1980年の鉄道
1980年（昭和55年）は、日本の鉄道はもとより、海外においても多くの重要な出来事があった、鉄道史において特筆すべき一年です。この年には、国鉄による全国的な取り組みや、都市部における鉄道ネットワークの拡充、そして一部ローカル線の再編など、多岐にわたる動きが見られました。
年の始まりには、韓国の鉄道庁により京元電鉄線に新里門駅が開業しました。2月には台湾鉄路管理局の北廻線が延伸し、いくつかの新駅が誕生しています。日本では、国鉄が3月3日に草津線（草津駅 - 柘植駅間 36.7km）、桜井線（奈良駅 - 高田駅間 29.4km）、和歌山線（王寺駅 - 五条駅間 35.8km）の直流電化を一挙に完成させ、沿線の利便性が大きく向上しました。10月1日には、北海道において室蘭本線（室蘭駅 - 東室蘭駅 - 沼ノ端駅間 74.9km）と千歳線（沼ノ端駅 - 苗穂駅間 60.2km）が交流電化され、北海道における主要幹線ネットワークの近代化が進められました。
都市鉄道では、東京都交通局の新宿線が3月16日に新宿駅（新線）から岩本町駅まで7.3km延伸開業し、同時に京王線との相互直通運転を開始しました。これにより、都心部と多摩地域を結ぶ新たな大動脈が誕生しました。帝都高速度交通営団（現在の東京メトロ）の有楽町線も3月27日に銀座一丁目駅から新富町駅まで0.7km延伸しています。大阪市営地下鉄（現在のOsaka Metro）谷町線は11月27日に天王寺駅から八尾南駅まで10.5km延伸開業し、大阪南部の交通アクセスを改善しました。名古屋鉄道も6月5日に知多新線を野間駅から内海駅まで4.1km延伸開業させています。
海外でも、3月29日にハンガリーのブダペスト交通会社地下鉄3号線、10月11日にアムステルダムメトロ、10月31日にはソウル特別市地下鉄本部（現在のソウル交通公社）の地下鉄2号線が新たに開業するなど、世界各地で都市鉄道網の拡充が進みました。
鉄道ネットワークの進化の一方で、役目を終えた路線もありました。4月1日には富山地方鉄道の射水線（新富山駅 - 新港東口駅間 14.4km）が、9月14日には北陸鉄道の能美線（鶴来駅 - 新寺井駅間 16.7km）がそれぞれ廃止されました。11月1日には西日本鉄道の北九州線（北方線）も廃止されています。
大規模な再編としては、12月1日に南海電気鉄道から阪堺電気軌道へ、軌道線の阪堺線（恵美須町駅 - 浜寺駅前停留場間 14.1km）と上町線（天王寺駅前停留場 - 住吉公園駅間 4.6km）が譲渡されたことが挙げられます。これにより、両路線の運営主体が変わりました。
多くの新しい駅が開業し、利用者の利便性が高まりました。日本では、国鉄の関西本線に三郷駅が新設されたほか、10月1日には横浜線町田駅が移転・改称（旧：原町田駅）された上で、千歳線に千歳空港駅（現在の南千歳駅）、東海道本線（品鶴線）に新川崎駅、横須賀線に東戸塚駅といった、現在も主要駅となっている駅が開業しました。海外でも前述の新規開業区間に多くの新駅が誕生しています。
輸送力増強のためのインフラ整備も進みました。国鉄では鹿児島本線、日豊本線、横浜線の一部区間が複線化されています。京阪電気鉄道では京阪本線の一部区間が複々線化されました。西武鉄道新宿線の一部区間も複線化されています。
国鉄は旅客誘致策として、3月15日から全国の鉄道旅客営業路線全線（当時）の完乗を目指す「いい旅チャレンジ20,000km」キャンペーンを開始しました。この企画は鉄道愛好家を中心に大きな反響を呼び、後の鉄道旅行文化にも影響を与えました。
この年には、各社で多くの新型車両が登場し、既存車両の置き換えやサービス向上に貢献しました。
主な新型・新形式車両には以下のようなものがあります。
日本国有鉄道：145系、193系、200系電車など
東武鉄道：5050系電車
西武鉄道：301系電車
帝都高速度交通営団：8000系電車
東京急行電鉄：8090系電車
小田急電鉄：7000形電車（LSE）
阪急電鉄：7000系電車
福岡市交通局：1000系電車
* ソウル特別市地下鉄本部：2000系電車
また、西武鉄道の車両が上信電鉄や大井川鉄道に譲渡されるなど、活躍の場を移した車両も見られました。一方、国鉄のツ4000形貨車など、役目を終えて姿を消した形式もあります。
鉄道友の会が選定するその年の優れた車両にも注目が集まりました。第23回ブルーリボン賞は江ノ島電鉄の1000形電車が、第20回ローレル賞は北総開発鉄道7000形電車、名古屋鉄道100系電車、富山地方鉄道14760形電車がそれぞれ選ばれています。
1980年は、全国的な電化や複線化といったインフラ整備、そして都市部での大規模な路線延伸や再編が進み、同時に新しい車両が多数登場した、日本の鉄道、さらには世界の鉄道史においても節目となる変化が見られた記憶に残る一年であったと言えるでしょう。
