龍福寺 (岐阜県富加町)

龍福寺（りょうふくじ）

岐阜県加茂郡富加町加治田に位置する臨済宗妙心寺派の寺院、龍福寺。その山号は臨済山。

歴史

龍福寺の歴史は、1557年（弘治3年）に加治田城主、佐藤紀伊守の母である徳林妙福大姉が草庵を開いたことに始まります。佐藤紀伊守は、織田信長の中濃攻略戦に協力しましたが、後に信長の命により加治田城主は斎藤信五に交代。失意の中、佐藤紀伊守は伊深村に隠居し仏門に入りました。

1567年（永禄10年）、佐藤紀伊守は草庵を拡張し、寺領を寄進。伊深佐藤氏の菩提寺として龍福寺を建立しました。開山には天猷玄晃を招きましたが、天猷玄晃は師である蘭畹玄秀を勧請開山としました。

隠居後の佐藤紀伊守は「三省」と号し、龍福寺のために尽力。寺の領地を定めた自筆の文書は、今もなお残されています。この文書には、寺領の範囲が「東は烏帽子岩、西は郷ヶ洞、南は門前龍沢屋敷共町うら、北は山の嶺通り」と具体的に記されており、当時の地名がそのまま残っていることがわかります。さらに、「もし異議を唱えるものがあれば申し出て下さい、厳しく注意します」という一文が加えられており、その裏には当時の加治田城主、斎藤新五の証判が押されています。

龍福寺の開山である天猷玄晃に帰依していた池田恒興は、織田信長の重臣でした。1582年（天正10年）の本能寺の変で信長が亡くなると、織田家の後継者争いが起こり、池田恒興は豊臣秀吉方につきました。1584年（天正12年）の長久手の戦いで、池田恒興とその息子である之助、そして娘婿の森長可が戦死。戦後、日比野美濃守率いる加治田衆によって、池田恒興父子と重臣10名の遺体が龍福寺に運ばれ葬儀が執り行われた後、大山の齢峰寺に埋葬されました。齢峰寺には、池田恒興、之助父子の無縫塔が2基あり、岐阜県指定重要文化財となっています。

また、龍福寺には池田恒興の遺品として犬山城から譲り受けた「鞍、鐙、轡、槍」が保存されています。

龍福寺の環境を愛した蘭畹玄秀は、龍福寺十境を選定。1582年（天正6年）に67歳でこの世を去りました。

二世の夬雲玄孚は、1615年（元和元年）に苗木藩主の遠山友政に請われ、苗木遠山氏の菩提寺である雲林寺を開山しました。

三世の陽南玄忠には、早朝に裏庭で狐が裾を咥えて隅に移動させた直後に、烏帽岩の山から大岩が転落し難を逃れたという伝説が残っています。その後、裏山に稲荷を祀り、旧二月の初午の日に餅を投げる祭りが行われるようになりました。陽南玄忠は1641年（寛永18年）9月18日に亡くなりました。

四世の一秀玄廣は、雲林寺を中興開山し、後に大本山の妙心寺に輪住したこともあります。1664年（寛文4年）3月16日に雲林寺で亡くなりました。

七世の蘭亭恵春は、1673年（寛文13年）に本堂の改築に尽力したことが棟札に記されています。また、正眼寺の大檀那であった佐藤吉次の葬儀の導師を務め、その画像に讃を記しました。1703年（元禄16年）5月12日に亡くなりました。

八世の江雪祖瑞は、1706年（宝永3年）に本堂を改築し、現在の姿に至っています。

十三世の大衍良和は、1800年（寛政12年）に山門を建立。享和年間には、開山堂と位牌堂、1810年（文化7年）には庫裡、1815年（文化12年）には玄関と書院を完成させました。1816年（文化13年）3月13日に亡くなりました。

十四世の萬寧玄彙は、棠林宗寿を龍福寺に招いて開堂。この時、修行中の雪潭紹璞が山門の楼上で開悟したことで知られています。1860年（万延元年）4月17日に亡くなりました。

十九世の蓮邦宗郁は、1898年（明治31年）に土蔵と鐘楼を建設しました。1927年（昭和2年）1月31日に亡くなりました。

二十一世の泰学周仁は、1978年（昭和53年）9月24日に開基の佐藤紀伊守、開山の蘭畹玄秀の四百年法要を執り行い、寺史を発行しました。

龍福寺十境

龍福寺の境内とその周辺には、「龍福寺十境」と呼ばれる景勝地があります。

1. 五老峯：裏の連峰で、梨割山の海抜278.2mを主峰とする雄大な山容。
2. 烏帽岩：寺の東にある小山で、頂上に奇岩が重なり松が添えられた美しい景観。
3. 霊亀山：寺の西にある小山で、現在は幽雅山と呼ばれている松山。
4. 東海石：裏庭の山際にある巨石。
5. 石上松：かつて片町地区の川浦川の南端の石上に茂っていた松。伊勢湾台風で倒伏。
6. 石牛洞：裏庭の奥山にある洞穴。
7. 虎嘯室：住職の居室。
8. 却敵城：佐藤紀伊守の城。山上の砦と麓の館との総称で、現在は古城山と呼ばれています。
9. 村田楽：伊和神社に伝わる古典芸能「田の神祭り」のこと。
10. 山市嵐：裏山一帯の松に吹く風の音。

文化財

龍福寺には、数々の文化財が保存されています。

岐阜県指定重要文化財
雲鈑
富加町指定重要文化財
佐藤紀伊守肖像画
鞍、鐙、轡、槍（池田恒興遺品）
白隠禅師筆達麿
白隠禅師書跡
釈迦十六善神図
釈迦三尊

外部リンク

臨済山 龍福寺（りょうふくじ） - ウェイバックマシン (2002年3月6日アーカイブ分)
龍福寺とその文化財　富加町

参考文献

『富加町史　上巻　(史料編)』　第二部 記錄の部　三 社寺記録　四　金石文と棟札　三三二　竜福寺　p814～p819　富加町史編集委員会　1975年
『富加町史　下巻　(通史編)』　第四章　中世　三　竜福寺と紀伊守　p215～p219　富加町史編集委員会　1980年
『富加町史　下巻　(通史編)』　第六章　近代　第五節　社会と文化　臨済山竜福寺　p546～p549　富加町史編集委員会　1980年
* 『美濃国加茂郡誌』　第七章　宗教　第二節　寺院　【加治田龍福寺】　p770　岐阜県加茂郡役所　大正10年

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