鬼無里村

鬼無里村（きなさむら）とは

長野県上水内郡に存在した村で、2005年の平成の大合併により長野市に編入され、現在は長野市鬼無里地区となっています。この地域は、紅葉伝説や木曾義仲にまつわる伝承が数多く残る、歴史と伝説に彩られた場所です。特に奥裾花渓谷は日本百景にも選ばれており、奥裾花自然園はミズバショウの大群落で知られ、日本の秘境100選にも選ばれています。かつては6000人ほどの人口を擁していましたが、過疎化が進み、合併時には2000人ほどにまで減少していました。

地理

鬼無里地区は、長野市の中心部から西へ約20キロメートル、裾花川を遡った場所に位置しています。裾花川の源流域の盆地を中心とした中山間地域で、周囲を荒倉山、虫倉山、戸隠表山などの山々に囲まれています。盆地内には、裾花川とその支流である小川や天神川が流れ、かつては80ほどの集落が点在していましたが、現在は約40に減少しています。この地域は、急峻な砂岩や泥岩、凝灰岩で構成されており、地盤が脆いため、土砂災害が頻繁に発生します。特に融雪期には大規模な地すべりが起こりやすい場所です。

中心部

小川と裾花川の合流地点が地区の中心市街地となっており、旧村役場（現在の長野市役所支所）、郵便局、学校、商店、バスターミナルなどが集中しています。国道406号と県道36号の交差点には、村内唯一の信号機があります。ここから裾花川は本流（大川）と小川に分かれており、それぞれ「大川入り」「小川入り」と呼ばれています。

小川入り

小川入り方面には、荒倉山と一夜山の谷間に集落が点在し、上流には木曾義仲の家臣である今井兼平の城跡とされる今井城跡や、湖沼伝説の残る十二神社があります。大望峠を越えると戸隠[[村]]へと通じています。

大川入り

大川入り方面には、国の重要文化財に指定されている白髯神社があり、そこから南へ大洞峠を越えると小川[[村]]に続いています。

両京地区

天神川と裾花川の合流地点付近には、東京、西京という地名があり、両京地区と呼ばれています。この地域には春日神社や加茂神社、内裏屋敷といった地名が残り、遷都伝説や紅葉伝説の舞台となっています。両京地区から裾花川を上流に向かうと、木曾義仲に由来するとされる文殊堂や旭社があり、さらに上流には奥裾花ダム、奥裾花渓谷、奥裾花湿地（奥裾花自然園）があります。天神川沿いには奥裾花温泉があり、白沢峠を越えると白馬村へと通じています。

気候

鬼無里地区は寒暖差が激しく、夏には35度、冬にはマイナス20度を下回ることもあります。降雪量も多く、年によっては4メートルを超える積雪となり、根雪が100日以上続くこともあります。全域が特別豪雪地帯に指定されています。

歴史

村名の由来

村の名前は、紅葉伝説に由来するとされています。伝説では、主人公の「紅葉」が妖術を使ったと疑われ、この地に流刑となりましたが、後に平維茂によって討伐され、鬼がいなくなったことから「鬼無里」と名付けられたと伝えられています。

古代から近世

戦国時代には、古山城を本拠地とした大日方氏がこの地を治めていました。武田信玄に服属した後、武田氏の滅亡後は、木曾義昌、上杉景勝の領地となり、関ヶ原の戦い以降は川中島藩（松代藩）に組み込まれました。

近代

明治時代の中頃、町村制の施行により、鬼無里村と日影村が合併し、現在の鬼無里村となりました。そして、平成の大合併で長野市に編入され、その歴史に幕を閉じました。

年表

延暦年間：水無瀬村から鬼無里村に改称（口伝による）
969年：平維茂が白髯神社で紅葉討伐の戦勝祈願
1183年：木曾義仲が白髯神社で平家追討の戦勝祈願
1458年：戸隠山顕光寺の文書に「木那佐」の記述（「キナサ」の地名が登場する最古の史料）
1573年：木曾義昌の朱印状に「鬼無里之郷」の記述（「鬼無里」の字が用いられた最古の史料）
1889年：鬼無里村と日影村が合併し、鬼無里村が成立
1955年：日里村から日下野親沢地区を編入
2005年：長野市に編入合併

産業と経済

かつては麻の加工、炭焼き、養蚕が主要産業でしたが、これらの産業が衰退した後は、奥裾花のミズバショウ群落を活かした観光業が中心となりました。特に奥裾花自然園は、多くの観光客を集めていましたが、土砂災害による通行止めや、道路の狭隘さなどが課題となっていました。

農業分野では、ミニトマトやリンドウなどの新種導入による多角化を図っていますが、サルやクマなどの野生動物による被害や、耕作放棄地の増加が深刻化しています。林業分野でも、後継者不足によって森林の整備が課題となっています。

観光名所

奥裾花自然園: 日本最大級のミズバショウ群落で知られ、日本の自然100選や秘境100選にも選ばれています。
奥裾花渓谷: 日本百景にも選ばれた美しい渓谷です。
白髯神社: 室町時代の建築様式を残す本殿は、国の重要文化財に指定されています。
十二神社: 湖沼伝説が残る神社で、船繋ぎの樹があります。
鬼無里神社: 湖沼伝説の残る魚山の頂上に位置する神社です。
文殊堂: 日本三文殊の一つに数えられ、木曾義仲の守護仏を祀っています。

伝承

湖沼伝説

鬼無里盆地がかつて湖だったという伝説で、十二神社などにその名残を伝える歌碑などが残っています。盆地を囲む山々を渡し舟が結んでいたとされています。

遷都伝説

飛鳥時代に鬼無里への遷都計画があったとされる伝説で、白髯神社や両京地区周辺の地名、旧跡の由来となっています。天武天皇が鬼を討ったという巨人伝説も伴います。

紅葉伝説

北信州一帯を舞台にした伝説で、主人公の紅葉は一般的には鬼女とされますが、鬼無里では医薬、手芸、文芸に秀でた「貴女」として描かれています。都を追われた紅葉は、この地で村人に慕われましたが、後に討伐されてしまいます。伝説に登場する「内裏屋敷」や「館武士」といった地名が現在も残っています。

木曾義仲の伝承

木曾義仲や家臣らにまつわる伝承も多く残っています。義仲は、北陸へ向かう途中で鬼無里を訪れ、白髯神社で戦勝祈願をしたとされています。また、義仲の家臣である今井兼平の城跡や、義仲ゆかりの文殊堂なども残っています。

文化

鬼無里地区には、数々の伝承と文化が残っており、それらは今もなお、地域の人々によって大切に守られています。

交通

村内には鉄道が通っておらず、主な交通手段はバスと自動車です。国道406号が村を東西に横断していますが、道幅が狭く、交通渋滞が課題となっています。

産業

農業では、米、葉タバコ、キノコ、ミニトマト、リンドウなどが生産されています。林業も盛んですが、後継者不足が深刻化しています。近年では、観光客向けの土産品開発にも力が入れられています。

教育

鬼無里小学校と鬼無里中学校があります。小学校は、かつてあった3つの小学校が統合してできたものです。

医療

かつては無医村でしたが、2002年に鬼無里村診療所が開設され、医師が常駐するようになりました。しかし、合併後も一部地域は準無医地区とされています。

その他

鬼無里地区は、その豊かな自然と歴史、伝説が魅力的な地域です。今後も、これらの貴重な資源を活かし、地域活性化に取り組んでいくことが期待されます。

この文章は、鬼無里村の歴史、地理、文化、産業などについて詳しく解説しています。鬼無里に興味を持った方は、ぜひ一度訪れてみてください。

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