高美湿地

高美湿地（こうびしっち）

台湾中部の台中市清水区西部に位置する高美湿地は、台湾海峡と大甲渓河口の汽水域に広がる湿地帯です。この一帯は高美野生動物保護区として生態系が保護されており、「台湾のウユニ塩湖」とも称される美しい景観が特徴です。かつては海水浴場として賑わっていましたが、戦後に台中港の建設に伴い砂が堆積し、現在の湿地帯へと姿を変えました。

歴史

高美湿地の歴史は、日本統治時代の1932年に高美海水浴場として一般開放されたことから始まります。戦後も運営は継続されましたが、台中港の建設に伴い、その範囲は徐々に狭まっていきました。台中港北方に砂堤防が築かれると、土砂の沈殿が加速し湿地が形成されました。1976年には海水浴場は閉鎖され、その後、漂砂緩衝区として観光客の流入が制限されました。

1990年代には、発電所建設計画に対する地元住民の反対運動をきっかけに、高美湿地を生物保護区とする動きが始まりました。その結果、2004年に「高美野生動物保護区」が設立され、2007年には国家級湿地にも編入されました。近年では、夕日の美しい絶景スポットとして国内外から注目を集めるようになり、観光客が増加したことから、湿地への立ち入り規制や桟道が整備されました。2014年には棲地桟道（アニマルパスウェイ）が設置され、観光客の生態観察と環境保護の両立が図られています。

地理

高美野生動物保護区は、大甲渓河口南岸と台中港の間に位置し、清水区の高北里、高西里、高南里の三つの行政区に跨っています。保護区の総面積は701.3ヘクタールで、高美海堤一帯の干潟は約300ヘクタールです。この干潟は、同じ台中市内にある大肚渓口湿地に比べると面積は小さいですが、「高美湿地」として多くの観光客に知られています。保護区全体は、現在、台中市政府農業局によって管理されています。

生態

高美湿地は、多種多様な動植物が生息する豊かな生態系を誇ります。1年間の調査では、蟹類が7科25種、貝類が7科8種、魚類が3科6種、鳥類が34科104種、植物が27科105種確認されています。さらに、鳥類は保護種を含む34科135種、蟹類は7科30種も確認されており、生物多様性の宝庫と言えるでしょう。

植物

高美湿地には、絶滅危惧種であるウキヤガラ属のイセウキヤガラ（雲林莞草）や、オギノツメ属のヒグロフィラ・ポゴノカリクス（大安水蓑衣）といった固有種が生息しています。特に雲林莞草は、台湾中部地区で唯一の生息地となっています。また、メヒルギも生育していますが、人為的に植栽されたものと考えられています。

外来種

近年、北米原産のスパルティナ・アルテルニフロラという外来種の侵入が問題となっています。この植物は繁殖力が非常に強く、湿地の陸地化を招く恐れがあるため、駆除対策が急務となっています。

動物

高美湿地は、多くの鳥類の生息地としても知られています。カラシラサギ、ヨーロッパチュウヒ、ミサゴ、タマシギ、ツバメチドリ、コアジサシ、エリグロアジサシなどの希少種が生息し、クロツラヘラサギ、アカモズ、カササギなどは保護対象となっています。その他にも、シロチドリ、ヒドリガモ、キアシシギ、オグロシギ、キョウジョシギ、キガシラカナリアなどの多くの渡り鳥も確認されています。また、干潟にはトビハゼやミナミコメツキガニが生息し、底生生物の生息に必要な有機物質を供給する雲林莞草は、水質浄化にも役立っています。

注意事項

高美野生動物保護区は一部に立入禁止エリアが設けられており、無断で立ち入った場合、罰金が科せられます。また、生態系保護のため、桟道から海域に飛び降りる行為も禁止されています。

交通

高美湿地へは、海口南路、護岸路、高美路といった道路からアクセスできます。ビジターセンターには駐車場があり、周辺には民間の駐車場もあります。また、台中市公車も利用できます。

台中市公車

巨業交通：111路、178路、179路、688路（清水火車站 - 高美湿地）、309路（第一廣場/台中火車站 - 梧棲観光漁港）
中鹿客運：655路（嶺東科技大学 - 彩虹眷村 - 新烏日火車站/高鉄台中站 - 梧棲観光漁港）

ギャラリー

関連項目

台湾の湿地一覧
高美灯台
台中港風力発電所
竹内結子 - クラシエホームプロダクツのCMに出演
長澤まさみ - 台湾交通部観光局のプロモーションビデオに出演

註釈

出典

外部リンク

臺灣大學生物多樣性研究中心 - 高美溼地 （繁体字中国語）
高美濕地空拍 HD 【台灣，你好！】環島系列 - YouTube
高美濕地旅遊網 （繁体字中国語）
高美湿地風景区（台中市） 台北ナビ
高美湿地風景区 交通部観光局
* 高美濕地旅遊網 台中市政府観光旅遊局 （日本語）

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