香港鉄路 (企業)

香港鉄路有限公司（MTR）の概要

香港鉄路有限公司（MTR Corporation Ltd.）は、香港において鉄道事業を独占的に展開する主要企業です。その事業は、地下鉄の運営にとどまらず、多岐にわたっています。香港で広く利用されている無線ICカード『オクトパス』の発行、バス路線の運営、さらには鉄道沿線の不動産開発事業なども手掛けています。

設立と発展

MTRの前身は、1975年に香港政府の全額出資によって設立された地下鉄路公司です。1970年代、香港の人口増加に伴い、既存の市街地では手狭になりつつありました。この状況を打開するため、香港政府は積極的な公共事業への投資を開始し、郊外ニュータウンの開発と、それらを既存市街地と結ぶ交通インフラ整備として地下鉄建設に着手しました。

1979年に観塘線の最初の区間が開通すると、その後も荃湾線、港島線などが順次開通し、既存路線の延伸も継続的に行われました。1998年には香港国際空港の開港に合わせて、東涌線と機場快線（エアポートエクスプレス）が開通、香港の交通ネットワークは大きく拡充されました。

株式会社化と成長

2000年、地下鉄路公司は株式会社化され、地鉄有限公司と改名。その後、香港証券取引所に株式を上場し、香港政府が過半数の株式を保有したまま、公開企業としての道を歩み始めました。上場後はハンセン指数に組み入れられるなど、香港経済における重要な企業へと成長を遂げました。この期間にも将軍澳線、ディズニー線が順次開通しました。

九広鉄路との合併と事業拡大

2007年、地鉄有限公司は九広鉄路（KCR）の一部資産と路線運営権の譲渡を受け入れ、事実上の吸収合併を行いました。これにより、MTRは現在の名称となり、旧MTRとKCRの路線網が統合され、香港の鉄道網はさらに広範囲に広がりました。

海外事業への進出

MTRの事業は香港にとどまらず、中国本土をはじめとした海外にも進出しています。中国では、北京、上海、深圳、杭州の地下鉄事業に参入。各都市の地下鉄路線の建設・運営に携わり、その技術力とノウハウを活かしています。

また、欧州にも進出し、イギリスのロンドンではクロスレール（エリザベス線）やサウスウェスト鉄道の運営に携わり、スウェーデンではストックホルム地下鉄やインターシティ列車の運行を担っています。さらにオーストラリアのメルボルン、シドニーでも鉄道事業を展開しています。

近年の出来事

近年では、2018年に発生した沙中線の手抜き工事問題でCEOと工程総監が辞任する事態がありました。また、2019年の香港における反政府デモにおいては、MTRが政府に協力的な姿勢を取ったとして、デモ参加者から激しい批判を受け、多くの駅で施設が破壊されるなどの被害が発生しました。

まとめ

MTRは香港の交通インフラを支える重要な企業として、その事業は香港の経済成長に大きく貢献してきました。多角的な事業展開と海外進出を通じて、MTRは今後も世界の鉄道事業において重要な役割を果たしていくと予想されます。しかし、近年は社会情勢や様々な課題に直面しており、今後の動向が注目されます。

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