黒木のフジ

黒木のフジ：古木の息吹と花の絶景

福岡県八女市黒木町に鎮座する素盞嗚神社の境内に、国の天然記念物として指定されている「黒木のフジ」があります。このフジは、日本国内でも有数の規模を誇る老樹・巨樹であり、その美しい姿は多くの人々を魅了し続けています。

歴史と由緒

黒木のフジは、伝承によれば1395年（応永2年）に南朝の征西大将軍、懐良親王が植えられたと伝えられています。樹齢は600年を超え、その長い年月を生きてきた風格が漂います。過去には、1586年（天正14年）の大友氏による兵火や、1821年（文政4年）の火災に見舞われましたが、地域の人々の手厚い保護によって枯れることなく、今日までその命を繋いできました。

圧倒的なスケール

黒木のフジは、その規模の大きさも特筆すべき点です。主幹は根元から屈曲し、地上約2メートルの高さで2本の太い枝に分かれています。そこから四方八方に伸びた枝や蔓が、広大な藤棚を覆い尽くしています。藤棚の面積は約3,000平方メートルにも及び、その一部は国道442号線にまで覆いかぶさるほどです。開花時期には、車の窓から藤の花房を間近に眺めるという、貴重な体験もできます。

華麗な花の姿

毎年4月中旬から5月上旬にかけて、黒木のフジは紫色の美しい花を咲かせます。無数に垂れ下がる花房は、その長さが1メートルを超えるものもあり、訪れる人々を圧倒します。開花時期に合わせて開催される「八女黒木大藤まつり」では、ライトアップされた幻想的な藤の花を楽しむこともできます。

周辺の魅力

黒木のフジが位置する八女市黒木町は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された古い町並みが残る場所です。江戸時代には久留米藩の在郷町として栄え、筑肥山地の豊富な山産物を扱う拠点として発展しました。現在も、その歴史的な景観が大切に保存されており、「筑後黒木」という別名でも親しまれています。黒木のフジを訪れた際には、ぜひ周辺の町並みも散策してみてください。

アクセス

所在地: 福岡県八女市黒木町黒木5-2
公共交通機関: 九州旅客鉄道鹿児島本線羽犬塚駅から堀川バスに乗車し、約50分。「黒木」または「大藤前」で下車。
* 自動車: 九州自動車道八女インターチェンジから約30分。

黒木のフジは、長い歴史と地域の人々の愛情によって守られてきた、貴重な自然遺産です。その美しい姿をひと目見ようと、毎年多くの観光客が訪れます。春の八女市を訪れる際には、ぜひ黒木のフジに足を運んでみてください。

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