高雄要塞

高雄要塞

高雄要塞は、大日本帝国陸軍が台湾の高雄を防衛するために建設した要塞です。基隆や澎湖諸島と共に台湾防衛の要として、また日本海軍の兵站、燃料、給水基地として重要な役割を担っていました。そのため、高雄には要塞が築かれ、その防備が強化されました。

概要

1937年8月に高雄要塞司令部が設置され、要塞工事が開始されました。この工事は台湾軍が主体となり、陸軍築城部から派遣された将校と技手が指導・援助を行いました。1941年9月には高雄要塞臨時編成令が発令され戦備に入り、11月には本戦備が発令されました。太平洋戦争中の1944年の台湾沖航空戦では、高射部隊が迎撃戦闘を行いましたが、高雄港内では多数の船舶が撃沈され、要塞自体も損害を受けました。1945年1月にはアメリカ海軍の空襲を受け、停泊中の艦船が壊滅的な被害を受けました。

1945年2月、沈没船による航行障害や港湾施設の損傷により高雄港が事実上使用不能となったため、要塞は野戦部隊である独立混成第100旅団へと改編されました。3月には、高雄要塞司令部は独立混成第100旅団司令部となり、要塞司令官であった村田定雄少将がそのまま旅団長に就任しました。主要な隷下部隊として、要塞砲兵を改編した重砲兵第16連隊、独立混成第30連隊、第51警備大隊などが置かれました。旅団は第12師団の指揮下に入り、一時的に第40軍の指揮下に移りながらも防備強化に努め、終戦を迎えることとなりました。

高雄臨時要塞

戦時下には、高雄港を防衛するための臨時要塞設置計画も存在しました。台湾、沖縄、奄美大島は、比島攻撃部隊の艦隊戦団の遠征部隊にとって、前線根拠地や泊地として重要な位置づけであり、特に高雄はその中でも防備の最前線でした。陸軍兵器本廠の報告書によると、父島や奄美大島が要塞所要兵器、厚岸、宗谷、室蘭、中城湾、船浮、高雄が臨時要塞所要兵器とされ、それぞれの大砲の種類や砲弾の量、各地までの所要日数などが詳細に計画されていました。このことから、具体的な砲台の設置場所などの基本計画は、既に存在していたことが推測されます。

要塞建設

1937年7月に盧溝橋事件が勃発し、日中戦争が開始されると、中国本土からの空襲に対する防備が喫緊の課題となりました。高雄港は大陸への軍需物資輸送の拠点の一つとなり、対米戦と対中戦の両面で重要な拠点となったため、要塞の建設が進められることとなりました。

年譜

1936年（昭和11年）8月：要塞地帯法設定
1937年（昭和12年）
8月14日：高雄要塞司令部設置、要塞工事開始（三等要塞）
12月3日：高雄要塞司令部が高雄市寿町に移転、事務開始
1939年（昭和14年）8月：二等要塞に昇級
1940年（昭和15年）8月：年度陸軍動員計画令細則、増加兵器交付命令
1941年（昭和16年）
9月：高雄要塞臨時編成令
10月10日：高雄要塞重砲兵連隊（台湾第4522部隊）編成
11月21日：本戦備下令
12月8日：太平洋戦争開戦
1942年（昭和17年）12月：一等要塞に昇級
1944年（昭和19年）10月：台湾空襲により高雄港の船舶が多数沈没、要塞施設も被害
1945年（昭和20年）
2月：独立混成第100旅団に改称
3月：要塞廃止

主要な施設

寿山高射砲台
半屏山高射砲台
その他不明

装備

二十八糎榴弾砲
四五式十五糎加農砲
三八式十糎加農砲
三八式十二糎榴弾砲
三八式野砲
その他不明

歴代司令官

高品彪 歩兵大佐（25期）：1937年8月2日 -
林義秀 歩兵大佐（26期）：1938年7月15日 -
小倉尚 少将（25期）：1939年8月1日 -
桂朝彦 歩兵大佐（21期）：1940年10月22日 -
新妻雄 予備役少将（25期）：1941年12月19日 -
北島驥子雄 予備役中将（20期）：1944年4月6日 -
（兼）村田定雄 少将：1945年2月20日 - 1945年3月（3月以降は独立混成第100旅団長）

高雄要塞重砲兵連隊

高雄要塞の主戦力として、1941年9月10日に編成されたのが高雄要塞重砲兵連隊です。通称号は台湾第4522部隊です。比較的新型の四五式十五糎加農砲などを装備していました。1944年4月には、鹵獲した15cm加農砲4門が増強配備されました。1945年2月17日、高雄港の機能停止や連合国軍の上陸が予想されたため、野戦的性格を持つ重砲兵第16連隊へと改称されました。他の要塞部隊と共に独立混成第100旅団に編合され、沿岸防備を固めながら終戦を迎えることとなりました。

脚注

注釈

出典

参考文献

浄法寺朝美『日本築城史 : 近代の沿岸築城と要塞』原書房、1971年12月1日。NDLJP:12283210。
歴史群像シリーズ『日本の要塞 - 忘れられた帝国の城塞』学習研究社、2003年。
外山操・森松俊夫編著『帝国陸軍編制総覧』芙蓉書房出版、1987年。
篠崎達男「日本陸軍「沿岸要塞」の戦い」『丸別冊 忘れえぬ戦場』太平洋戦争証言シリーズ18号、潮書房、1991年。
田藤博「砲兵連隊の戦歴」『日本陸軍機械化部隊総覧』別冊歴史読本16巻6号、新人物往来社、1991年。
「作命甲関係」『第十方面軍関係戦史資料』 アジア歴史資料センター JACAR Ref.C11110404600
* 第一復員局 『台湾方面関係部隊戦史資料 第3巻その1』 JACAR Ref.C11110399300

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