鬼死骸

鬼死骸（おにしがい）

鬼死骸は、現在の岩手県一関市の一部（南町、千代田町、台町、真柴の一部）にかつて存在した鬼死骸村にあたる地域です。

概要

この地は、奈良時代から集落が存在したとされ、当時は吾勝郷桜野荘と呼ばれていました。平安時代初期の801年（延暦20年）には、蝦夷征伐のために陸奥国へ侵攻した坂上田村麻呂が、大武丸を討伐したという伝説が残っています。この大武丸の亡骸を埋めたことが、地名「鬼死骸」の由来と伝えられています。ただし、この伝説は史実に基づくものではなく、江戸時代に東北地方で広まった奥浄瑠璃『田村三代記』に影響を受けた田村語りが基になっていると考えられています。

近隣には、大武丸の首が飛んで落ちた場所が現在の宮城県大崎市鬼首であるという伝説も存在します。かつて鬼死骸は、一関、二関、三関を含む地域を指していました。明治維新後、行政村として鬼死骸村が成立しましたが、1875年（明治8年）には牧沢村と合併して真柴村となり、1889年（明治22年）には近隣地域との合併により真滝村が発足しました。

しかし、その後も「鬼死骸」という地名は地域名として残り、2016年（平成28年）3月末まで栗原市民バスの停留所名としても使われていました。近年では、漫画『鬼滅の刃』の人気にあやかり、地域おこしの一環として様々な取り組みが行われ、2021年にはバスツアーも実施されました。

地理

鬼死骸には、大武丸の埋葬地に「鬼石」と呼ばれる巨石が置かれたと伝えられています。その近くには、大武丸のあばら骨が埋められたとされる「肋石」や、坂上田村麻呂が平安を祈願して勧請したという鹿島神社も存在し、現在も同じ場所にあります。

1818年（文化15年）に仙台藩士佐藤勇右衛門が作成した鬼死骸村絵図の控えによると、村の中央を有壁街道（奥州街道、現国道4号）が縦断し、村内で金沢村（現花泉町）へ通じる金沢街道（現国道342号）が分岐しており、村の西側を迫街道が通っていたとされています。

観光名所

鬼石：大武丸の亡骸を埋めたとされる場所にある巨石。
鹿島神社：801年（延暦20年）に坂上田村麻呂が大武丸を討伐した後に勧請した神社。
鬼死骸八幡神社：1062年（康平5年）に源頼義が勧請した神社。
鬼死骸停留所：町おこしの一環で整備された休憩所。
豊吉之墓：東北地方で初期に人体解剖された罪人の墓であり、一関市指定有形文化財。

鬼死骸を舞台にした作品

『鬼死骸村の殺人』（吉村達也）

参考文献

阿部幹男『東北の田村語り』三弥井書店〈三弥井民俗選書〉、2004年1月21日。ISBN 4-8382-9063-2。
真滝村志史復刻刊行委員会『復刻真瀧村志』一関プリント社出版部、2003年6月10日。

関連項目

鬼首村
鬼首温泉

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