主要な出来事
新規開業、路線延伸と電化
年の始まりには、韓国の鉄道庁により京元電鉄線に新里門駅が開業しました。2月には台湾鉄路管理局の北廻線が延伸し、いくつかの新駅が誕生しています。日本では、国鉄が3月3日に草津線（草津駅 - 柘植駅間 36.7km）、桜井線（奈良駅 - 高田駅間 29.4km）、和歌山線（王寺駅 - 五条駅間 35.8km）の直流電化を一挙に完成させ、沿線の利便性が大きく向上しました。10月1日には、北海道において室蘭本線（室蘭駅 - 東室蘭駅 - 沼ノ端駅間 74.9km）と千歳線（沼ノ端駅 - 苗穂駅間 60.2km）が交流電化され、北海道における主要幹線ネットワークの近代化が進められました。
都市鉄道では、東京都交通局の新宿線が3月16日に新宿駅（新線）から岩本町駅まで7.3km延伸開業し、同時に京王線との相互直通運転を開始しました。これにより、都心部と多摩地域を結ぶ新たな大動脈が誕生しました。帝都高速度交通営団（現在の東京メトロ）の有楽町線も3月27日に銀座一丁目駅から新富町駅まで0.7km延伸しています。大阪市営地下鉄（現在のOsaka Metro）谷町線は11月27日に天王寺駅から八尾南駅まで10.5km延伸開業し、大阪南部の交通アクセスを改善しました。名古屋鉄道も6月5日に知多新線を野間駅から内海駅まで4.1km延伸開業させています。
海外でも、3月29日にハンガリーのブダペスト交通会社地下鉄3号線、10月11日にアムステルダムメトロ、10月31日にはソウル特別市地下鉄本部（現在のソウル交通公社）の地下鉄2号線が新たに開業するなど、世界各地で都市鉄道網の拡充が進みました。
路線の廃止と譲渡
鉄道ネットワークの進化の一方で、役目を終えた路線もありました。4月1日には富山地方鉄道の射水線（新富山駅 - 新港東口駅間 14.4km）が、9月14日には北陸鉄道の能美線（鶴来駅 - 新寺井駅間 16.7km）がそれぞれ廃止されました。11月1日には西日本鉄道の北九州線（北方線）も廃止されています。
大規模な再編としては、12月1日に南海電気鉄道から阪堺電気軌道へ、軌道線の阪堺線（恵美須町駅 - 浜寺駅前停留場間 14.1km）と上町線（天王寺駅前停留場 - 住吉公園駅間 4.6km）が譲渡されたことが挙げられます。これにより、両路線の運営主体が変わりました。
駅の新設と改称
多くの新しい駅が開業し、利用者の利便性が高まりました。日本では、国鉄の関西本線に三郷駅が新設されたほか、10月1日には横浜線町田駅が移転・改称（旧：原町田駅）された上で、千歳線に千歳空港駅（現在の南千歳駅）、東海道本線（品鶴線）に新川崎駅、横須賀線に東戸塚駅といった、現在も主要駅となっている駅が開業しました。海外でも前述の新規開業区間に多くの新駅が誕生しています。
複線化・複々線化
輸送力増強のためのインフラ整備も進みました。国鉄では鹿児島本線、日豊本線、横浜線の一部区間が複線化されています。京阪電気鉄道では京阪本線の一部区間が複々線化されました。西武鉄道新宿線の一部区間も複線化されています。
キャンペーンの開始
国鉄は旅客誘致策として、3月15日から全国の鉄道旅客営業路線全線（当時）の完乗を目指す「いい旅チャレンジ20,000km」キャンペーンを開始しました。この企画は鉄道愛好家を中心に大きな反響を呼び、後の鉄道旅行文化にも影響を与えました。
鉄道車両の動き
この年には、各社で多くの新型車両が登場し、既存車両の置き換えやサービス向上に貢献しました。
主な新型・新形式車両には以下のようなものがあります。
日本国有鉄道：145系、193系、200系電車など
東武鉄道：5050系電車
西武鉄道：301系電車
帝都高速度交通営団：8000系電車
東京急行電鉄：8090系電車
小田急電鉄：7000形電車（LSE）
阪急電鉄：7000系電車
福岡市交通局：1000系電車
* ソウル特別市地下鉄本部：2000系電車
また、西武鉄道の車両が上信電鉄や大井川鉄道に譲渡されるなど、活躍の場を移した車両も見られました。一方、国鉄のツ4000形貨車など、役目を終えて姿を消した形式もあります。
受賞車両
鉄道友の会が選定するその年の優れた車両にも注目が集まりました。第23回ブルーリボン賞は江ノ島電鉄の1000形電車が、第20回ローレル賞は北総開発鉄道7000形電車、名古屋鉄道100系電車、富山地方鉄道14760形電車がそれぞれ選ばれています。
結び
1980年は、全国的な電化や複線化といったインフラ整備、そして都市部での大規模な路線延伸や再編が進み、同時に新しい車両が多数登場した、日本の鉄道、さらには世界の鉄道史においても節目となる変化が見られた記憶に残る一年であったと言えるでしょう。
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