1970年の航空
1970年は、世界の航空および宇宙開発の分野で、多岐にわたる重要な出来事が相次いだ、まさに変革の時代でした。
年の初めには、ソビエト連邦の新型機が登場しました。可変翼を持つ戦闘爆撃機Su-24の原型機が1月17日に初の空へ飛び立ち、後の実用化に向けた一歩を踏み出しました。
続く1月22日には、航空旅行の歴史に刻まれる出来事が起こります。パンアメリカン航空が、当時「ジャンボジェット」と呼ばれたボーイング747の定期旅客便として、ニューヨーク・ロンドン線での運航を開始しました。これにより、大量輸送時代が本格的に幕を開けました。
また、同年には、アメリカの航空機メーカーからも、大型旅客機が続々と登場します。8月29日には、マクドネル・ダグラスのDC-10が、そして11月16日にはロッキードのL-1011トライスターがそれぞれ初飛行を果たし、ボーイング747とともに、ワイドボディ機による旅客輸送の主役となっていきます。
技術革新は超音速機にも及びました。11月4日、英仏共同開発の超音速旅客機コンコルドの試作機が、初めてマッハ2を超える速度での飛行に成功し、高速航空輸送の可能性を示しました。
軍用機の分野でも、将来の主力となる機体が誕生しています。イタリアの軍用輸送機アレニアG.222が7月18日に、アメリカ海軍の艦上戦闘機グラマンF-14トムキャットの原型機が12月21日にそれぞれ初飛行を行いました。
ビジネスジェット分野では、ダッソー社のファルコン10が9月1日に初飛行しています。また、ベトナム戦争においては、夜間の低高度偵察を目的とした、静粛性の高いプロペラを備えた特殊な機体「クワイアット・スター」が使用されていたことが確認されています。
宇宙開発においても、この年は目覚ましい進展がありました。2月11日には、日本のラムダ・ロケットによる初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げが成功。これにより、日本はアメリカ、ソ連、フランスに次ぐ世界で4番目の人工衛星打ち上げ国となりました。続いて4月24日には、中華人民共和国が初の人工衛星「東方紅1号」の打ち上げに成功し、世界で5番目の衛星保有国となっています。
一方、アメリカの宇宙計画では緊迫した事態が発生しました。4月に打ち上げられたアポロ13号は、月へ向かう途中で機械船の酸素タンクが爆発するという重大な事故に見舞われます。しかし、搭乗していたジム・ラベルら3名の宇宙飛行士は、管制官との緊密な連携と卓越した技術により、危機を乗り越え、無事地球への帰還を果たし、その生還劇は多くの人々に感動を与えました。
ソビエト連邦は、無人月探査を着実に進めました。9月12日に打ち上げられたルナ16号は、月の石を採取して地球に持ち帰るサンプルリターンに成功しました。また、11月10日に打ち上げられたルナ17号は、11月17日に月面に着陸し、無人月面車「ルノホート1号」を展開。約11ヶ月間にわたり月面調査を実施しました。
さらに、ソビエト連邦は金星探査にも挑戦。8月17日には金星を目指す宇宙探査機ベネラ7号を打ち上げました。
航空機の安全に関わる問題も頻繁に発生しました。2月2日には、アメリカ空軍のF-106A戦闘機が無人のまま胴体着陸するという珍しい事故が発生しています（コーンフィールド・ボンバー）。
特に、ハイジャック事件が世界的に多発したのがこの年の特徴です。日本では、5月18日に航空機の強取等の処罰に関する法律（ハイジャック防止法）が施行されましたが、その直後の8月19日には、全日空アカシア便（ボーイング727）がピストルを持った男にハイジャックされる事件が発生しました。
国際的には、9月6日から12日にかけて、パレスチナ解放人民戦線（PFLP）による大規模な旅客機同時ハイジャック事件が発生。5機の旅客機が乗っ取られ、そのうち3機がヨルダンの旧イギリス軍基地に強制着陸させられるという前代未聞の事態となりました。
一方で、冒険的な挑戦も行われました。2月1日には、レイモンド・マンロー氏の設計した熱気球がアイリッシュ海を横断しました。しかし、9月20日には気球による大西洋横断を目指したフリーライフ号が墜落し、搭乗者3名が行方不明となる痛ましい事故も発生しています。
欧州では、将来の大型旅客機開発に向けた新たな動きがありました。12月18日、フランスのアエロスパシアルと西ドイツDASA（後のダイムラー・ベンツ・エアロスペース）による共同出資で、エアバス社が設立され、ボーイングやマクドネル・ダグラスに対抗する体制が整えられました。
このように1970年は、大型機の就航と開発、超音速飛行の成功、日中両国の宇宙進出、そして緊迫したアポロ13号の生還といった技術的・探査的な成果が上がる一方で、ハイジャックの多発が航空安全への大きな課題を突きつけた年と言えるでしょう。
この年の航空関連の主な受賞者は以下の通りです。
ハーモン・トロフィー：ブライアン・トラブショー、アンドレ・トゥルカ、シーラ・スコット
デラボー賞： ジム・ラベル (USA)、アンドリアン・ニコラエフ(USSR)、ヴィタリー・セヴァスチャノフ(USSR)
* FAI・ゴールド・エア・メダル：ディック・メリル
