鵜飼石斎

鵜飼石斎（うかい せきさい）は、慶長20年（1615年）に生まれ、寛文4年（1664年）に没した江戸時代前期の儒学者です。諱は信之、字は子直、号は石斎または心耕子と称しました。父は鵜飼真元、母は中路氏であり、正室は湯本幸勝の娘を迎えました。また、鵜飼錬斎と称斎という二人の息子がいます。

石斎の祖先は近江国甲賀郡の出身と伝えられています。彼は江戸で生まれ、那波活所（なば かっしょ）に儒学を学びました。正保3年（1646年）には、尼崎藩主であった青山幸利（あおやま よしとし）に仕官し、万治3年（1660年）に職を辞して京都へ上り、油小路（あぶらこうじ）に私塾を開きました。この私塾で多くの門人を育成し、その名声は同時代の儒学者である山崎闇斎（やまざき あんさい）や毛利貞斎（もうり ていさい）と肩を並べるほどであったとされています。

石斎は儒学にとどまらず、歴史にも深い知識を持っていました。その学問の成果は、31種673巻にも及ぶ著書や校刊本として結実しています。代表的な著作としては、『本朝編年小史（ほんちょうへんねんしょうし）』全7巻や、『明清闘記（みんしんとうき）』全11巻などが挙げられます。

特に『明清闘記』は、近松門左衛門（ちかまつ もんざえもん）が人形浄瑠璃・歌舞伎の傑作である『国性爺合戦（こくせんやかっせん）』を執筆する際に参考にした文献の一つとして知られています。このことからも、石斎の著作が当時の社会や文化に大きな影響を与えたことがうかがえます。

鵜飼石斎は50歳でその生涯を閉じ、京都の円光寺（えんこうじ）に葬られました。彼の死後、孟東野（もう とうや）と陶淵明（とう えんめい）という二人の中国の詩人の生き方を模範とした「貞節」という諡号（おくりな）が贈られました。

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