1970年の自転車競技

1970年の自転車競技界の動向

1970年の自転車競技界は、ロードレース、トラックレース、競輪、シクロクロスと多岐にわたる分野で、様々な出来事がありました。特にロードレースでは、エディ・メルクスが圧倒的な強さを見せ、ジロ・デ・イタリアとツール・ド・フランスの同一年度総合優勝という偉業を達成しました。

ロードレース

エディ・メルクスの活躍

エディ・メルクスは、1970年のロードレース界において、まさに「支配者」と呼ぶにふさわしい活躍を見せました。ジロ・デ・イタリアでは総合優勝を果たし、ツール・ド・フランスでは第14ステージのモン・ヴァントゥで勝利したものの、レース後には呼吸困難に陥るほどのダメージを受けました。しかし、その後もマイヨ・ジョーヌを守り抜き、総合2連覇を達成。1964年のジャック・アンクティル以来となる、ジロとツールの同一年度総合優勝という偉業を成し遂げました。また、メルクスはスーパープレスティージュでも優勝しており、その圧倒的な強さを示しました。

その他のレース

ブエルタ・ア・エスパーニャでは、ルイス・オカーニャが総合優勝。また、主要なクラシックレースでは、ミケーレ・ダンチェッリがミラノ〜サンレモ、エリック・ルマンがロンド・ファン・フラーンデレン、エディ・メルクスがパリ〜ルーベ、ロジェ・デ・フラミンクがリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、フランコ・ビトッシがジロ・ディ・ロンバルディアを制しました。

世界選手権

世界選手権プロロードレースでは、ジャンピエール・モンセレが優勝しました。

競輪

秩父宮妃賜杯競輪の廃止

1970年の競輪界では、秩父宮妃賜杯競輪が廃止となるという大きな出来事がありました。この背景には、開催期間中に選手宿舎で「チンチロリン大会」が行われていたことがマスコミで報道され、冠を頂く秩父宮妃勢津子が激怒し、開催返上を申し出たという経緯があります。これにより、秩父宮妃賜杯競輪は当年の開催をもって廃止されることになりました。

全国都道府県選抜競輪とオールスター競輪の中止

全国都道府県選抜競輪は、当年度の開催地が決定せず、廃止となりました。同様に、オールスター競輪も開催地が決定せず、開催が見送られました。

日本選手権競輪の開催地変更

美濃部亮吉・東京都知事の都営ギャンブル廃止表明を受け、1968年11月を最後に後楽園競輪場での日本選手権競輪開催が返上されました。そのため、1969年度の同大会は一宮競輪場、1970年度の同大会は岸和田競輪場で開催されました。この11月開催が最後となりました。

その他の競輪レース

1970年の主な競輪レースとしては、日本選手権競輪では工藤元司郎（2月一宮）、荒川秀之助（11月岸和田）が優勝。高松宮賜杯競輪では田中博が優勝。競輪祭では、全日本競輪王戦を福島正幸、全日本新人王戦を荒川秀之助が制覇しました。賞金王は福島正幸が獲得しています。

吉川多喜夫の引退

特別競輪4回制覇の実績を誇る吉川多喜夫が、7月28日のレース以降、謎の長期休養期間に入り、一度もレースをすることなく引退しました。

シクロクロス

エリック・デ・フラミンクの活躍

エリック・デ・フラミンクは、シクロクロス世界選手権プロ部門で3連覇を達成しました。

誕生した選手たち

1970年には、後の自転車競技界を彩る多くの選手たちが誕生しました。ロードレース界からは、マルコ・パンターニ、ペーター・ファンペテヘム、アブラハム・オラーノ、ミケーレ・バルトリ、セルヒーイ・ゴンチャール、セドリック・ヴァスール、パヴェル・パドルノスなど。トラックレース界からは、ホセ・アントニオ・エスクレド、イエンス・フィードラー。そして、競輪界からは後閑信一、吉岡稔真、岡部芳幸らが誕生しています。

まとめ

1970年は、エディ・メルクスの圧倒的な活躍が目立った年であり、数々のドラマが生まれた年でした。また、後の自転車競技界を担う多くの選手たちが誕生し、歴史の転換期とも言える年でした。

もう一度検索