が即位すると、仲遠は直寝、寧遠将軍、歩兵校尉といった要職に任命されます。その後も、平北将軍、建興郡太守と順調に昇進し、頓丘県開国侯に封じられました。さらに、散騎常侍の位を加えられ、建興郡が建州に改められると、使持節、車騎将軍、建州刺史に転じます。侍中の位を加えられ、爵位は公に進み、清河郡公に改封。車騎大将軍、左光禄大夫を加えられ、使持節・車騎大将軍・徐州刺史に転じ、尚書左僕射・三徐州大行台を兼ね、都督三徐州諸軍事に進みました。軍官の不足を補う際に、軍の都合に合わせるよう上奏して、情実人事を横行させました。

爾朱栄の死と反乱

530年、爾朱仲遠の運命は再び大きく揺れ動きます。爾朱栄が殺害されると、仲遠は兵を率いて洛陽へ向かい、西兗州を攻め落とし、東郡に迫りました。孝荘帝は諸将に迎え撃たせますが、いずれも仲遠に敗北。都督の鄭先護と右衛将軍の賀抜勝が討伐に派遣されますが、賀抜勝は敗れて仲遠に降伏。その後、爾朱兆が洛陽に入ると、鄭先護の兵も逃げ散ってしまいました。

前廃帝擁立とさらなる権勢

前廃帝が即位すると、仲遠は使持節、侍中、都督三徐二兗州諸軍事、驃騎将軍、開府儀同三司、徐州刺史、東道大都督、大行台となり、彭城王に進みます。間もなく驃騎大将軍の位を加えられ、尚書令を兼ねますが、徐州には赴任せず、大梁に駐屯しました。本官のまま、都督東道諸軍事、驃騎大将軍、兗州刺史に転じました。

仲遠は富豪を誣告して財産を没収し、私物化する一方、美しい女性を見れば手を出しました。滎陽より東から運ばれる税金は、全て自軍の会計に入れ、洛陽に送ることはありませんでした。当時、爾朱天光が関右、爾朱仲遠が大梁、爾朱兆が并州、爾朱世隆が洛陽をそれぞれ支配し、爾朱氏の権勢は北魏を席巻していました。仲遠は大行台から解任され、太宰の位を加えられました。

失脚と亡命

その後、東郡に移駐した仲遠は、爾朱度律らと共に高歓の勢力に対抗しますが、爾朱兆が晋陽から合流した際、高歓の離間策によって爾朱氏一族は互いに猜疑心を持つようになり、撤退を余儀なくされます。532年、爾朱天光らと共に韓陵で高歓軍と戦い敗北すると、仲遠は東郡に逃れ、南朝梁に亡命しました。南朝梁の武帝により定洛将軍の号を与えられ、河南王に封じられますが、江南で客死しました。

爾朱仲遠の生涯は、北魏末期の混乱期を象徴するものであり、彼の興亡は、当時の社会情勢や権力闘争を色濃く反映しています。

伝記資料

『魏書』巻75 列伝第63
『北史』巻48 列伝第36

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