高木友枝

高木友枝：台湾医療と電力の礎を築いた偉人

高木友枝（たかぎ ともえ、1858年9月8日 - 1943年12月23日）は、日本の医学者、細菌学者であり、日本統治時代の台湾において、医療と電力インフラの発展に大きく貢献した人物です。陸奥国泉藩（現在の福島県いわき市）出身で、台湾総督府医学校の第2代校長、台湾電力（台電）の初代社長を歴任しました。後藤新平による台湾近代化政策の下で、医学教育と医療行政の基礎を築いたことから「台湾医学・衛生の父」として知られています。

生い立ちと初期のキャリア

高木友枝は、1858年に陸奥国菊多郡泉藩松小屋村（現在の福島県いわき市泉地区）で生まれました。東京大学医学部在学中には、先輩の北里柴三郎と交流があり、また内務省衛生局の後藤新平とは、学生時代から親交がありました。1885年に東京大学医学部を卒業後、福井県立病院長、鹿児島病院長を経て、北里伝染病研究所で助手として細菌学の研究に従事しました。

ペスト撲滅への貢献

1894年、高木はペストの調査のため香港へ派遣され、日清戦争中には臨時似島検疫所でコレラ対策に尽力しました。コレラの血清を製造し、患者の治療に用いたことは、血清治療の初期の事例として注目されました。その後、北里研究所の治療部長、内務技師、血清薬院長などを歴任し、1897年には万国医事会議や万国らい病会議に日本代表として参加しました。

ドイツ留学と研究

ハンセン病会議後、高木はドイツに2年間滞在し、ベルリンのロベルト・コッホ研究所でパウル・エールリヒの指導を受け、アウグスト・フォン・ワッセルマンと共同研究を行いました。この間、自費で研究に励み、欧州の医学研究に深く触れました。

台湾での活動

1901年、台湾でペストが大流行した際、児玉源太郎と後藤新平の要請により、高木は台湾に渡りました。1902年、台湾総督府医学校付属の台湾総督府立医院の医長兼院長に就任。さらに、医学校校長、教授、総督府技師、台北医院院長、衛生課長、臨時防疫課長など、多くの要職を兼務しました。高木は衛生警察による監視を強化し、ペスト撲滅に尽力し、1910年にはペストによる死亡者数を大幅に減少させることに成功しました。

高木は、医学校での教育にも力を入れ、学生の品格教育を重んじました。人種主義を排し、学生には母語の使用を禁じながらも、台湾文化を尊重しました。また、『台湾医学会』を創設し、『台湾医学会雑誌』を創刊するなど、台湾の医学研究の発展に貢献しました。

1909年には、自身が設立した台湾総督府中央研究所の所長に就任し、多くの研究報告を完成させました。1911年には、ドレスデンで開かれた万国衛生博覧会で、台湾の医療衛生改善状況を発表し、ドイツ語で著書も刊行しました。

高木は、学生の民族自治運動を支持し、彼らの活動を支援しました。高木は、台湾同化会や台湾文化協会の活動にも参加し、台湾の文化と社会の発展にも貢献しました。

台湾電力での貢献

1919年、高木は台湾電力の社長に就任し、「日月潭水力電気工事計画」を推進しました。台湾電気興業株式会社を合併し、台電を台湾最大のエネルギー企業に育て上げました。日月潭の電力工事は、戦後恐慌や関東大震災で中断を余儀なくされましたが、高木は事業再開に向けて尽力しました。

その後と評価

1929年、高木は台電を離職し、東京に戻りました。晩年は世田谷で過ごし、1940年には大阪毎日新聞の取材に応じています。1943年、高木は85歳で亡くなり、多磨霊園に埋葬されました。

高木は、その高潔な人格と優れた業績から、当時の日本人だけでなく、台湾の人々からも深く尊敬されていました。杜聡明は高木を「台湾医学衛生の父」と称え、「医師である前に人であれ」という高木の教えを称賛しました。高木の胸像は、戦後に一時撤去されましたが、後に台湾大学医学院に再設置され、その功績を今に伝えています。

栄典と主な著作

高木は、正五位、従四位、正四位、従二等、勲二等旭日重光章、従三位、正三位などの栄典を授与されました。

主な著作には、以下のものがあります。

『Preventition of Malaria in Formosa』
『傳染病研究所一覽』
『Die hygienischen verhältnisse der insel Formosa』
『台湾総督府研究所報告』
* 『北里柴三郎伝』

高木友枝は、その生涯を通じて、医学、公衆衛生、電力インフラの発展に貢献し、台湾の近代化に大きく貢献した偉大な人物として、今もなお語り継がれています。

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