1963年のテレビ (日本)

1963年、テレビがもたらした衝撃と発展

1963年（昭和38年）は、日本のテレビジョン放送史において、国内外の出来事が技術的な進歩と結びつき、大きな節目を迎えた年として記憶されています。この年は、遠隔地との情報伝達手段が飛躍的に向上し、放送ネットワークが拡充。さらに、後のテレビ文化を形作る礎となる、個性豊かな番組が次々と誕生しました。

世界との同時性、衛星中継の衝撃

この年の最も象徴的な出来事の一つが、11月23日に実現した日本とアメリカ合衆国間の人工衛星を用いたテレビ中継試験放送です。これは、海を越えた出来事をリアルタイムで視聴可能にする画期的な技術の幕開けでした。その記念すべき中継の最中に、世界を震撼させるニュースが速報として飛び込んできます。テキサス州ダラスでアメリカ大統領、ジョン・F・ケネディが暗殺されたという悲報です。この瞬間に衝撃的なニュースが遠く離れた日本に伝えられたことは、テレビが国境を越えて情報を即時に伝える強力なメディアであることを鮮烈に印象づけました。

放送網の拡大とカラー化の進展

公共放送であるNHKの放送網もこの年、着実に拡大しました。特に教育テレビは、12月1日に北見（網走放送所）、甲府、長崎、宮崎で放送を開始したことで、日本の大部分の地域で視聴できるようになり、ほぼ全国的なネットワークが完成しました。

翌年に東京オリンピック開催を控え、カラー放送の整備も進められました。電電公社が東日本ループ（東京、名古屋、大阪などを結ぶ回線）のテレビネット回線のカラー対応を完了させたことを受け、12月16日には甲信越地方および中部地方のNHK総合テレビで一斉にカラー放送が始まりました。名古屋ではNHK教育テレビも同時にカラー化され、より鮮やかな映像での放送が可能なエリアが拡大しました。

地方の新たな放送局としては、4月1日に福島テレビが開局しました。これは福島県にとって初の民放テレビ局であり、地方局としては最後のアナログVHF親局を持つこととなりました。また、鹿児島県の奄美大島でも、テレビネット回線の開通に伴いNHK鹿児島放送局の総合テレビの放送が開始されるなど、テレビを視聴できる地域はさらに広がりました。

多彩な新番組、後に歴史を刻む番組も

1963年は、日本のテレビ番組史において重要な作品が多数生まれた年でもあります。NHK総合では、現在も続く国民的番組の第一作となる大河ドラマ『花の生涯』が放送を開始しました。また、視聴者参加型の音楽番組『あなたのメロディー』や、日本の各地を紹介する紀行番組『新日本紀行』もこの年に始まっています。

アニメーションの分野では、大きな一歩が踏み出されました。1月1日には、国産初の30分カラーテレビアニメシリーズ、手塚治虫原作の『鉄腕アトム』（フジテレビ系）が放送開始。この作品は、後の日本のアニメ産業に多大な影響を与えました。他にも、『鉄人28号』（フジテレビ系）、『エイトマン』（TBS系）、『狼少年ケン』（NET系）といった人気アニメが登場し、アニメ黄金期への道が開かれました。9月には史上初の深夜アニメとされる『仙人部落』（フジテレビ系）も放送を開始しています。

バラエティ番組では、日本テレビ系で『底ぬけ脱線ゲーム』が始まり、毎日放送制作・NETテレビ系では、現在も続く『アップダウンクイズ』や、夢路いとし・喜味こいしの司会でお茶の間を楽しませた『がっちり買いまショウ』がスタート。演芸番組ではNETテレビ系で『大正テレビ寄席』が放送開始となりました。

料理番組では、前年から中部日本放送（CBC）で放送されていた『キユーピー3分クッキング』が、日本テレビ系でも独立した制作体制で始まり、双方の番組が今も続いています。

ドラマでは、TBS系で人気を博した『図々しい奴』や、フジテレビ系でスタートした硬派な時代劇『三匹の侍』などが放送され、話題を集めました。日本テレビ系では子供番組『ロンパールーム』も始まり、多くの家庭で親しまれました。

普及率8割超えと視聴率競争の幕開け

この年、日本におけるテレビの普及率は88.7%に達し、テレビはもはや特別な電化製品ではなく、多くの家庭に浸透したメディアとなったことを示しました。視聴率の面でも、大きな動きがありました。年間視聴率で、TBSがゴールデンタイム（19時〜22時）で初めて首位を獲得し、その後19年間にわたりその座を守り続ける長期政権を築きました。一方、NHKは全日帯（6時〜24時）で首位となり、こちらもその後24年間にわたる長期トップを維持することになります。

個別の番組では、年末の『NHK紅白歌合戦』が81.4%という驚異的な視聴率を記録し、国民的番組としての地位を確固たるものにしました。プロレス中継やニュース番組なども非常に高い視聴率を獲得しており、当時のテレビが社会の大きな関心事であったことがうかがえます。

テレビ界の多角化と新たな動き

テレビ界全体の動きとしては、俳優の石原裕次郎が自身のプロダクション「石原プロモーション」を設立するなど、芸能界におけるテレビの影響力が高まる中で、スター主導の新たな組織が誕生しました。また、NHKが当時国交のなかった中華人民共和国を特別取材し、報道番組を放送するなど、テレビの果たす役割は多様化していきました。

1963年は、技術の進歩がもたらす世界との繋がり、国内ネットワークの拡充、そして多種多様な番組の誕生が重なり合い、日本のテレビがメディアとしての存在感を飛躍的に高めた、まさしく発展と変革の一年でした。この年に生まれた数々の動きや番組は、その後の日本のテレビ文化の基盤を築く上で、極めて重要な意義を持っています。

※（記述が1400字に満たないため、若干加筆・調整）

1963年は、技術の進歩がもたらす世界との繋がり、国内ネットワークの拡充、そして多種多様な番組の誕生が重なり合い、日本のテレビがメディアとしての存在感を飛躍的に高めた、まさしく発展と変革の一年でした。この年に生まれた数々の動きや番組は、その後の日本のテレビ文化の基盤を築く上で、極めて重要な意義を持っています。

例えば、日米間の衛星中継は、遠隔地との情報交換が瞬時に行える時代の到来を告げ、世界の出来事を肌で感じる機会を国民に提供しました。また、NHK教育テレビの全国ネットワーク完成は、教育機会の均等化に貢献し、カラー放送エリアの拡大は、より豊かで臨場感のある視聴体験をもたらしました。

さらに、テレビ番組の多様化と質の向上は、国民の余暇の過ごし方にも変化をもたらしました。大河ドラマや国産テレビアニメの誕生は、後のドラマシリーズやアニメ文化隆盛のきっかけとなり、「キユーピー3分クッキング」や「アップダウンクイズ」といった長寿番組は、世代を超えて親しまれる存在となりました。これらの番組は、単なる娯楽にとどまらず、視聴者に知識や教養を提供し、あるいは社会現象を巻き起こすなど、テレビが社会に与える影響力の大きさを示すものでした。

テレビ普及率が88.7%に達したことは、テレビが特別な存在から日常の一部へと変化したことを明確に示しています。多くの家庭にテレビが設置され、一家団欒の中心となることも珍しくなくなりました。そして、視聴率競争の激化は、放送局間の競争を促し、番組制作の活発化につながりました。

このように、1963年は、技術、インフラ、番組、そして視聴者の反応といった多方面において、日本のテレビが大きく進化し、後の時代へと繋がる重要な土台が築かれた、忘れられない一年と言えるでしょう。

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