年の初めには、ソビエト連邦の新型機が登場しました。可変翼を持つ戦闘爆撃機Su-24の原型機が1月17日に初の空へ飛び立ち、後の実用化に向けた一歩を踏み出しました。
続く1月22日には、航空旅行の歴史に刻まれる出来事が起こります。パンアメリカン航空が、当時「ジャンボジェット」と呼ばれたボーイング747の定期旅客便として、ニューヨーク・ロンドン線での運航を開始しました。これにより、大量輸送時代が本格的に幕を開けました。
また、同年には、アメリカの航空機メーカーからも、大型旅客機が続々と登場します。8月29日には、マクドネル・ダグラスのDC-10が、そして11月16日にはロッキードのL-1011トライスターがそれぞれ初飛行を果たし、ボーイング747とともに、ワイドボディ機による旅客輸送の主役となっていきます。
技術革新は超音速機にも及びました。11月4日、英仏共同開発の超音速旅客機コンコルドの試作機が、初めてマッハ2を超える速度での飛行に成功し、高速航空輸送の可能性を示しました。
軍用機の分野でも、将来の主力となる機体が誕生しています。イタリアの軍用輸送機アレニアG.222が7月18日に、アメリカ海軍の艦上戦闘機グラマンF-14トムキャットの原型機が12月21日にそれぞれ初飛行を行いました。
ビジネスジェット分野では、ダッソー社のファルコン10が9月1日に初飛行しています。また、ベトナム戦争においては、夜間の低高度偵察を目的とした、静粛性の高いプロペラを備えた特殊な機体「クワイアット・スター」が使用されていたことが確認されています。
宇宙開発においても、この年は目覚ましい進展がありました。2月11日には、日本のラムダ・ロケットによる初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げが成功。これにより、日本はアメリカ、ソ連、フランスに次ぐ世界で4番目の人工衛星打ち上げ国となりました。続いて4月24日には、中華人民共和国が初の人工衛星「東方紅1号」の打ち上げに成功し、世界で5番目の衛星保有国となっています。
一方、アメリカの宇宙計画では緊迫した事態が発生しました。4月に打ち上げられたアポロ13号は、月へ向かう途中で機械船の酸素タンクが爆発するという重大な事故に見舞われます。しかし、搭乗していたジム・ラベルら3名の宇宙飛行士は、管制官との緊密な連携と卓越した技術により、危機を乗り越え、無事地球への帰還を果たし、その生還劇は多くの人々に感動を与えました。
ソビエト連邦は、無人月探査を着実に進めました。9月12日に打ち上げられたルナ16号は、月の石を採取して地球に持ち帰るサンプルリターンに成功しました。また、11月10日に打ち上げられたルナ17号は、11月17日に月面に着陸し、無人月面車「ルノホート1号」を展開。約11ヶ月間にわたり月面調査を実施しました。
さらに、ソビエト連邦は金星探査にも挑戦。8月17日には金星を目指す宇宙探査機ベネラ7号を打ち上げました。
航空機の安全に関わる問題も頻繁に発生しました。2月2日には、アメリカ空軍のF-106A戦闘機が無人のまま胴体着陸するという珍しい事故が発生しています（コーンフィールド・ボンバー）。
特に、ハイジャック事件が世界的に多発したのがこの年の特徴です。日本では、5月18日に航空機の強取等の処罰に関する法律（ハイジャック防止法）が施行されましたが、その直後の8月19日には、全日空アカシア便（ボーイング727）がピストルを持った男にハイジャックされる事件が発生しました。
国際的には、9月6日から12日にかけて、パレスチナ解放人民戦線（PFLP）による大規模な旅客機同時ハイジャック事件が発生。5機の旅客機が乗っ取られ、そのうち3機がヨルダンの旧イギリス軍基地に強制着陸させられるという前代未聞の事態となりました。
一方で、冒険的な挑戦も行われました。2月1日には、レイモンド・マンロー氏の設計した熱気球がアイリッシュ海を横断しました。しかし、9月20日には気球による大西洋横断を目指したフリーライフ号が墜落し、搭乗者3名が行方不明となる痛ましい事故も発生しています。
欧州では、将来の大型旅客機開発に向けた新たな動きがありました。12月18日、フランスのアエロスパシアルと西ドイツDASA（後のダイムラー・ベンツ・エアロスペース）による共同出資で、エアバス社が設立され、ボーイングやマクドネル・ダグラスに対抗する体制が整えられました。
このように1970年は、大型機の就航と開発、超音速飛行の成功、日中両国の宇宙進出、そして緊迫したアポロ13号の生還といった技術的・探査的な成果が上がる一方で、ハイジャックの多発が航空安全への大きな課題を突きつけた年と言えるでしょう。
この年の航空関連の主な受賞者は以下の通りです。
ハーモン・トロフィー：ブライアン・トラブショー、アンドレ・トゥルカ、シーラ・スコット
デラボー賞： ジム・ラベル (USA)、アンドリアン・ニコラエフ(USSR)、ヴィタリー・セヴァスチャノフ(USSR)
* FAI・ゴールド・エア・メダル：ディック・メリル
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