1970年イギリスグランプリ

1970年イギリスグランプリ：リントの劇的な勝利とF1界の転換点

1970年7月18日、イギリスのブランズ・ハッチ・サーキット。F1世界選手権第7戦、1970年イギリスグランプリが開催されました。このレースは、数々のドラマと、F1界における大きな変化の兆しを示す、記憶に残る一戦となりました。

タイヤ供給体制の変化と激しい争い

この年のイギリスGPは、ダンロップによるF1用タイヤ供給の終焉を告げるレースとして、特別な意味を持っていました。1965年のグッドイヤー参入、1966年のファイアストン参入により、ダンロップの独占は崩れ、激しいタイヤ競争が繰り広げられていました。それでもダンロップはBRMとティレル/マーチに2勝をもたらすなど、その性能の高さを証明していましたが、この年をもって撤退することとなりました。この変化は、今後のF1タイヤ開発に大きな影響を与えることになるでしょう。

新旧ドライバーの活躍とマシンの進化

25台のマシンがエントリーしたこのレースには、F1界の未来を担う若手と、ベテランドライバーが揃いました。このレースがF1デビューとなったエマーソン・フィッティパルディは、後に世界チャンピオンとなるブラジルの若き才能です。一方、ダン・ガーニーは、このレースを最後にF1から引退しました。ベテランドライバーの経験と、若手ドライバーの勢いが交錯する、まさに世代交代の瞬間でした。

ジョン・サーティースは、自らのチーム「サーティース」でF1に参戦を開始、自製マシン完成までの繋ぎとしてマクラーレン・M7Cを使用していましたが、このレースからは初となる自製F1マシンTS7で参戦しました。また、ウィリアムズはオランダGPで事故死したピアス・カレッジの後任としてブライアン・レッドマンを起用し、チーム活動を再開させました。フェラーリはクレイ・レガツォーニに2台目の312Bを提供、STPのマリオ・アンドレッティも復帰を果たすなど、各チームが様々な戦略を展開していました。しかし、マクラーレンはフォード・コスワース・DFVエンジンの不足により、地元出身のピーター・ゲシンは欠場せざるを得ませんでした。

予選から決勝までの展開

ヨッヘン・リントがポールポジションを獲得、ジャック・ブラバム、ジャッキー・イクスと共にフロントローに並びました。予選では、ロルフ・シュトメレンとブライアン・レッドマンがそれぞれアクシデントとマシントラブルにより決勝進出を断念しました。決勝スタート直前にはアンドレア・デ・アダミッチが燃料漏れにより出走不可能となりました。

スタート直後、イクスがブラバムを抜き首位に立ちましたが、7周目にトランスミッション故障でリタイア。リントがトップに躍り出ると、ブラバムとの激しい首位争いが展開されました。ジャッキー・オリバーが3位を走行していましたが、58周目にエンジンブローでリタイアし、デニス・ハルムが3位に繰り上がります。69周目にはリントのギアミスを捉え、ブラバムがトップに立ちましたが、最終ラップ最終コーナーでガス欠に見舞われ失速。既に13秒差をつけていたリントが優勝を掴みました。ブラバムは2位、ハルムが3位でチェッカーを受けました。クレイ・レガツォーニは4位に入賞しました。

リントは一時、リアウィングの高さが規定違反とされ失格となりましたが、再検査の結果、3時間後に失格が取り消され、3連勝が確定しました。

レース結果とその後

リントの平均速度は174.925km/h、ファステストラップはブラバムの1分25秒9でした。ラップリーダーは、イクス6周、リント63周、ブラバム11周でした。このレースの結果、ドライバーズランキングではトップ5に大きな変動は見られませんでした。しかし、このレースは、F1界における技術革新とドライバー層の変化、そしてタイヤ供給体制の転換期を示す象徴的なレースとして、F1の歴史に刻まれました。

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