1979年の航空

1979年の航空

1979年は、航空分野において多岐にわたる出来事が発生した年です。悲惨な事故が複数発生し多数の犠牲者が出た一方で、技術的な挑戦が成功を収めたり、新たなロケットが打ち上げられたりと、航空技術の進歩も確かに見られました。企業間の動きや軍事面での重要な展開もあり、この年は航空史における転換点の一つと言えるかもしれません。

主要な出来事

この年に発生した主な出来事を以下に詳述します。

航空事故

1979年は、特に民間航空にとって痛ましい事故が複数発生しました。

ローデシア航空機撃墜：2月12日、ローデシア航空（現在のジンバブエ）のビッカース バイカウント国内便が、反政府ゲリラによる地対空ミサイル攻撃を受け墜落。この攻撃により、搭乗していた乗員・乗客59人全員が命を落としました。
アメリカン航空191便墜落事故：5月25日、シカゴ・オヘア国際空港を離陸しようとしたアメリカン航空のマクドネル・ダグラス DC-10型機がエンジン脱落が原因とみられる事故を起こし墜落。この事故で、乗員・乗客271名と地上の2名を含む合計273名が犠牲となりました。これはアメリカ国内で発生した航空事故としては、当時最も多くの犠牲者を出した事故でした。
アエロフロート空中衝突事故：8月17日、ウクライナ上空でアエロフロート所属の2機のツポレフ Tu-134旅客機が空中衝突。通信の誤りなどが原因とされ、両機の乗員・乗客合わせて156名全員が死亡しました。
ウェスタン航空2605便着陸失敗事故：10月31日、メキシコシティのベニート・フアレス国際空港（当時）へ着陸を試みたウェスタン航空のDC-10型機が、霧の中、滑走路を誤認識し、機体が障害物に接触、炎上しました。この事故により、搭乗者72名と地上の1名、合計73名が犠牲となりました。

また、5月16日にはニューヨークのパンナム・ビル屋上に着陸しようとしたシコルスキー S-61ヘリコプターが事故を起こし4人が死亡。この事故を受けて、同ビル屋上のヘリポートは閉鎖されました。

技術的な挑戦と記録

事故が相次ぐ一方で、航空技術における輝かしい成果もありました。

人力飛行機ドーバー海峡横断：6月12日、ポール・マクレディが設計した人力飛行機「ゴッサマーアルバトロス」が、パイロットのブライアン・アレンの操縦により、ドーバー海峡の横断に成功しました。これは人力飛行機による歴史的な偉業として記録されています。
ピストンエンジン機速度記録：8月14日、スティーブ・ヒントンはネバダ州において、改造されたP-51 ムスタング「レッド・バロン」号を操縦し、ピストンエンジン機の速度記録となる803 km/hを樹立しました。

企業・軍事動向

航空産業や軍用機の分野でも動きがありました。

1月12日には、スイスの航空機メーカーであるピラタス・エアクラフトが、イギリスのブリテン・ノーマンを買収しました。
2月26日、アメリカ海兵隊にA-4 スカイホーク攻撃機の最後の機体が引き渡されました。これにより、1953年から26年間にわたり2,690機が生産されたこの傑作機の製造が完了しました。
3月10日には、アメリカ空軍の早期警戒管制機であるE-3 セントリーが、イエメン内戦への対応のため派遣されています。
6月26日、イスラエル空軍のF-15 イーグルが、シリア空軍のMig-21戦闘機4機を空対空戦闘で撃墜しました。
7月23日、イギリス政府は、国営航空会社ブリティッシュ・エアウェイズの民営化計画と、航空機製造会社ブリティッシュ・エアロスペースの株式売却を発表しました。
12月25日、ソビエト連邦がアフガニスタンへの軍事介入を開始するにあたり、アントノフAn-12やAn-22といった大型輸送機が兵士の輸送に広く使用されました。

宇宙開発

広義の航空分野では、宇宙開発においても重要な一歩がありました。

12月24日、欧州宇宙機関 (ESA) が開発した初の大型ロケット、アリアン1の初打ち上げが成功しました。これは、その後のヨーロッパの宇宙開発を大きく推進する出来事でした。

航空に関する賞

この年、航空分野で顕著な功績を上げた個人には、以下の賞が贈られました。

ハーモン・トロフィー：ブライアン・アレン
* デラボー賞：ウラジーミル・リャホフ（ソ連）、ワレリー・リューミン（ソ連）

ブライアン・アレンは、前述の人力飛行機によるドーバー海峡横断の成功が評価されての受賞です。

1979年は、航空技術の進歩とそれに伴う挑戦、そして航空輸送の安全性という永遠の課題が改めて浮き彫りになった年として、航空史に刻まれています。

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