1983年の日本競馬

1983年（昭和58年）の日本競馬界は、栗毛の快速馬ミスターシービーが歴史に名を刻む偉業を達成した特別な年として記憶されています。

中央競馬のスター、ミスターシービー三冠達成

この年の中央競馬において、最大のトピックはミスターシービーの活躍でした。クラシック戦線で圧倒的な力を見せつけ、皐月賞、東京優駿（日本ダービー）、そして菊花賞を全て制覇。これはグレード制導入以前の旧表記における馬齢での達成であり、史上3頭目、そして戦後ではシンザン以来となる2頭目の牡馬クラシック三冠馬誕生という快挙でした。鞍上を務めた吉永正人騎手とのコンビで、多くの競馬ファンの心に残る走りを見せました。

クラシック以外の主要レースも熱戦が繰り広げられました。天皇賞（春）はアンバーシャダイ、天皇賞（秋）はキョウエイプロミスが勝利。宝塚記念ではハギノカムイオー、有馬記念ではリードホーユーが優勝しました。牝馬戦線では、桜花賞をシャダイソフィア、優駿牝馬（オークス）をダイナカール、エリザベス女王杯をロンググレイスが制しています。また、第3回を迎えたジャパンカップでは、海外からの強豪スタネーラが勝利。このレースには、地方競馬の代表としてダーリンググラスが初めて出走し、中央・地方間の交流にも新たな一歩が記されました。

障害レースでは、オキノサキガケが中山大障害の春秋連覇を達成しています。

地方競馬のサンオーイ、南関東四冠達成

地方競馬の舞台でも、歴史的な記録が誕生しました。大井競馬場のサンオーイが、南関東クラシックである羽田盃、東京ダービー、東京王冠賞の南関東三冠を見事に制覇。さらに、暮れの大一番である東京大賞典も制し、史上2頭目となる南関東四冠という偉業を達成しました。これは地方競馬ファンにとって、非常に印象深い出来事となりました。

主要な地方競馬レースとしては、川崎記念をカネショウスーパー、帝王賞をトラストホーク、全日本アラブ大賞典をトキテンリユウがそれぞれ制しています。

競馬界を取り巻く出来事

1983年は、競走そのものだけでなく、競馬を取り巻く環境においても様々な動きがありました。年明け早々の1月30日には中京競馬場で観客がコース内に侵入する事故が発生。安全対策の重要性が改めて認識されました。

騎手の記録達成も相次ぎ、大井競馬場の高橋三郎騎手が地方競馬通算3000勝を、中央競馬の河内洋騎手が中央競馬通算500勝を達成。さらに、田原成貴騎手が1開催20勝という中央競馬の新記録を樹立しました。

施設の面では、3月に後楽園場外発売所で複合勝馬投票券（ユニット馬券）の自動発売機が導入され、利便性が向上。9月には芝電話投票所が、12月には新潟電話投票所が開設されるなど、勝馬投票券の購入方法が多様化しました。

国際交流も活発に行われました。第50回東京優駿を記念して、東京競馬場とイギリスのエプソム競馬場が姉妹提携を結び、郵政省からはダービー記念切手が発行されました。また、日本中央競馬会の厩舎関係者や職員が欧米研修に出発したり、パリ国際競馬会議に日本の代表者が出席するなど、国際的な連携が進められました。

制度面では、クラシック5競走の予備登録が従来の4回から3回に減らされる変更がありました。また、夏には集中豪雨の影響で益田競馬場が開催中止を余儀なくされ、地方競馬全国協会から復興のための緊急助成が行われています。地方競馬全国協会では、8月1日に大山一生氏が新会長に就任しました。

表彰と未来への息吹

この年の優駿賞では、三冠馬ミスターシービーが年度代表馬、最優秀4歳牡馬、最優秀父内国産馬に選ばれ、その活躍が称えられました。その他、各部門でその年を代表する競走馬たちが選出されています。

この年には、将来の競馬界を彩る多くの競走馬たちが誕生しました。1986年のクラシック戦線で主役となるトニービン、メジロラモーヌ、ニッポーテイオー、ダイナガリバー、ダンシングブレーヴ、ダイナアクトレスなどがこの年に生まれています。また、後に活躍する多くの騎手たちもこの年に生を受けています。

一方で、惜しまれつつこの世を去った著名な人物もいました。競馬評論家や詩人として知られた寺山修司氏、馬主として競馬界に貢献した鎌田三郎氏がこの年に亡くなっています。

1983年は、ミスターシービーとサンオーイという二頭の歴史的名馬の活躍を筆頭に、様々な記録が生まれ、また競馬を取り巻く環境が少しずつ変化していった、記憶に残る一年と言えるでしょう。

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