1987年の世界ラリー選手権

1987年のFIA世界ラリー選手権は、WRCの歴史において転換期となるシーズンでした。それまでの強力なグループB車両がレギュレーションから姿を消し、グループA車両が初めて選手権を戦ったのです。このグループA規定は、その後10年間継続されるものの、参戦メーカーの減少により1997年には新たなレギュレーションへと移行することになります。

この年の選手権は全13戦で争われ、前年からの変更点はオリンパス・ラリーの日程が12月から6月に変更された点のみでした。また、FIAはシリーズ中2戦をドライバーズタイトルのみとする規定を維持しており、1987年はニュージーランドとコートジボワールがその対象となりました。

このシーズンを席巻したのは、マルティーニ・ランチアでした。ユハ・カンクネン、マルク・アレン、ミキ・ビアシオンの3人のドライバーを擁するランチアは、ランチア・デルタを駆り13戦中9勝という圧倒的な成績を収めます。パワーダウンしたグループAレギュレーションに最も適応したと言えるでしょう。3人のドライバーは互いに勝利を分け合い、シーズン終盤までドライバーズタイトル争いは非常に僅差で続きました。

対照的に、前年まで[グループB]]で成功を収めていたアウディ・スポーツは、ハンヌ・ミッコラとヴァルター・ロールという強力なドライバー陣を起用したものの、グループAでは思うような結果を残せず、ランキングは低迷しました。しかし、他のクワトロ使用チームからのポイント獲得もあり、マニファクチャラーズランキングでは2位という結果を残しています。特にクラリオン・チームヨーロッパの[[パー・エクルンド]とミグ・リンツのゲオルグ・フィッシャー(8ポイント)の貢献が大きかったと言えるでしょう。

一方、フィリップス・ルノー・エルフは、グループAカーであるルノー・11 ターボで苦戦を強いられました。ジャン・ラニョッティとフランソワ・シャトリオの両ドライバーは目立った成績を残せず、ポルトガルでのラニョッティの2位入賞が唯一の光明でした。

フォルクスワーゲン・モータースポーツは、前年グループAチャンピオンのケネス・エリクソンを擁し、前年の勢いを維持しようとしました。エリクソンはランキング4位と健闘し、ランチアのドライバー陣に唯一勝利を収めるなど、その実力を示しました。しかし、強力なセカンドドライバーを欠いたことが響き、マニファクチャラーズランキングではアウディ、ルノーに次ぐ4位に終わっています。

フォード・モーターはアリ・バタネンとスティグ・ブロンクビストという強力なドライバー陣を擁し、本格的なWRC復帰を果たしました。しかしシーズン序盤は苦戦を強いられ、シエラ XR 4x4はシーズン終盤にコスワースが開発したシエラ RS コスワースへと変更されます。この変更は成功を収め、シーズン終盤の3戦で上位入賞を果たし、コスワースの技術力が証明された形となりました。

1987年シーズンは、グループA時代の幕開けを告げるだけでなく、各チーム、各ドライバーの戦略や技術革新が大きく影響した、激動のシーズンであったと言えるでしょう。ランチアの圧倒的な勝利の裏には、グループAレギュレーションへの迅速な適応と、強力なドライバー陣の存在がありました。一方、他のメーカーもグループAへの対応に苦戦するなど、このシーズンはWRCの歴史における重要な転換点として記憶されています。

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