0ルピー紙幣

0ルピー紙幣とは

0ルピー紙幣は、インドで汚職撲滅を目的として発行されている、額面が「0ルピー」の模造紙幣です。これは、本来無料で提供されるべきサービスに対して賄賂を要求する政府役人に対し、不満を抱く市民が抗議の意思を示すために使用されます。インドの通常の50ルピー紙幣を模して作られており、非政府組織「5th Pillar」によって作成されました。

歴史的背景：インドの汚職

インドでは、公職における汚職が深刻な問題として認識されています。国際的な非政府組織であるトランスペアレンシー・インターナショナルによる2021年の報告では、インドは腐敗認識指数で85位にランク付けされています。2005年の調査では、インド国民の62％が、政府関係者に仕事を依頼する際に賄賂を支払ったり、不正な手段を利用した経験があると報告されています。この調査では、特に警察、土地行政、司法などの分野で贈収賄が横行していることが明らかになりました。

0ルピー紙幣の誕生

2007年、「5th Pillar」という非政府組織が、インド国民が贈収賄に屈しないという意思表示をするための手段として、0ルピー紙幣を作成しました。この紙幣には、「あらゆるレベルの汚職をなくす」「賄賂を授与も受領もしないと誓う」というスローガンが印刷されています。0ルピー紙幣は、本来無料で受けられるはずのサービスに対して賄賂を要求されたり、運転免許証の取得などの公的手続きで不当な料金を課せられたりした際に、役人に「支払う」ことで抗議を示すために使用されます。

「5th Pillar」は、この紙幣が、人々が権力者との対立を恐れることなく汚職に「ノー」と言うための手段となると述べています。0ルピー紙幣の目的は、単に個人の抗議を示すだけでなく、政府が組織的な汚職と戦っているというメッセージを腐敗した役人に伝えることです。この紙幣を使うことで、役人に賄賂を禁止する法律があることを思い起こさせ、彼らを恥じさせ、誠実な行動を促すことを目指しています。

0ルピー紙幣のデザインと配布

0ルピー紙幣は、インドの50ルピー紙幣に似せて作られていますが、インド政府が発行した法定通貨ではありません。通貨偽造の罪に問われないよう、紙幣の片面のみが印刷されています。「5th Pillar」によると、インド国民は毎年約30億ポンド（約4600億円）相当の賄賂を支払っているとされていますが、実際の金額はもっと大きいと考えられています。

0ルピー紙幣の広がり

0ルピー紙幣の概念は、メリーランド大学の物理学教授であるサティンダル・モーハン・バガット氏によって2001年に考案されました。彼は、インドへの一時帰国中に政府関係者による日常的な恐喝に不満を感じ、丁寧に賄賂を断る方法としてこのアイデアを思いつきました。「5th Pillar」は、このアイデアを実用化し、2007年の春に最初の25,000枚をチェンナイで配布しました。キャンペーンの成功を受けて、0ルピー紙幣はインド全土に広がりました。

2014年8月までに、「5th Pillar」は250万枚以上の0ルピー紙幣を配布しました。この紙幣は、インドの22の公用語のうち5つの言語（タミル語、ヒンディー語、カンナダ語、マラヤーラム語、テルグ語）で発行されています。

このコンセプトは、イエメン、ガーナ、ベナン、メキシコ、ネパールなど、政府の贈収賄が問題となっている他の国々にも広まっています。「5th Pillar」は現在、ウェブサイトZeroCurrency.orgを通じて、0ルピー紙幣のコンセプトをインドだけでなく、他の国の通貨にも拡大しています。

0ルピー紙幣の効果と今後の展望

0ルピー紙幣は、贈収賄に対して市民が声を上げるための象徴的なツールとしての役割を果たしています。この紙幣を使用することで、人々は腐敗した役人に対して、自らの意思を明確に伝えることができます。また、この活動は、汚職問題に対する人々の意識を高め、社会全体の変革を促す可能性を秘めています。今後も、「5th Pillar」は0ルピー紙幣の配布を継続し、より多くの人々が汚職撲滅運動に参加できるように取り組んでいくと考えられます。

関連項目

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ルピー
子供銀行券

外部リンク

5th Pillar Zero Rupee Note official web page

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