黄永勝
黄永勝（こう えいしょう、本名：黄叙全）は、1910年11月17日に清朝末期の湖北省咸寧県に生まれ、1983年4月26日に死去した中華人民共和国の軍人です。建国後は上将の階級が与えられ、軍の要職を歴任しました。
1927年6月に国民革命軍に入隊した黄永勝は、同年9月の湘贛辺界秋收起義に参加し、毛沢東率いる部隊と共に井岡山へ向かいました。井岡山での戦いで敵を撃退した際、その武功を称えた毛沢東によって、本名の叙全から「永勝」へと改名されたという逸話が残っています。同年12月に中国共産党に入党。中国工農紅軍において、小隊長から師団長に至るまで様々な階級を経験し、中央ソビエト区の反「囲剿」作戦や、中国革命の重要な転換点となった長征にも参加しました。1933年には中華ソビエト共和国政府から三等紅星奨章を授与されています。
日中戦争期には八路軍の幹部として、晋察冀軍区や陝甘寧晋綏連防軍で要職を務めました。国共内戦期には、熱河軍区や熱遼区の司令員を経て、林彪が指揮する東北民主連軍（後の中国人民解放軍第四野戦軍）の第八縦隊司令員となり、林彪との関係を深めます。1949年後半からは、東北野戦軍や第45軍の軍長、第14・第13兵団副司令員を歴任し、遼瀋戦役、平津戦役、衡宝戦役といった主要な戦役で戦功を挙げました。
中華人民共和国建国後、黄永勝は引き続き人民解放軍の幹部として活躍します。1950年以降、第13兵団司令員、広東軍区副司令員を経て、華南軍区、中南軍区の副司令員を歴任。特に広州軍区司令員を1955年4月から1968年3月までの長期間務めました。1953年5月には、朝鮮戦争に中国人民志願軍第19兵団司令員として参戦しています。1955年には上将の階級を授与され、一級八一勲章、一級独立自由勲章、一級解放勲章といった建国に貢献した軍人に与えられる主要な勲章を受章しました。1956年9月には党中央候補委員に選出され、文化大革命中の1968年には中央委員に昇格しています。
文化大革命が激化する中、黄永勝は軍の権力者の一人として台頭します。広州軍区司令員であった1967年4月、北京で林彪の示唆を受けたとされ、広州に戻って政治委員の劉興元と共に軍区の幹部を弾圧しました。「広東地下党」なる組織をでっち上げ、7,200人以上を迫害したとされています。
1968年3月、黄永勝は人民解放軍の最高指揮機関である総参謀部の長となる総参謀長に抜擢され、同時に軍政大学校長、党中央軍事委員会委員（弁事組組長）も兼任しました。1969年4月には党第九期中央委員、中央政治局委員、国防委員会委員に選出され、林彪を頂点とする一派の有力メンバーとなります。総参謀長として、黄永勝は林彪の意向を受けて、数人の軍事委員会副主席の文書を停止させたり、委員会の印章を全て回収したりするなど、権限を自らの下に集中させる行動をとりました。また、総計792件もの冤罪を作り上げ、839人（うち軍の高級幹部52人を含む）を迫害したと後に認定されています。
黄永勝は林彪の指示の下、他の古参幹部に対する攻撃にも加担しました。1967年11月には聶栄臻元帥を「華北山頭主義」として中傷し、批判を展開。1968年5月には賀竜元帥について「大土匪、大軍閥、大陰謀家」と決めつけ、彼が送った訴状を無視しました。同年8月には呉法憲と共に羅瑞卿事件に関する会議を招集し、羅瑞卿を「大極悪な反革命分子で、十分に狡猾、悪を極めている」と非難しました。羅瑞卿は自殺未遂で負傷していましたが、黄永勝は手術報告に同意しつつも、彼が尋問に耐えて秋まで手術を待つことを「讃える」という形で手術を遅延させ、結果として羅瑞卿が義肢を付ける機会を失わせたとされます。彭徳懐元帥への弾圧においても、黄永勝は扇動的な役割を果たしました。
1971年9月、林彪が失脚すると同時に、黄永勝もその政治生命を絶たれました。同年9月24日には総参謀長や党中央政治局委員などの全ての職務から解任されます。後任の総参謀長が正式に任命されるまでには時間を要し、鄧小平がその職に就くのは1975年1月のことでした。1973年8月には党から除籍されます。
文化大革命終結後、いわゆる「林彪・江青反革命集団事件」の主要人物として追及され、1981年1月25日、最高人民法院特別法庭において主犯の一人として裁かれました。この裁判で、黄永勝には懲役18年、政治的権利剥奪5年の判決が言い渡されました。裁判の過程では、女性関係に問題があったこと、特に文革中に林彪の妻である葉群との関係が自身の妻・項輝芳に露見したことなども明らかにされました。裁判後、妻の項輝芳とは離婚しています。
判決から約8ヶ月後の1981年9月、黄永勝は病気治療を理由に仮釈放（保外就医）され、青島で暮らしました。しかし、その約1年半後の1983年4月26日、青島にて癌のため死去しました。仮釈放後まもなく亡くなったため、彼自身の自伝や回想録は残されていませんが、息子の黄正が2011年に伝記『軍人永勝』を出版しています。この本は、黄永勝が生前に息子に語った林彪事件に関する談話の一部を収録しており、他の林彪グループの将軍たちの証言と同様に、林彪への賛辞と自身の冤罪であるとの主張が含まれているとされます。
建国に功績があった一方で、文化大革命においては権力闘争に深く関与し、多くの人々を迫害した黄永勝は、現代中国史における複雑な人物の一人として記憶されています。
革命から建国まで
1927年6月に国民革命軍に入隊した黄永勝は、同年9月の湘贛辺界秋收起義に参加し、毛沢東率いる部隊と共に井岡山へ向かいました。井岡山での戦いで敵を撃退した際、その武功を称えた毛沢東によって、本名の叙全から「永勝」へと改名されたという逸話が残っています。同年12月に中国共産党に入党。中国工農紅軍において、小隊長から師団長に至るまで様々な階級を経験し、中央ソビエト区の反「囲剿」作戦や、中国革命の重要な転換点となった長征にも参加しました。1933年には中華ソビエト共和国政府から三等紅星奨章を授与されています。
日中戦争期には八路軍の幹部として、晋察冀軍区や陝甘寧晋綏連防軍で要職を務めました。国共内戦期には、熱河軍区や熱遼区の司令員を経て、林彪が指揮する東北民主連軍（後の中国人民解放軍第四野戦軍）の第八縦隊司令員となり、林彪との関係を深めます。1949年後半からは、東北野戦軍や第45軍の軍長、第14・第13兵団副司令員を歴任し、遼瀋戦役、平津戦役、衡宝戦役といった主要な戦役で戦功を挙げました。
建国後の軍歴と文化大革命での役割
中華人民共和国建国後、黄永勝は引き続き人民解放軍の幹部として活躍します。1950年以降、第13兵団司令員、広東軍区副司令員を経て、華南軍区、中南軍区の副司令員を歴任。特に広州軍区司令員を1955年4月から1968年3月までの長期間務めました。1953年5月には、朝鮮戦争に中国人民志願軍第19兵団司令員として参戦しています。1955年には上将の階級を授与され、一級八一勲章、一級独立自由勲章、一級解放勲章といった建国に貢献した軍人に与えられる主要な勲章を受章しました。1956年9月には党中央候補委員に選出され、文化大革命中の1968年には中央委員に昇格しています。
文化大革命が激化する中、黄永勝は軍の権力者の一人として台頭します。広州軍区司令員であった1967年4月、北京で林彪の示唆を受けたとされ、広州に戻って政治委員の劉興元と共に軍区の幹部を弾圧しました。「広東地下党」なる組織をでっち上げ、7,200人以上を迫害したとされています。
1968年3月、黄永勝は人民解放軍の最高指揮機関である総参謀部の長となる総参謀長に抜擢され、同時に軍政大学校長、党中央軍事委員会委員（弁事組組長）も兼任しました。1969年4月には党第九期中央委員、中央政治局委員、国防委員会委員に選出され、林彪を頂点とする一派の有力メンバーとなります。総参謀長として、黄永勝は林彪の意向を受けて、数人の軍事委員会副主席の文書を停止させたり、委員会の印章を全て回収したりするなど、権限を自らの下に集中させる行動をとりました。また、総計792件もの冤罪を作り上げ、839人（うち軍の高級幹部52人を含む）を迫害したと後に認定されています。
黄永勝は林彪の指示の下、他の古参幹部に対する攻撃にも加担しました。1967年11月には聶栄臻元帥を「華北山頭主義」として中傷し、批判を展開。1968年5月には賀竜元帥について「大土匪、大軍閥、大陰謀家」と決めつけ、彼が送った訴状を無視しました。同年8月には呉法憲と共に羅瑞卿事件に関する会議を招集し、羅瑞卿を「大極悪な反革命分子で、十分に狡猾、悪を極めている」と非難しました。羅瑞卿は自殺未遂で負傷していましたが、黄永勝は手術報告に同意しつつも、彼が尋問に耐えて秋まで手術を待つことを「讃える」という形で手術を遅延させ、結果として羅瑞卿が義肢を付ける機会を失わせたとされます。彭徳懐元帥への弾圧においても、黄永勝は扇動的な役割を果たしました。
失脚と晩年
1971年9月、林彪が失脚すると同時に、黄永勝もその政治生命を絶たれました。同年9月24日には総参謀長や党中央政治局委員などの全ての職務から解任されます。後任の総参謀長が正式に任命されるまでには時間を要し、鄧小平がその職に就くのは1975年1月のことでした。1973年8月には党から除籍されます。
文化大革命終結後、いわゆる「林彪・江青反革命集団事件」の主要人物として追及され、1981年1月25日、最高人民法院特別法庭において主犯の一人として裁かれました。この裁判で、黄永勝には懲役18年、政治的権利剥奪5年の判決が言い渡されました。裁判の過程では、女性関係に問題があったこと、特に文革中に林彪の妻である葉群との関係が自身の妻・項輝芳に露見したことなども明らかにされました。裁判後、妻の項輝芳とは離婚しています。
判決から約8ヶ月後の1981年9月、黄永勝は病気治療を理由に仮釈放（保外就医）され、青島で暮らしました。しかし、その約1年半後の1983年4月26日、青島にて癌のため死去しました。仮釈放後まもなく亡くなったため、彼自身の自伝や回想録は残されていませんが、息子の黄正が2011年に伝記『軍人永勝』を出版しています。この本は、黄永勝が生前に息子に語った林彪事件に関する談話の一部を収録しており、他の林彪グループの将軍たちの証言と同様に、林彪への賛辞と自身の冤罪であるとの主張が含まれているとされます。
建国に功績があった一方で、文化大革命においては権力闘争に深く関与し、多くの人々を迫害した黄永勝は、現代中国史における複雑な人物の一人として記憶されています。
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